黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

街のパン屋さん ~ パン・ド・サンジュ とびばこパン

この形…工夫が詰まっています

 今回のとびばこパン(410円 税別)、突然ですが、こんなパンが私は好きです。

 なにが好きかと言いますと、工夫を凝らして、どうやって作っているんだろう、と、考えさせてくれるところに想像力を搔き立てられてしまいます。

 大阪府堺市にあります「パン・ド・サンジュ」は、「 おサルのパン」という意味のフランス語だそうです。

 たしかに、パッケージの箱にもおさるさんのデザインが配(あしら)われていましたね。

 そういえば、類似した製品のひとつに、以前、いろねこ食パンを紹介させて頂きました。

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 この時もねこの耳の部分が内側に入り込んでいるように見えて、同様作り方を模索していました。

 私の中の結論としましては、ねこの耳の部分はクーリングの収縮で内側に入り込んだように見えていて、製造時に使用している型はほぼ垂直にできているのではないかといった内容でした。

 さて、とびばこパンですが、パッケージは随分重厚です。

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 そして、パッケージを開けて中身のパンを取り出しますと…。

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 出てきました、パッケージとほぼ等身大のとびばこパンです。

 この商品ですが、スライス方法が添付の資料に載っていました。

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 ひとつは、とび箱の各段毎に横方向でスライスする方法です。

 ただし、この場合、各スライスの大きさが違ってきますので、争ってケンカをしない様にとのことです。

 それでは、もうひとつのスライス方法とは…?

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 それは、オーソドックスに縦方向にスライスする方法です。

 たしかに、このスライス方法でしたら、一般的な食パンと一緒ですからね。

 それでは、ここからとびばこパンの製造方法について、推測していきたいと思います。

 その前に、この商品の状態を軽く説明しておきますと、生地の上面と底面はとび箱の上面・底面と合っています。

 つまり、上方向が広くなっている食型に型詰め成形をして、逆さま状態で焼き上げてからひっくり返したのではなく、広がっている状態を底方法として、そのまま焼成しています。

 ですから、食型からパンを外すためには物理的に考えて、とび箱形状の型を上に剥がすしか方法はないように思われます。

 そうなりますと、どうやって最終発酵を取るのだろうか、といった疑問が出てきます。

 食型の上に行くほど面積が小さくなっていますので、一般的な食パン以上に発酵時の正確なレベル出しが必要になってきそうです。

 実際の製造現場を見ていませんので間違っているかもしれませんが、天板に並べた生地の発酵はサイドの枠のみで膨張させて、焼成前に蓋をする、といった方法であれば、造れるのでは。

 私が将来、とび箱パンを作ることはないと思いますが、こういった考え方は、もしかしますと他の製品へ応用される日が来るかもしれません。

街のパン屋さん ~ ポンパドール デニッシュ食パン

がっちりマンデー(9/15放送)

 (出だしの内容が記事のタイトルと違っていてすみません)TBS系の情報番組がっちりマンデーで、「京都プルミエベーカリーマーケット」が取り上げられました。

 ここは、2017年9月に四条河原町の京都マルイ7Fにオープンしたパンのセレクトショップです(関西初だそうです)。

 集結しましたパン屋さんは、京都の人気パン屋さん約10店舗で、

・雨の日も風の日も

・キキダウンステアーズベーカリー

・ぱんだよりノドカ

・プルンニャ

・ベッカライ ペルケオ アルト ハイデルベルク

・レ ブレドオル、ロワゾーブルー

・さざなみベーカリー

・ブラウニーブレッド&ベーグルズ

クリケット

・オークフード

・飯処 詣(パンドコロ モーデ)

といった面々(すみません、私は1店も知りませんでした)で、お客さんは出店している店舗に関係なく、好きな商品を購入できるシステムです。

 この番組を見て思い出しましたのが、今年3月に京都へ旅行へ行った際にリポートしました、五条河原町高島屋地下階にあるパンのセレクトショップです。

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 高島屋では、ワールドフーズ・ベーカリーと呼ばれていますこのセレクトショップには、

オークスハート

進々堂

・多々楽達屋

・ダルマイヤー

・チーズショップ チェスコ

・ドンク

・ブーランジェ オクダ

・ミールミィ

の店舗の品々が並んで、先述と同様に好みの商品を店舗に関係なくセレクトして購入できます。

 更に、このセレクトショップにはペックやフォションの店舗も隣接しています。

 選択肢が多くなった分、実際に好きな商品だけ購入できるシステムは消費者にとってはありがたいですね。

 実際に、購入して、食べて、実感しました!

 このようなセレクトショップは、京都だけなのでしょうか。

純粋に完成度が高い!

 随分遅れましたが、ここからが本文です。

 ポンパドールのデニッシュ食パンを家族に買ってきてもらいました。

 ちなみに、ポンパドールは西日本であっても関西(?京都)のパン屋さんではないため、上記のセレクトショップには入っていないのかもしれませんね。

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 目を引かれましたのは、製品表面の表情です。

 表に出ている部分が、見る限りデニッシュ生地の層の部分になっています。

 個人的な意見なのですが、どのようにしてこのパンを作っているのだろうと考えさせてくれるパンに興味を持ってしまいます。

 当たり前の話ですが、シート生地の表面は生地の面の部分と層の部分があります。

 その層の部分のみを表に出す…、成形ではなくて、分割方法? 、とあれこれ考えることも楽しくて、どんどん深みに嵌まっていく自分がいます。

思い付き

 ところで、思いついたように問題を提起してしまいますが、デニッシュ食パンの焼成には一般的に長い時間を要します。

 焼成時間は、生地中心部の温度上昇で決まってしまいますので、長く取り過ぎることは窯痩せの要因にもなりかねません。

 この件は、また改めて。

 

中国でのパンマーケットのトレンド

中国のパン事情

 中国へ出張するようになってから、かれこれ半年が過ぎました。

 最初は珍しく目に映った情景も、今では普通に見えてくることを感じます。

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 そんな中、いつも宿泊しているホテルの並びに焼き立てパン屋さんがあることを今回知って、訪れてみました。

 以前に南京等のお店で見た時と同様に、商品はガラス製のショーケースの中に陳列されています。

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 なんでもこのお店は日本人(鈴木…)が関係しているようで、写真のパネルが店内に掲示されていました。

 そして、店内は非常に込み合っていて、上の写真のようにレジには長蛇の列です。

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 さてさて、商品を見てみますと、あります、あります、中国で見慣れた毛虫パン(7.5元=約135円)。

 今でも、このネーミングにはなかなか慣れないのですが、中国のお子様向けTV番組の人気キャラクターからきているとかで、これまでに訪れましたほとんどの焼き立てパンのお店で、この商品を目にします。

 製品は、横線のクリームを掛けたロールパン(お店によっては、粉糖が掛かっています)に、腹割でカスタードクリーム or バタークリームがサンドされています。

 食べてみますと、結構クリームが口の中に残る感じです。

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 そして、こちらも定番なのですが、ディスク型のデニッシュです。

 作り方は、デニッシュにシート生地を太いロール状に巻いてカットし、製品サイズのセルクルに入れて発酵・焼成をしているかと思います。

 こちらはシンプルな味ながら、飽きの来ない、私的にも好みの製品です。

 そこそこボリュームもありますので、食べ応えもあります。

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 そして、こちらの商品ですが、カレードーナツではありません。

 肉松という中国では絶大なる人気を誇る食材をパン生地にまぶして、焼き上げた商品です。

 日本では、太巻き寿司に甘いピンク色の桜田麩(さくらでんぶ)という食材がありますが、日本の田麩が主に魚肉で作られているのに対して、中国版田麩の肉松は主原料に豚肉を使用して、砂糖、大豆油や紹興酒などを加えます。

 私的には、まだ若干の抵抗があるのですが、そのうちには慣れてくる…?

 只今、中国からの帰りの便を待っている上海浦東空港のダンキンドーナツで、この記事を打っています。

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 ちなみに、ここに限らず出国審査を経て、搭乗ゲート近くの店舗はどこも驚くほど高額です。

 ここでは、チョコリングドーナツ1個とアイスカフェラテ(ラージサイズ)で40元(約720円)でした。

 空港価格なんだと、自分を納得させました。

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 この日は、中秋節の祝日だそうで、空港や新幹線も多くの人で混雑していました。

焼き立てパンで懇親会! ~ パンシンポジウム2019

今年で3回目

 今年で3回目となります、パンシンポジウムが9月3日(火)、岐阜県岐阜市文化産業交流センター(じゅうろくプラザ)大会議室で開催されました。

 参加費は無料で公開講座の側面も持っています、このシンポジウムの主催は、岐阜大学 応用生物科学部です。

 私は、主催者の一人である岐阜大学応用生物科学部教授の西津貴久先生と懇意にさせて頂いていることもあって、第1回から参加しているシンポジウムです。

 

 今回は特別講演として、日本パン技術研究所 (通称:パン学校)の伊賀大八先生や東京農業大学食品加工技術センター教授の野口智弘先生から酵素に関連します製パン技術術のお話を聞くことができました。

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 そして、実は私も研究講演で「冷凍生地製パン法に関するあれこれ」と題して講演させて頂き、他に興味深い内容としましては、伴技術研究所の伴代表から「パン生地ミキシング状態解析法」の話が聞けました。

 自身が機械屋さんなものですから、このようなテーマには食い付いてしまいます。

 パンの作り方をベースにして、製パン機械設備を考えるような研究ですね。

ポスター発表とパネル展示

 講演会場の後方は、大学各研究室のポスター発表と企業からのパネル展示スペースになっています。

 ポスターショートプレゼンは、15:20-16:50のポスター発表に先立って、各ブース1分での概略の紹介がありました。

 やはり岐阜大学が主体なのですが、離れたところでは岩手大学からの参加もありました。

 岩手大学の研究テーマも私的には非常に興味深くて、真空冷却装置を利用した製品品質の改良に関して研究されていました。

必見の懇親会

 ところで、今回のシンポジウムの特筆すべきところは講演内容だけに留まらず、懇親会にも及びます。

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 予定されていた講演が終了しましたところで、参加者全員の集合写真を撮影し、講演会場は懇親会場へと様変わりします。

 ところが、通常の懇親会であれば、ここで料理が並んで…と、なるところ、今回は所狭しとたくさんの焼き立てパンが並んでいるではありませんか!

 主催者の説明によりますと、地元岐阜県のリテイルベーカリーから取り寄せた製品が並べられたとのこと。

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 調達と準備をどのように主催者側で執り行ったかは不明なのですが、はっきり言って、食べきれないほどの焼き立てパンが並んでいました。 

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 ここまで、焼き立てパンが並ぶとさすがに圧巻です。 

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 懇親会ですから、食事系のパンが並ぶ一方で、スィート系のパンも選ぶのに悩むほどです。 

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 この懇親会も今回のパンシンポジウムの大きな進化ではないかと思っています。

 これまでにもいろいろな学会や講演会へ足を運んできましたが、最後に実食を経てここまで研究テーマを身近に感じた催しはなかったと、ちょっとした感動でもありました。

街のパン屋さん ~ パスコ 夢パン工房 超熟ハース

北海道以外では、食べられない!

 それでは、ペンディングとなっていました、Pasco夢パン工房の製品についてリポートします。

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 棚に並んでいます商品は、どれも北海道産小麦を使用したパンということで、それだけでも十分にプレミアは付いていますね。

 その中でも気になりましたのは、ゆめちからを使用しました超熟食パンと直焼きパンの超熟ハース、そして白焼きの豆パン:もちっと金時豆でした。

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 結局、購入しましたのは、超熟ハース(237円 税込)ともちっと金時豆(151円 税込)だったのですが、実はゆめちから超熟食パンは手稲の店舗で造られたものを食べたことがありましたため、今回はあえて外しました。

 ところで、もちっと金時豆は品定めをしているちょうどそのタイミングで焼き上がったパンが出されてきましたので、場の勢いで買ってしまいましたところも多分にあるのですが。

 店員さんが商品を並べている最中に、つい『それ、ください。』って。

 そんなリテイルベーカリーあるあるとか、ないのですかね~。

 アイスカフェラテを追加注文して、店内のイートインスペースにてもちっと金時豆の試食です。

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 看板に偽りなしです。

 白焼きパン独特のもちっと感が生地に十分に出ていて、金時豆の少し大きめな粒感とのマッチングが良好です。

 もちろん、甘すぎない生地に金時豆の甘さがコントラストを付けますので、食感だけではなく、食味でも楽しめる製品です。

 実は、ここのイートインコーナーにはトースターも置かれていて、購入した商品を好みにトーストすることができます。

 さてさて、それであれば超熟ハースをここでトーストして食べてみようか、考えていた最中でした、敷島製パン在籍時の知り合いが声を掛けてきてくれたのは。

 結局、いろいろと話に花が咲いてしまいましたので、その後は超熟ハースを食べるタイミングもなく、当初の予定の通りにテイクアウトとなりました。

超熟ハースは、帰宅後に…、そのお味は?

 帰宅して家族に超熟ハースを見せてみると、やはり興味津々な様子。

 ハースブレッドにしては触感がソフトで、内相も一般的なバゲットのような製品とは程遠く、目が細かくて揃っています、菓子パンに近いです。

 その内相の影響もあってか、クラムの色も白さが印象的です。

 トーストして、食べてみました。

 通常ですと、ここで歯切れ、口溶け、引き、等を評価するのですが、真っ先に出てきました感想はシンプルに『うまい!』の一言でした(あくまで、個人評です)。

 一般的なハースブレッドとは一線を画していて、それでいて菓子パンでもない。

 この製品は一般的なハースブレッドと比較してはいけない、などとあれこれ思い巡らせていました一方で、ふと、この製品が本州で買えない残念さもふつふつと沸き起こってきました。

 敷島製パン様、超熟ハースを本州で製造販売する予定はないのでしょうか!