黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

製パン機械設備の実際 ~ 横型ミキサー

連続製パンラインの中のミキサー

 大手製パンメーカーの製造ラインは、連続的に製品が流れていくラインなのですが、唯一、ミキサーを使用するミキシング工程だけはバッチ生産となっている場合がほとんどです。

 そうなりますと、大量生産向けのラインだからと言って必ずしも大型のミキサーを入れればいいというものでもなくなってきます。

 それどころか、1バッチに要する時間が長くなることで、フロアタイムの違いによりますバラツキが大きくなってしまいます。

 ところで雑談ですが、ミキサーでよく目にするコートという単位については、以前に解説した通りなのですが…。

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 大型のミキサーには◯◯袋(たい)ミキサーと、サイズを呼称する異なる単位が使用されます。

 おおよその目安として、100コート(or ℓ)のボウルサイズが、1袋に相当します。

 この袋という単位ですが、小麦粉の1袋が25kgであることから、例えば100コート(1袋)ミキサーであれば、生地配合中の吸水を除いた固形分の総重量が、おおよそ25kgを仕込み量の目安とする訳です。

 ただし、あくまで目安ですから、生地の硬さ等で仕込み量は異なってきます為、実際には使用してみて、仕込み量の上限を決められた方がいいかと思います。

 なお、出来上がりの総生地重量は、配合に依っても変動しますが、おおよそ(袋数×25kg)の1.6倍程度が見込まれます。

 縦型ミキサーでは生地を混捏するバーのことをフックと呼ばれていますが、横型ミキサーではアジテーターと呼ばれます。

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 形状はY字で、ボウル壁面とのクリアランスが異なります3本のアジテーターが付いている仕様が一般的ですが、2本の仕様となっているミキサーもあります。

 各メーカーで追及してきた結果でしょう。

 この辺りの機種選定は、個人の生地作りの相性とかも関係するのでは。

 ミキサーに求められます作用は、伸展性のいい生地を作ることと、吸水率の高い生地を作ること。

 アジテーターとボウル壁面のクリアランスは、調製できる機器が多いので、生地吸水を上げたい場合にはクリアランスを狭くし、混合状態が思わしくない時や動力のモーター負荷が高過ぎるようであれば、クリアランスを広くします。

 また、柔らかい生地ではクリアランスを狭く調整しますし、逆に硬めの生地では広げます。

 アジテーターの本数やクリアランス、ミキシング速度、時間といった操作で、各パンメーカー独自の生地ができていたりするのでしょうね。

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(スライドドア式 出典:フジサワ・マルゼン㈱)

 近年のミキサーでは、原材料の投入は配管を通って自動で投入される機種が開発されていますが、捏ね上げたパン生地はボウルから塊となって降ろされます。

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(ボウル転倒式 出典:フジサワ・マルゼン㈱)

 上の画像の2機種のミキサーは、一見して捏ね上げた生地の取出し方法が違うだけのように見えますが、ボウル壁面を生地が叩きつけられる状態から、作業者によって支持する仕様は随分分かれるみたいですよ。

 

街のパン屋さん ~ Johan の初売り 2020年

福袋

 新年、あけましておめでとうございます。

 本年も、パンのあれこれに精進してまいりますので、どうぞよろしくお願い致します。

 お正月と言えば、やっぱり初売りに出てきます福袋ですよね。

 デパートは、概ね2日から営業していますので、今回は家族に名古屋・栄三越にありますJohanで、福袋をお願いしました。

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 買ってきてもらいましたのは、1500円(税別 +8%消費税)の福袋です。

 内容は以下の通りでした。

① パネトーネ

 サイズは小さいのですが、ドライフルーツを使った、イタリア・ミラノ発祥の発酵菓子です。

 賞味期限は、1月18日です。

 本場イタリアではクリスマスのお菓子として有名ですので、私が以前に見学しました製造ラインでは11月頃から生産を始めて、アルコール噴霧の上で包装、スチール缶に入れて保存といった感じでした。

 生地からドライフルーツへの水分移行や高い糖含量、焼成後に噴霧するアルコールの効果で日持ちさせていると聞いています。

 追記ですが、その工場では高さが40cm程の大きなパネトーネも製造していたのですが、旧ラインでは焼成後に製品底部を釘のような太さの針で刺して逆さ釣りにして冷却し、腰折れを防止していました。

 巨大なパネトーネがぶら下がって冷却される様は、まさに圧巻です。

② イタリアンドルチェ ※お楽しみ袋限定商品

 外観のイメージとしましては、アメリカンマフィンのようなチョコ&プレーンのスイーツですが、パネトーネ並みに生地ができている食感です。

 プレーンの方は、卵の味が強く出ていました(クラムの色もそれなりです)。

③ パウンドケーキ ※

 しっとりとしたオレンジ風味のパウンドケーキです。

④ ニューイヤーブレッド ※

 ちぎりパンのような外観で、イタリアンドルチェほどではないのですが、やはり卵が効いていました。

 食感は、日本の菓子パン系のソフトさといったところです。

⑤ 食べるオリーブオイル

 オリーブオイルに、ブラックオリーブ、バジル、ソテーオニオン、チーズ等が加えられています。

 パンと一緒に、と書き添えられていますが、今度、ご飯で食べてみたい、と。

⑥ コーンクリームスープ

 未だ、大事に取ってありますので、飲みました感想はご容赦下さい(すみません)。

⑦ 商品の引換券

 今年の1月期限で使用できます、350円分の商品引換券です。

感想

 当然、販売価格の合計は1500円では到底足りないですし、お楽しみ袋限定商品が3個入っています。

 このお楽しみ袋でしか食べられないパンを、お正月に食べられる経験が私は嬉しかったりするのですが、みなさんはどう思われるでしょうか。

 

TV番組のパン屋さん ~ 義母と娘のブルース

ベーカリー麦田

 リアルでは観れていないのですが、大晦日のTBS系のチャンネルで『義母と娘のブルース』が放送されました。

 舞台がパン屋さんと知り、思わず見入ってしまいました。

 番組中に登場しますベーカリー麦田は、東京・大岡山のセットだそうですが、モデルとなったパン屋さんは、後に開発します耳までおいしいパンを作っている渦潮ベーカリーくずは店のようです。

 店内の様子から、少し解説を。

ミキサー

 画面では、その塗装から関東混合機の縦型ミキサーではないかと推測です。

 下の画像は最新の装置ですので、ドラマで見られるミキサーとは外観が異なりますが、ご容赦下さい。

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 店長役の佐藤健さんが本捏ね後のパン生地の物性を見ているシーンもありましたね。

 俳優さんとして、よく勉強されていると思いますけど、欲を言えば薄い膜が分かる程度にまで伸ばしてくれると玄人にも受けたかなぁ、と。

 そういえば、TVではなかなかパン生地が写っているシーンの記憶が希薄なのですが、気のせいでしょうか。

発酵装置

 三幸機械製のドウコンディショナーがセットされていました。

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 設定としてはスクラッチでパンを作っている感じでしたので、結構、発酵の装置にはいいものを使っていることになりますね。

 この装置ですが、2室分離型で-12~+40℃の温度コントロールができ、冷凍生地の解凍にも対応可能な機能が備わっています。

オーブン

 オーブンは年代物のキャメルオーブン(コトブキベーキングマシン)が使われていました。

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 ドラマでは、パネルにSUZUKIと出ていましたので、わざわざそれなりに使用されていたキャメルオーブンを探し出して、スズキ産業が修復したものかもしれません。

 ちなみに先述の渦潮ベーカリーくずは店では、25年使われてきたキャメルオーブンが使われているようです。

 このキャメルオーブンですが、データは出せないものの、加熱能や安定性に関しまして非常に高いレベルにあります。

 近年トレンドの高級食パンブームの中で、このキャメルオーブンを使用している店舗が多い事にも注目です。

耳までおいしい角形食パン

 番組中に登場しますベーカリー麦田は、耳までおいしいパンを作ることを決めます。

 佐藤健さん演じる店長が小さかった頃、パンの耳が嫌いで、耳までおいしい食パンがあったらなぁ、という発想から生まれた商品です。

 このドラマ内に出てくるパンは「渦潮ベーカリーくずは店」の”白い食パン(1斤 189円)”がモデルのようですね。

 セリフの中に『吸水65%』などと聞くと、フムフムなどとつい頷いてしまっていました。

耳までおいしいホールセールの食パン

 少し横道に逸れてしまいますが、私が以前に在職していました企業で20年前に湯種製法の食パンを開発、発売しました。

 多くのみなさんがご存知の超熟食パン(敷島製パン)です。

 初めて、この商品を食べた時の衝撃は今でも鮮明に残っています。

[上司]サンタ、この食パンを見てどう思う。

[私] 焼色の汚い食パンですね~。(発売当初の超熟食パンは、ものすごく焼色の濃い製品でした)

[上司]だろっ、それで食べてみろ!

[私] (食べた後で)うまい! すごくうまいです! 特にクラスト(耳)が…。

[上司]だろ~、サンタ、今から**工場へ行って、この汚い食パンを綺麗な食パンに変えてこい!

 これが、私にとって超熟との出会いで、最初のミッションでした。

 ドラマは、現実でも起こるものなのです!

 

街のパン屋さん ~ 優しいかおりのパン家さん

ちょっと寄り道

 実は、ここ何年も大腸がんの検診で引っ掛かっていて、遂に昨年大腸の内視鏡検査を受けたところ、切除したポリープから癌が見つかり、その事もあって今年も旭労災病院内視鏡検査を受けることにしました。

 筋弛緩剤を注射するため、当日は車の運転が禁止されていますので、最寄り駅から歩いて病院まで行くことになるのですが、その途中に焼き立てパンのお店を発見です。

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 店名は、優しいかおりのパン家さん、家系パン屋です。

 お客さんは私が店内にいる間、頻繁に来店していて、繁盛しているお店のようです。

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 お店に入ってパンの棚を見てみると、1アイテム毎の数量は多くないのですが、いくつもの種類のパンを切らさず陳列している様子を感じます。

 お店の方に写真撮影の許可を頂いて撮ろうとしましたところ、ちょうど塩バターパンが焼き上がったタイミングで、1個だけ残っていた棚にわざわざ焼き立てのパンを加えて頂いて、上のような写真を撮ることができました。

 塩バターパンは、このお店でも人気の商品だそうです。

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 さて、店内から作業場がシースルーですので、窓越しに覗いてみますと、小型のデッキ式オーブン(Baker Chef フジサワ・マルゼン製)が3台とコンベクションオーブンが2台、それと小型のピザ用オーブンが1台設置されていました。

 よく見掛けます4枚差しのデッキ式オーブンではなく、1枚 or 2枚差し?のオーブンで数量を抑えて焼成しているのは、異なる焼成条件のパンを同じ炉床で焼かないという、こだわりなんだろうかと、勝手な推測をしていました。

 ホイロはコンベクションオーブンの下段に組み合わされているところは見られましたが、他は見られませんでした。

 当然、ホイロもフジサワ・マルゼン製です。

 ところでリテイルベーカリーでは、パンが焼き上がるところはお客さんに見えるように配置している店舗が多いのですが、生地作りや成形の様子が見られるところは、まだまばらですね。

 私としましては、ミキサーやモルダー等の機械設備にも興味が付きませんので、少し残念なところでもあります。

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 購入したパンは、すべてテイクアウトだったのですが、43時間も水しか口にしていない状況に我慢ができず、フォンダンショコラ(170円税込 白焼き生地でチョコフィリングを包餡した商品)は帰宅までの道々で食べてしまい、写真が撮れていません、すみません。

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 購入して持ち帰ってきました商品は、上の写真の通りです。

 左列の手前から奥へ、エンサイマダ(160円税込)、シナボン(180円税込)、クイニーアマン(130円税込)、右列の手前から奥へ、あん塩バターロール(180円税込)、塩バターロール(160円税込)、厚切りフレンチトースト(170円税込)、の6品です。

 エンサイマダが売られているところは初めて見ました。

 当然買うのも、今回が初めてです。

 エンサイマダはスペイン領マヨルカ島の特産品とされていて、元々は祝日に特別に作られる甘いペストリーだそうです。

 外観では、ペストリー特有の折込みの層がはっきりと見られませんでしたが…。

 クイニーアマンは、厚さが薄く、カラメルは硬く焼き固められています。

 どちらかと言いますと、これはもうパンというよりは菓子に近い感覚です。

 あん塩バターロールと塩バターロールは、期待していた生地のもっちり食感と塩の食味を堪能することができました。

 どの商品もハズレがなく、これも少量ずつを丁寧に焼いている結果なのかと思ってしまいます。

 そして、最後に…、ピザ用オーブンで焼いているパンを確認し忘れていました。

 また折を見て、出掛けてみます。

パン学校 第215期 ~ 駅前のミスドでは今年もピカチュードーナツ

道すがら…

 東京メトロ東西線の西葛西で下車して、しばし時間調整のお茶タイムです。

 今日は、日本パン技術研究所の100日コース第215期の授業で、13時から『製パン機械設備の実際』を明日に掛けて講義する予定です。

 駅のエスカレーターを降りて、パン技術研究所方面へ少し歩くとミスタードーナツがあるのですが、なにやら行列が…。

 よくよく見てみますと、ポケモンドーナツの出来上がり時刻が12:00のようで、それ待ちのお客さんだったようです。

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 お茶を飲みながら時間調整のつもりだったのですが、せっかくなので私もその列に並んでピカチュードーナツをひとつ。

 おじさんが、この↓ドーナツをテーブルに運んでくる姿は違和感以外の何物でもないような…。

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 そういえば、昨年の今頃もこのドーナツを買った記憶が…。

 さすがに今回は家族の分は入っていませんので、モンスターボールは外してピカチュウのみをゲットです。

 ほっぺのマーブルチョコがアクセントですね。

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 適度に時間調整を行ったところで、パン学校(日本パン技術研究所)へ向かいます。

 今回も製パン機械設備についての講義を、初日は前半を13:00~17:00で行います。

 ただ、製パン機械設備とは言いながらも、当然のことながら、どうやってパンを作っていくか、といった事柄がベースにありますので、生地の作り方や焼き方についても一通り説明します。

 例えば、同じように天板を使って焼成するバターロールとクロワッサンですが、求めている製品品質はまったく異なっていますよね。

 バターロールはしっとり・もっちり、クロワッサンはさっくり、といったように。

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 焼き立てパン屋さんのリテイルベーカリーには、よくデッキ式のオーブンとコンベクション式のオーブンが併設されて使われているところを見たことがありませんか。

 一度、どんなパンがデッキ式オーブンで焼かれていて、どんなパンがコンベクションオーブンで焼かれているかをジッと見てみると、傾向が見えてくるかと思います。

 ただし、決して挙動不審者には間違われないように気を付けて下さいね。

 (デッキ式オーブンで支配的な)遠赤外線を含みます輻射熱は、パン生地の表面温度が上がってもあまりパン生地へ流れる熱量は下がりません(ステファンーボルツマンの法則より)。

 一方、コンベクションオーブンで大勢を閉めます対流熱は、パン生地表面の温度の低下に伴って、パン生地へ流れる熱が比例して低下します。

 さてさて、これらの現象がパンを焼く際に、どのように影響するか、そんなことを考えてみるのも楽しいんです。♪ (パン焼きフェチの独り言)