神奈川県鎌倉市坂ノ下に本店を構える、『あっぷるぱい考太郎』が、4月28日(水)、大名古屋ビルヂング地下1階『大名古屋マルシェ』にグランドオープンしました。(ちなみに、このビルの名称はビルディングではなく、正式名称がビルヂングとなります)
このお店のアップルパイ、最近では地元愛知でのTV番組で取り上げられることも多く、お店は今が旬のスポットとなっています。
今回は、そのあっぷるぱい考太郎で販売されていました、りんご生食パンを紹介すると共に、パン生地中の糖量が焼成による焼色に与える影響について解説したいと思います。
【 目次 】
糖と焼色
パンや焼成が進むにつれて、クラストは褐変化して着色していきます。
そしてパンの焼き色は、一般的に糖を増やすことによって濃く付き易くなることはご存じの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
私の実験装置(木箱オーブン)のように食型温度で制御して焼成しますと、パンの焼き色は上のグラフのようにプロットすることができます。(明度というのは、100:白、0:黒で示される色(明るさ)の指標です)
2つの直線で示されるグラフは、糖が増えると傾きが大きくなって、着色反応が速く進んでいることを示してくれます。
近年の高級生食パンブームにおけます甘い食味のパンについては、焼き色を抑えて、かつしっかりしたクラストとしっとりしたクラムを作ることが、いかに大変な作業になるか、考察できるデータのひとつです。
あっぷるぱい考太郎
ビルヂング内に入って目的のお店に到着しますと、さすがにオープンしたての店頭はフレッシュ感も漂っています。
アップルパイが収められていますショーケースの上には、りんごの生食パンも並べられていました。
実は、記事には詳細を載せていませんが、上写真(右上)にありますアップルバターサンド(名古屋限定)も購入しています。
このバターサンドの生地もパイ生地です(クッキー生地ではありません)。
この日は、アップルパイ3種、アップルバターサンド、りんごの生食パンを購入して帰宅です・・・家族が。
アップルパイ
シーキャッスルのアップルパイ(540円 税込)
シーキャッスルは、TVドラマ『孤独のグルメ』でも取り上げられた、鎌倉にありますドイツ料理の老舗名店で、この店舗で出されています名物アップルパイこそ、この考太郎オリジナルのアップルパイなのです。
シナモン、生クリーム、バターを入れて煮詰めた国産のりんごを自家製のパイ生地で包み焼き上げているのですが、このフィリング量の多さをどう思われますか。
カスタードクリームのアップルパイ(497円 税込)
こちらも甘く柔らかく煮詰めたりんごに、カスタードクリームがたっぷりのパイです。
あっぷるぱい考太郎の人気 No.1 の商品のようですね。
アーモンドとシナモンのアップルパイ(551円 税込)
トッピングのアーモンド、ラムレーズンとシナモンが効いた大人の味のアップルパイです。
フィリングのアーモンドクリームとりんごとのマッチングも良好です。
りんご生食パン(864円 税込)
パンフレットには、『りんごを煮る時に出た果汁をたっぷりと配合した生食パン。ほんのり香るりんごと、深い甘みが特徴です。』とあります。
さて、原材料表を見てみましょう。
小麦粉、林檎汁、バター、パン酵母、食塩、それだけです。
糖の記載がありません。
標準的なりんご1個には、約40gの糖質が含まれているそうですが、どのようにして林檎を煮詰めているのか、興味津々です。(それにしても、煮詰めているから名称も林檎汁なのでしょうね)
外観
焼色は全体的に濃いめの着色となっています。
形状はきれいにホワイトラインが出ているのですが、その部分も若干着色していますので、さらに全体的に濃いイメージとなっている感があります。
成形は2玉の型詰ですが、ロール成形して折った形跡はありません。
そして側面には、俵成形のような生地を巻いた跡もありません。
逆側の側面を見てみましても、ほぼ同様の表情をしています。
最後に、底面に生地を閉じた跡が見られました。
ということは、山形食パンの成形と同様に丸目後の玉生地成形でしょうか。
そういえば、運営会社である株式会社イコールコンディションは、高級食パンの製造・販売を手掛けているのですが(ルセット)、山形食パンの比率が高いようにも見えますので、もしかしてその流れもあるのでしょうか。
そして、底面はフラットでおへその様な跡が見られませんので、最終発酵と焼成には穴なしの食型を使用しているようです。
内相
成形からの先入観もあるのかもしれませんが、若干、気泡が大きめのような気がします。
そして、内相の色ですが、少し灰色掛かったピンク色と言いますが、初めて見るクラムの色です。
できれば、測色色差計で明度・彩度・色相角度を測定したい気に駆られます(彩度は鮮やかさを示す指標で色彩を、色相角度は赤・黄・緑・青といった色調を表す値です)。
食感・食味・風味
真っ先に林檎の風味が届きます。
正直なところ、私がパンの仕事に就いて38年、この風味を経験したことは初めてです。(このような自然な林檎風味が生地から得られることは、もしかしますと嵌(はま)るかも)
食感は、焼色に似合わずソフトでしっとりしています。
食味は菓子パンレベルに甘いですが、林檎の風味と相まって心地良い甘さに感じられます。
そして、その甘さが糖を配合した訳ではなく、果実の林檎由来のものということであれば、特筆すべきことかと感じた次第です。
今日のanopan
今回も、anopan(近所のリテイルベーカリー)の季節限定のデニッシュの紹介です。
今は季節の柑橘類でデニッシュを作ってくれているのですが、これまでの甘夏・はっさくに続き、今回は『不知火(しらぬい)』でした。
このデニッシュに正直なところ嵌っています。(先日、雑誌のKELLY(地方版とかあるのでしょうか?)に載ったとのこと。小さなパン屋さんですが、最近混んでいます。)