黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

オーブンの科学(その1 上火・対流)

パンを焼く設備 (オーブン)

  これまで、パン生地目線で温度との関係を追ってきましたが、今日は少し視点を変えて、そのパン生地を加熱する機械設備:オーブンについて解説していきたいと思います。

 ご存知の通り、オーブンは、食品を収める空間を持った加熱機器のことです。

 よく家庭にあるオーブンレンジでは焼成温度を180~240℃程度に合わせて、予熱で暖めてから食材を炉内へ投入します。

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上火について 

 食材が暖められるとき、その表面は大きく2通りの熱移動形態によって加熱されます。
 ひとつは、炉内の空間に存在する空気を媒体として加熱する対流熱伝達です。
 そしてもうひとつが、高温になっている熱源の表面から電磁波として食材に伝わる輻射伝熱です。
 パンを焼く時、これらの伝熱手段は通常上火として特徴付けられる伝熱形態です。
 それでは、対流と輻射によるパンの加熱について、特徴を述べることにしましょう。

対流という加熱方式
 対流は、更に自然対流と強制対流とに分けられますが、一般的に対流式といった場合は、概ね強制対流を指します。(そう言われてみると、自然対流式のオーブンって聞いたことがないですね。)

 この方式はコンベクション式と呼ばれ、炉内に撹拌用のファンが取付けられていて、ヒーターは直接パンに作用する訳ではなく、媒体である空気を加熱します。

 家庭用のオーブンレンジでも2段式の機種があるように、この方式のオーブンは空気さえ、送風することができれば、複数の段積みで焼成することが可能です。

 余談ですが、スペース的には、コンパクトな設計が可能です。

対流によるパンの焼け方

 対流による加熱の強さ(熱伝達係数といいます)は、パンの温度の上昇と共に直線的に減少してきます。

 つまり、焼き始めの頃の加熱は比較的強いのですが、焼成の後半になってくるとパンの表面温度が頭打ちになって上昇が鈍くなってきます。

 このことは、何を意味するのでしょうか。

 

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 パンの品質に影響する焼色と水分蒸発量を考えてみますと、表面の温度が大きく上がってこないということは着色の速度も大きく上がることはないことを意味します。

 つまり、安定した濃さの焼色に仕上げ易いことが分かります。

 一方、水分については着色の反応で使用される温度帯(140~150℃)でも十分に蒸発できる状態になっています。

 サックリした食感が特徴的なクロワッサンが、コンベクション式のオーブンで焼き上げられているところを目にする機会もあるのではないでしょうか。

 ちゃんと機種を選んで、目的のパンを焼いていることが伺えます。

 ところで、熱せられた空気がパンに当てられて焼くわけですが、ここにはもうひとつ風速というファクターが存在します。

 風速は、その1/2乗(√:ルート)に比例して、熱伝達係数に寄与します。

 つまり、風速を上げれば、同じ温度でも強く加熱することができるのですが、どこまででも高くすればいいというものではなく、効率を考えて使いましょう、といったところが結論のようです。

 加えて、あまり風速が高すぎるとパン生地が飛ばされてしまう事もありますから。