黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

オーブンの科学(その2 上火・輻射)

輻射という加熱方式
 輻射伝熱は、遠赤外線効果に代表されるように電磁波として食材に照射されて加熱をします。

 最近では、石窯パンといったカテゴリーの商品も数多く市場に出回っていますが、この輻射伝熱(遠赤外線効果)を謳っているケースが大勢を占めます。

 それでは、輻射主体のオーブンとはどのような機種のことを言うのでしょうか。

 店舗のパン屋さんでよく目にする、炉床に天板や食型を並べて焼成するタイプのオーブンをデッキ式オーブンと呼びます。

 このタイプのオーブンには上面に熱線等のヒーターが設けられていて、そのヒーターと製品との間に天井パネルを嵌めた構造を取る機器が一般的です。

 天井パネルを設ける理由は、非常に高温のヒーターからの熱線を一度受け止めて平均的に緩衝すること、およびオーブン炉内の温度を安定化させることが挙げられます。

 構造は至ってシンプルで、レンガを組み立てて作る石窯オーブンの延長と考えてもいいでしょう。
 パンを焼く時には、天井からの熱源が必須となりますので、天板等も多段積みはできず、横に並べて焼くことになります。最低でも、並べる天板の面積は必要となってきますので、設置にもそれなりの床面積が求められます。

輻射によるパンの焼け方
 輻射による加熱の強さは、熱源となるヒーターや壁面の絶対温度の4乗に比例します。これをステファン-ボルツマンの法則といいます。

 ただ、この説明を聞いて、そうか、こんな風にパンが焼けるんだぁ、とイメージできる人は正直少ないのではないでしょうか。

 下の図を使って、説明しましょう。パンを焼いていく工程において、パン表面の温度が上昇すると熱源との温度差が縮まって熱移動量が減っていくことは対流加熱の時と同様です。

 しかしながら、対流加熱の時にパンの表面温度の上昇と共に熱移動量が直線的に減少していった時と比較すると、その低下は緩やかな曲線となっています。
 つまり、焼き始めの頃の加熱が、焼成の後半になってもあまり低下することなく継続することが示されています。

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 それでは、このことは、何を意味するのでしょうか。

 対流の時と同様に、パンの品質に影響する焼色と水分蒸発量を考えてみます。

 パン生地の表面は時間の経過と共に温度上昇しますので、焼色の着色も顕著に変化が現れることから、焼成中に焼き色のチェックを怠ることができません。

 一方、焼成の初期は比較的加熱が弱いことから、表面温度の上昇は緩やかです。

 当然、水分が蒸発する温度に達するまで時間が掛かってしまいますので、水分蒸発量は抑えられます。

 バターロールや日本式のアンパン等、しっとりした食感が特徴的な製品には、デッキ式のオーブンは適していると考えられます。