黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

オーブンの科学(その3 下火・伝導)

伝導という加熱方式

 パン生地を焼成する際には、天板なり、直焼きのハースブレッドにしても炉床なり、なんらかの固体の上に載せて加熱調理を行います。

 形態が異なるものを挙げるとすれば、ドーナツのように油で揚げる製品やベーグルの焼成前の処理のように湯を通らせる製品あたりでしょうか。(もっとも、この場合は伝導ではなく、対流加熱となりますが…)

 伝導伝熱とは、流体のように熱を伝える熱源が移動せず、物質内を伝わって熱が移動する形態を指します。

 従って、パン生地に伝わる熱は、1.既にパン生地が載っている固体が保有している、2.パン生地が載っている固体が熱伝導によって熱を受ける、3.パン生地が載っている固体が対流・輻射によって熱を受ける、ことによって伝わります。

 あえて、2と3を分けたのには理由があります。

 パンの焼成初期の短時間で、伝導であれば総熱量は限定されていても急激な加熱が可能である一方、対流や輻射の場合では、比較的緩やかな加熱しかできないためです。

 この違いは、パンの焼方に大きな違いを生じさせるのですが、それは次の項で解説します。

 

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 なお、オーブンのタイプでデッキ式と呼ばれます固定窯では、前述の1.もしくは2.の加熱形態、コンベクション式オーブンであれば、3.の加熱形態となります。

伝導によるパンの焼け方
 比較的イメージし易いと思いますが、伝導による加熱の強さは、パンもしくはパンを載せた天板が接している固体が持っている熱エネルギー量に関わってきます。

 パンを焼成する際の理想的な温度履歴は、一気に炭酸ガスの溶出やアルコールの蒸発が起こる70℃以上まで加熱して、その後は徐々に加熱しながら160℃は超えない…。

 そう考えてみますと、天板にパン生地を並べてデッキ式オーブンで焼く方法は、その温度履歴に近い条件を容易に造り出すことができます。

 一方、コンベクション式オーブンでは天板を対流熱で加熱しなければならず、パンの外観形状が大きく変化する焼成の初期に、パン生地底面から押し上げる効果は見込みづらいと考えられます。

 焼き上がったパンの焼色と水分蒸発の関係につきましては、上火について先述しました輻射加熱や対流加熱の内容と同様です。

 近年、石窯パンが人気を博しているようですが、この石窯も下火には特徴的な性質があります。

 石は金属と比較して比熱が大きく、オーブンを製作した場合、炉床の重量当たりの熱容量を大きく設計することが可能です。

 つまり、パンを大きく膨らませる効果を石窯は物性として保有していることが分かります。