黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

冷凍パン生地 ~ 冷凍方法①

課題

 様々な効果が期待されていた冷凍生地製パン法ですが、実用化までの課題は山積でした。

 この製法が脚光を浴び始めたのは、40年ほど前になり、私も35年ほど前にこの製法の研究に携わっていました。

 当時は、今のような冷凍耐性のパン酵母がちょうど研究されている真っ只中で、ボリュームが出たり出なかったり、形状がしっかりと高さが出たり横に這ったような形になったり、で試行錯誤の連続でした。

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 また、冷凍障害は外形だけではなくて、製品表面に梨肌と呼ばれます、白い粒のような斑点模様を付けてしまうこともあります。

 これらの障害のメカニズムは、また別の機会に解説するとして、ここではどのような対策を積み重ねて、この課題を克服したかを以下に記します。

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 取り組んできた足跡

 私がこの研究を始めた頃、パン生地冷凍の障害に対する主な物理的要因は、既に最低到達温度と凍結速度であろうことが指摘されていました。

 最低到達温度ですが、これは文字の通り、パン生地の冷凍・保存・解凍の中で、最も下がった時の温度を指すものです。

 なぜか?

 既に冷凍耐性酵母が開発された現在でも、パン酵母は菌種に固有の失活温度を下回った時点で大きく酵母の活動が阻害されるためです。

 決して、食品中における水分の凍結率のように、温度が上下することで一律に活性が温度に応じて上がったり下がったりするものではないためです。

 一般的に冷凍耐性を持っていないパン酵母は、‐17~‐19℃より温度が低くなると失活して発酵力が大幅に低下します。

 つまり、このようなパン酵母を使用するのであれば、‐15℃℃程度以上の温度で生地を冷凍・保存させなければならないことになります。

 一般的な冷凍庫は、‐25℃程度では冷却できるように設計されていますので、冷凍耐性を持っていないパン酵母は、冷凍工程どころか保存工程でも適応しないことになってしまいます。

 なお、近年、冷凍生地に一般的に使用されているパン酵母には、失活温度が‐30℃を下回るような菌種も開発されており、現在の品質の向上に寄与しています。

 一方、凍結速度に関しましては、急速冷凍を行うことでパン生地中の水分の結晶化を抑え、生地の構造破壊を防ぐことが推奨されています。

 上記の二項目を合わせますと、低過ぎない温度で早く冷凍させることが求められる訳です。

 別の言い方をすれば、高い温度で速く冷凍させることがコツということになります。

 さて実は、上記の解説に含まれます見解は、研究者の中でも未だに 定説とはなっていないようです。

(続く)