黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

冷凍パン生地 ~ コンピューター・シミュレーション(番外編)

発泡スチロールのトレーに載せて冷凍したら…

 パン生地を冷凍する場合、急速冷凍が好ましいことは一般的に周知の事実となっています。

 故に、生地を載せるトレーは通常熱伝導性の高いアルミニウム等の金属でできたトレーを使用します。

 下図は、以前にも解説しましたが、アルミニウム製のトレーにパン生地を載せて冷凍させた時の温度分布(パン生地の一部が凍り始めた時間)を示していますが、トレーに接している部分から凍り始めていることが分かります。

 パン生地とトレーとの間で著しい熱移動が起こっているからです。

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 ではトレーの材質を、普通では絶対に使用しない発泡スチロール にしてみた場合、凍り始めのタイミングで生地内部の温度分布はどうなっているのでしょう。

 下の図が、トレーの材質に発布スチロールの密度、比熱、熱伝導率を入れて計算した際の温度分布の様子です。

 全体がゆっくりと温度低下していきますので、生地中心と表面との温度差は小さくなっています。

 さらに、アルミニウム製トレーの時と大きく異なるのは、トレーと接している部分の温度低下が鈍いことです。

 トレーとの間で熱移動がほとんど起こらないため、比較的トレーに近い部分の温度が高い温度を保持している状態になっています。 

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 そして、この状態はパン生地全体が凍る時点まで傾向が継続します(下図)。

  凍結後のパン生地は、比熱は凍結前の1/2~1/3程度、熱伝導率は逆に2~3倍程度になりますので、上図と比較して一層パン生地中心と表面との温度差が小さくなっていることが見て取れます。 

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 このシミュレーションから考えること

 私は、常々良いパンを作る条件を知るためには、良くないパンができてしまう条件を把握しておくことも重要だと考えています。

 急速冷凍がいいと言われて、低い温度の冷凍庫でパン生地を冷凍させるというのは、いくつもある冷凍の他のパラメーターを無視していることになります。

 その考え方で問題のないケースもあります。

 遠洋漁業でのマグロの冷凍などは、そのケースに当てはまると思います。

 ところがパン生地の場合は、パン酵母の失活温度というものがあり、ある温度以下にしてしまうと酵母の活性が極端に低下する限界温度が存在します。

 つまり、急速冷凍は推奨しながらも、下げられる温度には制限があることになります。

 そうなりますと、冷凍工程中の温度変化やトレーの材質や厚さ、トレーに乗せるパン生地の数、冷凍庫内の風速等々、いろいろなパラメーターを検討していくことになります。