黒猫サンタさんのパン作りブログ

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オーブンの特性(1) ~ デッキ式オーブン

デッキ式オーブン

  歴史を遡ると紀元前の古代ローマ時代にパンを量産する礎が確立された頃、石質材を組み上げて作られたオーブン(固定窯)は、機能的には既に現代のデッキ式オーブンに非常に類似したものができあがっていました。

 パン生地への主な熱移動の形態は、上火が遠赤外線を含む輻射、下火が豊富な熱量を蓄えることができる炉床からの伝導です。

 下火用の炉床に豊富な熱量を蓄えることができると記載したのは、大部分の機種で比熱の高い材質を使用していることに他なりません。

 それは、前述の古代ローマ時代の石窯から受け継がれています。

 もっとも初期の頃の固定窯は、焼成室内で薪等の燃料を燃やして、その熱を壁や床に蓄えてパンを焼くエネルギーとして使用していました。

 現在では、供給する熱エネルギーの安定性や作業者の操作性等の点から、パンを加熱する壁面の外側から熱エネルギーを供給して制御する方式が主流となっています。

 下図を見て頂いてお分かりの通り、構造としてはシンプルで、天板または型を入れるボックス形状の焼成室の上下に熱源(電気ヒーターもしくはガスバーナー)があり、それぞれを上火・下火として温度制御しています。 

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 上火は、輻射による加熱が支配的で、以前にも解説しました通り、上面に薄いクラストを形成させるのに適した熱源です。

 一般的に遠赤外線に代表される輻射熱は石窯オーブンでよく謳われているコピーですが、輻射熱を出すことだけであれば、特に材質は石にこだわらず他の材質でも十分に代用できます。

 例えば、金属パネルに輻射率の高い塗装を施すだけで十分です。

 しかも石材の持つ高い比熱の特性は、温度が安定しているという表現の裏返しで、レスポンスが遅く、それ故に温度制御も難しくなるといったデメリットもあります。

 熱源のコントロールが容易であれば、上火のメカニズムとしては金属板の方が安定して使い易いオーブンと言えるのでは、と考えます。

 追記ですが、オーブンを製造するメーカーにとりましても、加工が難しい石室材よりも、安価で加工が容易な金属板の方が使い易く、それは結果として製品の価格を低く抑えることにもつながってきます。

 それでは、下火はどうでしょうか。

 パンを焼く上で重要な要素の一つに焼成初期における十分なオーブンキックが挙げられます。

 そのためには、パン生地や天板が載る炉床に十分な熱量が蓄えられていることが必要であり、その点では石材の高い比熱はうってつけの特性と言えます。

 上火の特性を出す場合と大きく異なるのは、上火で輻射熱に大きく影響するファクターが輻射率といった表面の特性であることと比較して、下火は炉床の材料全てが持っている熱容量(=比熱×重量)といった特性という点です。

 つまり、炉床の材料に関しては金属に表面加工を施しても石材の特性は得られない、つまり石窯の特性は得られないということになります。