黒猫サンタさんのパン作りブログ

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オーブンの特性(3) ~ 石窯オーブン

石窯の特徴

  比較的最近になって、スーパーでの石窯オーブンで焼いたパンの棚が確保されてきていることを実感するようになりました。

 それでは、石窯オーブンで焼成した製品には、どのような特徴があるのでしょうか。

 それを知るためには、石窯オーブンで焼成する時にパン生地が変化していくメカニズムをできるだけ正確に把握していくことが非常に重要になってきます。

 ここでは、下火の効果を重点的に解説していこうと思います。

 パンを焼成する際、その初期の段階でまず必要になってくるのは、下火による十分なオーブンキックを行わせる為の熱エネルギーです。

 そのために炉床に求められる必要な条件とは何でしょう。

 結論から言ってしまいますと、温度、比熱、重量となります。

 ただし、炉床材の重量には装置製作上の制限も出てきますので、どうしても材質には熱エネルギーを蓄え易い性質が求められます。

 下の表を見て頂きますと、炉床として検討されそうな材料の各物性値を比較することができます。

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 大きく金属と無機のセラミックス系の材料を載せました。

 まずは、比熱の数値を見て頂きますと、セラミックス系の材料の方が高い傾向にあることが分かります。

 つまり、同じ重量、同じ温度であれば、金属よりもたくさんの熱エネルギーを蓄えることができることを示しています。

 でも、それであれば、装置が重くなることに目をつぶって、金属の炉床の重量を重くしてでも同じ熱量をパン生地に加えることもできるのでは、と考える人もいますよね。

 確かに熱量だけを見るとその条件はクリアしているように見えるのですが、しかし、同じように焼けないところが、オーブンの難しいところなのでしょう。

 下の図を見て下さい。

 石材と金属材の炉床のオーブンでパンを焼成した時の炉内の温度状況をモデル化した図です。 f:id:santa-baking:20181017124745j:plain

 石材の炉床のオーブンでは、炉床に接しているパン生地へ伝導熱が伝わる一方、炉内の空気も同様に加熱します。

 事の良し悪しは別にして、あくまでも石窯オーブンの焼き方を考察するとこのような状態が推測されます。

 それでは、同じ熱容量を持った金属板で炉床を作るとどうなるでしょうか。

 最初の段階では、同程度有していますパン生地下部の炉床から伝導熱が移動します。

 ところが、金属には熱伝導率が高いという特性もあるのです(上表をご確認下さい)。

 つまり、炉床内で温度分布が生じますと熱伝導率が低ければ、その状態を保持しますが、逆に高いと速やかに熱は高い方から低い方へと流れていきます。

 結果として、パン生地下部の炉床には高温度の周囲の炉床から熱が移動して急激な温度低下が緩和されることになります。

 そうなりますと、焼成時間全体を見た場合にパン生地底部の温度が上がり過ぎてしまうため、設定温度を下げざるを得ません。

 最終的にオーブンキックの十分な熱量が伝わらないばかりか、炉内温度を上げる熱量も不足してきますので、石床のオーブンとは全く異なる焼き方になってしまいます。

 もっとも、炉床に金属を使用して焼成する製品を私は1アイテムしか知りません。

 非常にポピュラーな製品ですが、その解説はまたの機会に。