黒猫サンタさんのパン作りブログ

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オーブンの制御(2) デッキ式オーブン・下火

オーブンキック

 パンの焼成において大多数の製品で求められている条件が、十分なオーブンキックを起こすことができる初期の下火です。

 石窯オーブンのところでも解説しましたが、できれば生地や天板が直に接している部分に十分な熱エネルギーの保有が求められます。

 この焼成の初期で生地底面の温度は一気に上がり、そして焼成が進むとパン生地と炉床の温度差が小さくなって、熱移動量が減少します。

 炉床の温度は初期に大量放出した熱エネルギーの影響で急激に低下しますが、その熱エネルギーがパン生地に伝わった後はパン生地への熱量の供給も微量ですので、放出したエネルギーを焼成時間内に補充するといったシンプルなサイクルを繰り返します。

温度の計測ポイント

 オーブンの下火は、どのような計測制御(sensing & control)がされているのでしょうか。

 下図で、オーブン内に生地が投入されたことで温度センサーが温度の低下を感知し、ヒーター電源が入った状況から推測してみます。

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  最初に①ヒーター温度が上がり、続いて②そのすぐ上部の空間が自然対流で加熱されますが、ほとんど変わらないタイミングで②炉床の底部も輻射熱で加熱されます。
 続いて炉床下部の空間が暖められて、温度センサー位置の温度が設定値に達し、ヒーターの電源が切れます。

 この時点では、まだ④炉床の上部は温度が低下して復帰していない状況ですが、②③の空間の温度は熱容量が小さいために変動周期も早く、ON-OFFを繰り返している間に、②③④の温度が均等に揃ってきます。

 下火の場合は、上火のように温度センサーと熱源(ヒーター)との間に緩衝材がありませんので、シンプルな温度制御で対応が可能です。

 それであれば、炉床下の空間ではなく、炉床そのものの温度を計測して制御すればいいのでは、と思う人もいるかもしれません。

 正論なのですが、留意点もあります。

 まず、炉床の温度を直接計測すると、その計測ポイントに生地や天板が載ってる時と載っていない時でヒーターの制御出力に大きなばらつきができてしまう事です。

 平均的な温度を取ろうとするには、複数の温度を計測して平均を取る等の工夫が必要になってきます。

 少し面倒です。

 それと、このことは感覚的な問題なのですが、炉床の温度を直接計測すると天板が投入された時点から下火の温度表示が急激に低下することに対して、『安定しないオーブン』といったレッテルを貼るユーザーも少なからずいるという実状です。

 この課題は、また改めて解説する予定ですが、パン生地へ熱が移動して炉内の温度が低下しないオーブンなど決してあるはずもない事実に対して、認めることをしないのです。

 虚偽がまかり通るようになると、技術の進歩も心配になってくるのですが、皆さんはいかがお考えでしょうか。