ミキサー
中種製法は、日本におけます大部分の製パンメーカーで採用されている製法ですので、内容に沿って紹介します機械設備に関しましてもできるだけ大型の連続生産ラインで採用されている機種を中心に、解説を加えていきたいと思います。
下の画像は比較的大量生産に向いている横型ミキサーで、最近の機種ではほとんどの原材料が自動計量されてボウル内に投入可能な機能が搭載できます。
なお、本捏時に結構な重量になる中種は、背面から投入できる構造になっているケースが多いようです。
アームの本数は、各メーカーの設計方針に基づいてそれぞれですが、2~4本が一般的です。
【画像提供 フジサワ・マルゼン株式会社】
捏ねられる際のパン生地の動きですが、 物性に粘性が出てまとまりが出てくるようになると、アームに巻かれている部分はボウルに押し付けられて加圧され、上方向に位置する時には伸ばされる力が作用します。
作業
食パン等の生地では、まず油脂以外の原材料をボウルに投入して、[低速]⇒[高速]で回します。
最初に低速で回すのは、原材料が飛び散らないように水と他の原材料を馴染ませるためです。
高速ミキシングでは、効率的な混合と原材料への水和を目的に行います。
一旦、ミキシングを止めて、油脂を投入します。
最初から油脂を投入してしまいますと原材料の表面に油脂の膜がコーティングしてしまい、水和を阻害してしまいます。
油脂を投入してからも、最初はある程度生地全体に油脂が回るように低速でミキシングし、その後に高速で回します。
本捏ねのミキシングでは、
[つかみ取り段階(ピックアップ・ステージ:生地はべとついて、アームやボウルの壁にくっつく)]、
[水切れ段階(クリーンナップ・ステージ:水が小麦の中に分散・吸収され、生地がボウルから綺麗に剥がれる)]、
[結合段階(ディベロップメント・ステージ:グルテンの結合が進み、生地に弾力性が出てくる)]、
[最終段階(ファイナル・ステージ:生地を広げると滑らかな半透明の膜になる)]、[麩切れ段階(レットダウン・ステージ:弾力のない、湿った外観を呈し、異常なまでに粘着性を示す = オーバーミキシングとも言われる)]
の各段階を経て、ややオーバーミキシング気味の時点で生地を降ろします。
生地温度に関しては、低速時より高速時の方が摩擦熱を受け易いので、生地温度の制御には壁面にブライン等の低温(-数℃~数℃)の冷媒を流すジャケット冷却の機能を使用する。
このように、本捏ねミキシングでは生地温度と動的物性の基準が併せて求められる非常に繊細な工程と言えます。
ところで、本捏ミキシングの最終段階をリアルタイムに提示する装置・システムは未だに開発されていません。
この案件は、改めて別のところで解説しますが、今後の製パン業界の大きな課題のひとつです。