黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

分割②

課題(続き)

 パン生地のダメージを軽減させる方法としては、プランジャーの動きを位置制御して1回の生地室への吸い込みに対して連続して押し出す方法が開発されました。

 こうすることによって、ホッパーから生地室への移動の際にパン生地がスライスされる頻度は大幅に減ることになります。

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 動力としては、油圧式やサーボモーター式が採用されており、加えて過度な圧力をパン生地に掛けない工夫も施されて、分割時での生地ダメージは更に低減しました。

 現在では、まったく別の機械仕様でシート状のパン生地を重量計測しながら超音波カッターで分割する、正にストレスフリーの分割機まで登場しました。

 従来の製パン法では、機械耐性を意識しながら製パン法も検討されてきましたが、機械によるダメージ自体が低減されるようになり、採用できるようになった製パン法にも広がりが見られるようになってきました。

バッチ工程から連続工程へ

 この分割工程からは連続生産となるのですが、ここで問題が生じます。
 仮に本捏ねミキサーの生地が1ロットあたり10分間隔で降ろされたとしますと、分割する生地の中には次工程へ移るタイミングが最大で10分生じることになります。
 既にパン酵母は活発に活動していますから、待たされている10分の間にも継続して発酵を続けています。
 つまり、分割をしている間にも徐々に体積は膨らんで見掛けの密度は下がってきますし、生地物性も変化してきます。

 まずは、密度が下がることによる生地重量の低下について解説します。

 自動で生地重量を調整する機能が付帯されている機種であれば、分割後の横送りコンベアの次辺りにウエイトチェッカーが設置されており、流れてくる生地重量を一つずつ計測して、設定値と比較しています。

 一定容積のポケットで生地を分割していますと時間の経過と共に徐々に生地重量が低下してきますので、その場合は生地重量が小さい内容の信号をデバイダーに送ることで、ポケットの容積が広がる方向へ小ラムのストッパーが移動して生地重量を増やします。

 ただし、大変なのはちょうど次のロットの生地が入ってくる境界のタイミングで、この時には急激に生地重量が上がってしまいますので、急速に分割機のポケットを狭めないといけなくなります。

 生産ラインによっては、自動の調整機能が付帯されておらず、デバイダーの出口に秤を置いて、作業者が生地重量を量りながら手動で調整しているケースもあると思いますが、現実的には調整はまず不可能と思います。

 第一に、流れてくるすべてのパン生地を計測できるとは、とてもではありませんが思えません。

 作業者の計測が徒労に終わって、その結果もばらついた重量のパン生地が流れていく結末が見えてしまいます。