食パン用モルダー(圧延後の生地の加工)
前回は、モルダーでの生地の圧延のところまでで解説を区切ってしまいましたので、今日はその続きを解説します。
生地の圧延には方向があることは、以前に述べました。
当然、伸ばされた方向には伸び代の限界まで余裕が少なく、一方その横方向にはまだ十分な伸び代が残っている状態にあります。
つまり、伸ばされた方向に巻いてロール成形を行うと、パン生地はこれ以上伸びきれない限界点を超えて、結果として破断してしまいます。
そのため、薄く伸ばした生地をロール成形するには圧延した方向と直角方向へ巻けばいいことが分かります。
下の図は、主に食パン等の大玉生地のロール成形に用いられるクロスモルダーです。
この図では2段式の圧延ローラーを通って、伸ばされた生地がコンベア上に流された後、直角送りのスロープで方向を90度変えられて、次のコンベアに移し替えされます。
ロール成形を行うコンベアには、展圧板の手前に通常カーリングネットと呼ばれる金属製(一般的にはステンレス製)の網が設置されており、ここで流れてくるパン生地の先端を持ち上げて、軽くカールする役目を負っています。
進行方向へ流れるドライブベルトの上方には、パン生地を円筒形のロール成形をするための展圧ベルトが設置されています。
メカニズムとしては、進行方向へパン生地の底部に力を加えるドライブベルトに対して、上方の展圧ベルトはその位置に留めようとする力が働きますので、結果、ドライブベルトの流れる速度の1/2の速度でパン生地は進行方向へ(巻かれながら)移動することになります。
この際、最終的な成形の形状(ロール径及び長さ)に合わせて、展圧板の高さを調整します。
ここで、パン生地を見る際、生地の形状や結着状態を見て、OHPの設定や手粉の付着状態、モルダーの設定(圧延ローラーのクリアランスや展圧板の高さ等)を調整します。
ちなみに、成形の有効長さ:Lとすると、ロール生地の直径:Dの生地が巻かれる回数は、2×L/(D×π) で計算できます。
食パンラインの場合、菓子パンラインのように極端に生地重量が異なる生地を扱うことはあまりないと思いますので、展圧板は固定の仕様でも十分対応が可能と思われます。
もし、それでも巻きの回数をどうしても調整したいような場合には、展圧板を支持している前後の高さ調節で傾斜を付けてみて(一般的には入口側を高めに調整しますが)、ロール成形の有効部に入ってからしばらくの間はパン生地と展圧板が接触しないようにして、巻きの回数を減らすことを考えます。
もっとも、確実な方法としては上部の展圧ベルトが可動式になっている機種を導入すればいいのですが、この機種に関しましては菓子パン類の成形のところで、解説するつもりです。
さて、まだ型詰についての解説が残っていますので、再度、次に続きます。