ロール成形
今回は菓子パンを対象とした、ロール成形に関して解説します。
成形の流れは食パンと同様ですが、生地重量が一般的に小さくなって、取り扱う生地重量の範囲が非常に広くなります。
もしかしますと、生地重量が変わっただけなのに?、と思われる方もいるかもしれませんが、それに対応させるための機械設備の仕様は大きく異なってきます。
圧延
手作業を考えてみますと、生地重量が小さくなっただけでは作業はほとんど変わりません。
ベンチタイムを取った生地を圧延してガス抜きをし、カーリングして巻いていきます。
ところが、例えば30gと100gの生地では寸法比でおよそ2:3となりますが、ガス抜きをする時の生地厚さはほとんど変わりません。
つまり、モルダーの圧延ローラーのクリアランスに関しては両者の設定値に大きな違いがないことになります。
この事は、パン生地の分割重量が小さい場合、生地の圧延によって伸ばされる程度が小さくなることを意味しています。
伸ばされる程度が小さいのであれば、食パンの時のように生地が破断するまでの伸び代を考慮する必要性も低くなります。
結果としてクロスモルダーのような構造が装置に求められることはなく、ストレートタイプのモルダーで十分対応が可能となります。
ロール成形
続くロール成形ではどうでしょう。
先ほどの、30gと100gの生地を例にとりますと、寸法比が2:3ですので、仮に同じ回数を巻こうと思いますと、展圧ベルトの有効長に2:3の差が生じてしまいます。
この差を展圧板の傾きで調整するのは、かなりの経験が必要と思われます。
そこで、近年では下図のような展圧ベルトが可動式になっている仕様のモルダーが開発されました。
この可動式の展圧ベルトは、どのようにして使用するのでしょうか。
もし、100gの生地をロール成形する際に展圧ベルトは動かさない状態で適正な巻き数が得られたとします。
その設定で30gの生地を流すと半径は (2/3) になっていますので、1回巻く際の進む距離は100gの生地を流した時と比べて (2/3) になります。
それは、巻く回数が (3/2) = 1.5倍になることを意味し、巻き過ぎてしまいます。
そこで、時間:t でパン生地が距離:L を移動するとしますと、
L = (1/2)(u1+u2) t (1)
と表され、全工程での巻き数:N は、
N = (u1-u2) t / (2πr) (2)
となります。そこで、(1)式の t を(2)式に代入しますと、
N = (u1-u2)/(u1+u2)・L/(2πr) (3)
⇒ 訂正です。shufuinvestさん、ご指摘ありがとうございました。
N = (u1-u2)/(u1+u2)・L/(πr) (3)
が得られます。
そして(3)式に、r = r1、 u2 = 0、を代入した N = L/(2πr1) (4)
r =(2/3)r1、を代入した N = (u1-u2)/(u1+u2)・L/(2π(2/3)r1) (5)
の2式の連立方程式を解いて、U2 を求めますと、 u2 = (1/5) u1 (6)
となり、下部コンベアと同じ方向に(1/5)のスピードで展圧ベルトを動かせば、同じ巻き数のロール生地が得られる計算結果となります。
なお、生地重量が変わってサイズの変更があった際には、(3)式に生地サイズと基準となります展圧ベルトの速度を代入すれば、生地変更を行った際の展圧ベルトのコンベア速度が求められます。
ご連絡
成形の方法は実に多彩で、そのすべてを解説していますと、なかなか次の工程の解説に移ることができなくなってしまいます。
そのような訳ですので、他の成形方法は発酵工程以降の工程と並行しながら、適宜、解説していきますので、ご容赦下さい。