黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

最終発酵(搬送①)

ファイナルプルファーの機種選定

 店舗等での小規模ベーカリーでは一般的にキャビネットタイプの機種が使用されていますが、連続生産ラインではラック式、トレー式、スパイラル式等の搬送方式による機種があり、それぞれに用途や特徴があります。

 その搬送機能に触れる前に、パンの製品アイテム毎における外観品質上の留意点について、記述します。

 それは大きく、型を使用する製品か、もしくは天板を使用する製品か、です。

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 つまり、パンのボリュームが大きくなってきた場合に、菓子パン類のように天板を使用する製品では、ユークリッド座標(直交座標)上におけるX-Y-Z軸の3方向に膨張しますので、外観の寸法は増大するボリュームの(1/3)乗に比例します。

 例えば、最終発酵で見掛けの生地体積が4倍になったとしますと、縦・横・高さのそれぞれの寸法が等しく増長した場合、寸法の増長率は4^(1/3) = 1.59倍になります。

 同様に、もしボリュームに10%のバラツキがあったとしても、各寸法は3%程度の範囲内に収まる計算になります。

 この3%なのですが、私の経験ではなかなか悩ましい誤差なんです。

 よく改善活動で、例えば『この案件で、*%の省エネになります』とか、『生産効率を*%上げられます』といった効果を声高々と掲げて、その一方で『製品品質への影響はほとんどありません!』といった状況に出会うことがあります。

 そのような時、本当に製品品質への影響が出ていないのか、もしかしたら確実に出ている影響が軽微で把握できていないだけなのか、で評価は大きく変わってきてしまいます(当然ですけど)。

 そして更に怖いのは、そのような3%の影響が3つ重なった場合です。

 これも私の経験ですが、2つ重なって影響が6%ちょっとになってきますと、別の場所で見た時には『なんとなく違っているような気がする』程度で、並べて比較しますとはっきりと区別できるレベルと理解しています。

 それが3つ重なって影響が9%超えとなってしまった場合には、これは別々の場所で見たとしても明確に違いが把握できるレベルに達しています。

 さて、何が怖いかと言いますと、そうなってしまいますと何が原因でどう直せばいいのかといった判断が難しくなる事なんです。

 上記の場合、要因は3つありますので、その内のひとつを解決しても元には戻らないんです。

 加えて、逆もまた真なりで、解決した3%の効果をもしかしますと判断できない可能性も出てきます。

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 やっと、本題に戻りますが、天板を用いる製品であれば、多少のホイロ条件のバラツキは許容範囲内に入ってしまいますが、食パンのような型を使う製品ではどうでしょう。

 バラツキは、高さの1方向に集約されてしまいますので、ホイロのバラツキはストレートに焼成後の外観品質に影響を及ぼします。

 前述のような10%のバラツキが出るとは考えにくいですが、それでももし仮にそのレベルのバラツキが出てしまったら、どうなるでしょうか。

 角形食パンなら、確実にボウズ(膨張不足)とレンガ(膨張過多)の製品が入り乱れているでしょうね。

 ここまでの内容を基に、搬送の機械仕様に関しまして次回に解説します。

連続生産ラインではラック式、トレー式、スパイラル式等の搬送方式による機種があり、それぞれに用途や特徴があります。