オーブンの入口と出口
突然ですが、パンを焼成するとオーブンキックで生地が膨張します、これはご存知ですよね。
では、この焼成中に生地体積が収縮を始めていることをご存知でしょうか。
パンがオーブンから出てくる頃には、パンのボリュームは既にピークを越えていて収縮している状態なのです。
そして、この生地膨張・収縮の現象は、パンを焼成する時間の確定に大きく関与してくることから、焼成時間に関連するオーブンの構造にも注意が必要です。
先に解説しましたスパイラル式オーブンですが、搬送コンベアによります天板等の移動速度は比較的高くなっています。
すると、オーブン内への移動による焼成開始や、オーブンから取り出されることによる焼成終了のタイミングは比較的明確です。
改めまして、焼成の開始と終了はどのように判断すべきでしょうか。
それは、天板等が加熱され始めてから加熱されなくなるまでの時間帯であり、オーブン内にあるか否かといった状況と大きな相関があります。
つまり、天板等が明確にオーブンの内か外かにあることを判断できることは、非常に重要なことなのです。
更に、ファイナルプルファーから流れて来た天板等が短時間でオーブン内へ投入されることや、オーブンから取り出された天板等がすぐに次の操作(ショック、蓋外し、型外し)に移すことができることも製品の品質上、重要な意味を持ちます。
なお、次工程の内容は、改めて解説することにします。
それでは、トンネル式オーブンではどうでしょう。
トンネル式オーブンでは、炉内を横数枚の天板等を1列に並べて搬送します。
例えば、上図のトンネル式オーブンで先のスパイラル式オーブンと同等の生産能力の場合、コンベアの搬送速度は(1/5)以下になります。
『以下』と記載しましたのは、スパイラル式オーブンでの天板等の間隔も搬送速度に関係してくるためです。
さて、搬送速度が遅くなるとどのような影響が出てくるのでしょうか。
まず、入口では焼成開始のタイミングが把握し難くなります。
極端な表現では、ひとつの天板等の中に焼成開始の早い部分と遅い部分が混在する状況となります。
ただし、全自動式のオーブンであれば、入口部にはローダーと呼ばれます『オーブン炉内への押し込み装置』がありますので、この装置が確実に炉内まで天板等を送り入れてくれる状態であれば、この課題はクリアできるでしょう。
また、出口には同様にアンローダーと呼ばれます『オーブン炉外への取出し装置』があります。
なぁんだ、それなら問題ないじゃないですか、と言わないで下さい。
先に『この課題はクリアできるでしょう』と記述しましたのは、パンの焼成初期の条件がクリアできるからであって、同晩期での焼成条件には合致しません。
しかも、出口で天板等を取り出すタイミングは一般的に天板全体がオーブンの外に出たタイミングで起動するような設計になっています。
つまり、焼成が終了しているか否かのグレーゾーンを確実に通過してから取り出しているのです。
この事が、なにを意味するかイメージしてみて下さい。
出口に関しまして、更に…、と続くのですが、これも改めて解説することにします。