純粋に『おいしい~!(個人的に)』で、感想はOKなのですが、やはりいろいろと作り方の情報を探っていきたいと思います。
今ではすっかりメジャーになっています、八天堂のくりーむパンは、消費者が商品を口の運ぶまでが工程と考えれば、非常に特徴的な製造方法として説明することができます。
カスタードクリームを包餡してから発酵・焼成すると、通常はパン生地内部にありますフィリング(ここでは、カスタードクリーム)の上部に空洞ができます。
これは、焼成過程でパン生地部分が膨張する際に、決して膨張することがないフィリングとの間に蒸発したアルコールや水分が気体の状態で蓄積されていく為です。
ところで、一般的なクリームパンはパーカー成形と言って、パン生地をふたつに折ってフィリングを包むような包餡方法が採用されているケースを多々見かけますが、この商品はパーカー成形を採用していません。
焼成後の製品に水分を保持する等の理由でしょうか(パーカー成形ですと、比表面積が広くなって水分が蒸発し易くなります)、アンパンの包餡方法と同様の成形がされています。
話を元に戻しますと、このままでもクリームパンとして十分商品になり得るのですが、この空洞を利用して後充填のフィリング(ホイップクリーム等)を追加して、差別化を図ることもできます。
パン製品の多様化が進んでいます昨今、ホールセールの大手ベーカリーでも対応が進んでいる方法のひとつです。
ところで八天堂のくりーむパンですが、全体的な焼色は薄めながら、比較的上面にコントラストが付いて着色されています。
このように焼くためには、オーブンの形態としてデッキタイプの輻射熱を利用した機種を使用し短時間焼成を行った場合に、このような状態になり易い傾向があります。
もし、そのような焼き方をしているのだとすれば、生地中の水分に関して非常に注意を払われていることが考えられます。
コンベクションタイプのオーブンでは、焼色のコントラストは付き難いですし、水分の蒸発量が著しいですから。
商品は非常にしっとりしていて、消費期限も翌日まで、と日持ちが短くても、より特長的な食感を楽しんでもらいたいという作り手の思いが伝わってきます。
保存方法も、要冷蔵10℃以下となっていることから、従来の菓子パンの常識とは逸脱しています。
このくりーむパンを食べるシーンをイメージして頂きたいのですが、10℃以下の状態で包装紙から取り出しますと、よほど周囲が乾燥している状況でない限り、まず商品は乾燥せず、逆に湿潤します。
10℃の飽和状態の空気は絶対湿度が非常に低く、くりーむパン周辺の空気中の水分が結露するためです。
先に食感と記述しましたが、温度を加味すればクリームの食味についても、そのおいしさを引き出すための保存条件なのでしょう。
価格は、くりーむパンカスタード、くりーむパン生クリーム&カスタード、共に210円(税込)です。
感覚的には、菓子パンというよりもデザートの菓子に近いポジションに位置付けられる商品ですね。