圧延
以前は、成形工程の圧延に関しまして、次工程のロール成形に先立つ形状調整の意味について、解説しました。
ただ、この圧延にはガス抜きという異なる側面からの意味も非常に重要ですので、追記で記載していきたく思います。
ガス抜きというからには、当然、内部に発酵によるガスが蓄えられている状態の生地に対して行われます。
中間発酵で分割時の生地ダメージを回復させた生地は、20分ほどの時間で内部に酵母の活性化によりますガスが発生した状態にあります。
この時、ガスの気泡は大小様々な大きさのものが分散している状態で、このまま発酵を進めて焼成してしまいますと内相が歪で揃わない状態になってしまいます。
当然、生地膜も厚い箇所ができてしまい、食べた際のソフトでしっとりとした食感からは遠くかけ離れた製品ができてしまいます。
そこで、この気泡の中の大きく膨らんだものだけを潰して、細やかな気泡に揃える操作が必要になってくる訳です。
気泡は、サイズが大きくなると外部からの力学的な力には強度が低く、容易に変形・破損させることができます。
つまり、圧延ローラーのクリアランスを狭くしていくことに伴って、 大きな気泡から順次破裂させていくことができ、より小さな気泡のみを残して分散させることができるようになります。
最終発酵の終了時は、生地内の空隙率を揃えることになりますので、全体的な気泡サイズが小さくなれば、必然的に気泡の延べ表面積は大きくなりますので、結果的に生地膜の厚さは薄くなります。
一見しますと、せっかく膨らんだ生地をわざわざ潰すような作業に疑問を持たれることもあるかもしれません。
しかし、このような細やかな作業の積み重ねのひとつひとつが日本におけますパンの品質を支えています。
それこそが、パンをソフトにしっとりさせる日本の製パン技術が世界的にも誇れるレベルにある所以だと思っています。
ところで、圧延ローラーのクリアランスは狭くしていくことで、確かに気泡サイズを揃えることができるようになりますが、当然延ばしていくにも限界はあります。
限界を超えてパン生地を薄くする(延ばす)ことは、パン生地自体の破断を招きます。
大手製パンメーカーが導入しています一般的な連続製パンラインでは、機械耐性といった観点からパンの製法や配合が検討されていますが、この成形の工程は分割工程と並んで大いに注意が払われている工程と位置付けられています。