焼成工程の要因について
先日はオーブン内で生地体積が縮小する窯痩せについて解説しましたが、今回は最終製品の品質評価の対象となります外観形状:腰折れ(ケーヴィング)について記載します。
食パンの外観が折れ曲がってしまう腰折れですが、このような症状が出てしまいますと、焼きが甘かったとか、生地ができていなかったとか言われてしまうことが一般的ではないでしょうか(先述の内容に従いますと、焼成時間が長すぎた、という要因も当然挙げられます)。
ですが、もっとシンプルに考えれば、『パンのクラストの強度が作用する力に耐えられなかった』という理由に他ならないと私は思っています。
例えば、上の写真のように食パンの横が折れることもありますし、上の面が折れることもあります。
それらを一括りに検討して問題が解決されるでしょうか。
クラストが内側に引っ張られる理由は、窯痩せで出てきました重力と、パン内部の水蒸気が収縮して、そして凝縮することで生じる負の圧力です。
加えて、本来は同時に外部から流入する空気が、なんらかの理由でパンの内部に入り難くなっているからです。
一方、内側に引っ張られる力にクラストの強度が耐えられなくなる要因には、どのような事象があるのでしょう。
単純に考えれば、元々の強度が弱かった、もしくは時間の経過と共に弱くなった、の二通りです。
けっして一つだけとは限りませんので、今回は上の写真にありますような、片方の側面が折れているケースについて考えてみることにします。
このケースでは、明らかに片側の側面だけクラストが薄くなっていることが分かります。
向かって左側のクラストは厚く、明確な焼色も確認できますが、右側のクラストは若干の着色が見られる程度です。
実際にこのようなことが起こるのでしょうか。
スパイラル式オーブンを流れる食型を例に考えてみましょう。
連続生産ラインでは、一般的に食パン用の型は複数連結された仕様のもの(連型)が使用されています(上図では、4連型)。
図を見て、お分かりの通り、ひとつの型でも進行方向の右側と左側とでは随分環境が異なっていることに気付きます。
上図の連型の内、内側の2型はほぼ同様の条件で、燃焼ガスが食型の周囲を回りますが、左側の食型の左側は大きな空間に面している状態にあります。
ただ、この場合は、連結している型間の間隔が十分に開けられていれば、近い加熱状態にすることが可能です。
ところが、右側の食型の右側にはオーブンの内壁があり、ここからの輻射熱を食型の右側面は直接受けることになります。
結果的に、上図の4連型では、少なくとも右側の食型の右側面が濃い焼色に着色してしまいそうな推測ができてしまいます。
さて、この影響を軽微に抑える方策はあるのでしょうか。
当然、あります。
伝熱の形態が輻射と分かっているのですから。
写真のような焼色のバランスの食パンができないように。