パンを冷却する時に守るべき条件
まさかとは思いますが、焼成したパンの冷却を『放置』と考えている方はいないと思います。
パンが焼き上がったら、次工程のために常温程度まで冷やさなければなりません。
しかし、この工程も重要な加工工程で、加工方法を誤れば、それはたちどころに品質に表れてしまいます。
まずは、基本的なところで冷却のメカニズムと加工条件に付いて解説します。
焼成したパンの温度が下がる要因は、大きく2つです。
ひとつは主に対流による熱移動と、もうひとつは水分の蒸発による潜熱です。
どちらも結果的に熱の授受があるのですが、ここには非常に注意すべき点があります。
それは、冷却する製品周りの温度は、経時的に下げることは構いませんが、決して上げてはいけない、ということです。
なぁんだ、そんなこと?、と思われた方もいるかもしれませんが、たったそれだけのことを忠実に守って本当に製造できているのでしょうか。
物理的な量を示すものは概ね高い方から低い方へと流れていきます。
電気も、濃度も、熱も、水も…です。
つまり、一度冷却されたパンが再度暖められますと、熱が移動して温度が上がるだけではなく、水分も移動して含水率が増えるということになります。
この事が何を意味しているか、お分かりですよね。
ラック取りとブレッドクーラー
さて、具体的に焼き上がったパンをラック取りで冷却するケースを考えてみましょう。
一般的に、後から焼き上がったパンは先に冷却している製品のラックの上段へ挿します。
先に冷却している製品の下段に入れてしまいますと、せっかく冷却していますパンが後から挿したパンの熱で温まってしまうからです。
このような操作は、製パンの現場で普通に教育されて身についているものと思います。
それでは、連続製パンラインでブレッドクーラーを装備しているケースを考えてみます。
ここでは、既に製パン設備が導入されている状況ですので、その装置を運転するしかないのですが、(皆さんの工場では)焼き上がったパンは下図のようにブレッドクーラーの上段から入っていますか?
製パンの理論が分かっていれば全然難しい問題ではないのですが、問題となりますのは設計する人がまったくの機械屋さんだった場合です。
機械屋さんは、往々にして(これも当然必要なのですが)スペース効率や生産効率を最優先にしてラインの設計をしてしまう事があります。
つまり、オーブンの低い位置からパンが出てくると、そのパンをわざわざ高い位置まで上げていってブレッドクーラーへ入れるような面倒なことを避けてしまう懸念が出てくることです。
もしも、ブレッドクーラーの下段から焼き上がったパンが入っていたとしたら、…その状況は考えたくないですね。
最後に、パンを中心部までしっかりと温度を下げようとした場合、空調設備を利用して低い温度の環境下で冷却することになります。
ただ、焼成直後のパンの冷却に空調の効いた空気が必要でしょうか。
40℃のパンであれば20℃の空気で冷やした方がいいと思いますが、90℃のパンであれば(猛暑日の)35℃の空気でも十分に冷却することができます。
空調を効かせた空気はお金が掛かって高価な空気になっています。
コスパを考えて、装置も設置する方がいいですよね。