U字成形、N字成形、M字成形
これまで食パンの腰折れについて、焼成~クーリング時での力の発生やクラストの強度の観点から解説をしてきました。
ところで、クラストの強度という点に関しては、成形方法が起因しているところも挙げられますので、少し工程としては遡ってしまいますが、今回はこの課題について記述していくことにします。
食パンの成形作業は、ガス抜き⇒圧延⇒カーリング⇒展圧(ロール成形)と流れて、その最終作業は、ロール成形した生地を食型に型詰めすることです。
ところで、棒状のロール生地は、その長さ(=生地重量)によって、一般的にはU字、N字、M字成形の方法が採られます。
下の図は、概ね3斤サイズの角形食パンを製造する際の生地重量を計算し易い値にして示したものです。
U字なら240gで6玉、N字なら360gで4玉、M字なら480gで3玉、と単純に総生地重量から生地サイズと成形方法を結び付けただけのものです(生地重量は、計算し易い値を入れました)。
ところで、これらの成形方法にもいろいろな事情が絡んできます。
リテイルベーカリーでは、大型の成形機を導入することが難しいため、それほど重量が大きくない生地を扱うことになりますので、U字成形を採用される傾向にあります。
もっとも、ガス抜きとロール成形にこだわりがあるベーカリーでは、俵成形をされている店舗もあろうかと思います。
次にN字成形ですが、これは生地重量がU字とM字の中間サイズです。
正直、あまり採用されているところを見たことはありません。
そして、これらの成形方法では型詰めは基本的に手作業となります。
次に、M字成形ですが、この成形方法のメリットは生地重量を大きくすることで1製品当たりの生地数量を減らすことができ、大量生産に寄与できることにあります。
単純にU字成形の半分の生地個数で製造することができますが、その分、製パン機械設備は大型化します。
ガス抜きのローラーも単段で一気に圧延することは叶いませんので、複数の圧延ローラーを備えて対応することになりますし、ロール成形のコンベアも幅広の仕様にしなければなりません。
腰折れとの関係
さて、それでは先述の成形方法で、どれがもっとも腰折れし易いと予想しますか?
答えは、M字成形におけます下図の箇所になります。
ちなみに、この現象は多くの文献でも紹介されている事象でもあります。
工学的な視点で考察しますと、 建築物で言うところの梁がない部分ということになります。
しかし、それであれば他の側面(上図、U字の下側、N字の上下側。M字の上側)でも同様の折り返し面はあるように見えますが、実際に並べてみますと側面のクラストに占めるフラットな面の占有率は、このM字の下側が断トツに広くなっていることが分かります。
機会があれば、その事が確認できる製品を購入して、皆さんにお示ししたいと思います。
さあ、腰折れを起こし易い条件がいろいろ出てきました。
そして、メカニズムも解明されてきています。
そうなれば、解決法も検討できますよね。
続きは…、どこまでの内容を公表するか、もう少し検討します。