『これを食べてはいけない』という本
少し前にこのようなタイトルの本が出版されて、随分と話題になりました。
製パン企業が己の利益を追求するがために、安全性を軽視しているかのような記述です。
さて、そのような記述をされる方は製パン工場をどこまで御存じなのでしょう?
商品の消費期限をほんの半日延ばすために、どれだけの企業努力(技術開発も、設備投資も)を重ねているか、ご存知なのでしょうか。
今のマーケットには、消費者が商品を選択できる環境にあります。
その判断材料として、ホールセールの商品の包装には法律に基づいた原材料表示がされていますので、それぞれの方が検討することはできるのですから。
市場にマッチしていない商品は、自然と淘汰されていくものです。
スライス~包装
さて、ホールセールの商品にカビが生え難い理由の一つとして、ここでは食パンの包装工程について解説したいと思います。
オーブンで焼き上がった食パンは100分程度冷却されて、次の包装工程に入ります。
まずはスライスですが、手作業で経験にある方もいらっしゃると思います。
パンの温度が高いと上手に切れませんよね。
製品をスムーズにスライスできる適正な温度まで冷却することと同時に、クーリングから包装室に及ぶ作業環境は、気流も含めた厳格な温度湿度の管理がされています。
(出典:㈱オシキリ)
スライサーは、 上図のようにバンド式、レシプロ式といった仕様の装置にコンベアで搬送された食パンが順次流れていってスライスされます。
一般的に販売されています、スライス幅は1斤(およそ12cm幅)を4枚、5枚、6枚、8枚、(サンドウィッチ用には10枚)に等間隔で分割した幅となります。
スライサーのブレード間隔は、商品に合わせて自動で変更が可能になっていて、パネル上での操作で対応できるようになっています。
ちなみに、比較的関東地方では6~8枚スライスが、関西地方では5~6枚スライスが好まれているそうです。
そして、スライサーを出た食パンは、まず両端のクラスト(耳)の部分が外されて、1斤ごとの振分け装置に移載されます。
近年は、単身向けにハーフパック(半斤サイズ)の包装も増えてきていますので、その対応もできるよう改良が重ねられてきています。
そして、規定数量に振り分けられました食パンは自動で包装されて、消費期限等を包装紙に印刷されて検査・出荷となります。
ホールセールのパンにカビが生え難い理由とは!
さて、ここまでの工程でなにか気が付いたことはありませんか?
そう、近年の製パン工場の食パンラインでは、特に焼成後の製品に人が手で触って加工する工程は、ほとんどありません。
人の手はいくらゴム手袋等で被ったとしても、機械設備の表面のようにアルコール等で完全に除菌することが困難な為、人が触るとどうしても、細菌の汚染が危惧されてしまいます。
食品衛生に関しては安心・安全を図る目的で、国内の多くの企業でHACCP等を取り入れて環境の整備に取り組んでいるのが実状です。