中種法、湯種法、自家培養酵母、等々
ホールセールの製パンメーカーが手掛ける製品開発の数量には、本当に驚かせられます。
開発のヒントとするところも、原材料、海外、リテイルベーカリー等と多岐に渡り、この先どこまで手掛けていくのか、と興味は尽きません。
そのような中、ふと低温長時間発酵を謳っている製品がちらほらとみられるようになってきていることから、中種法でも冷蔵中種法に関します製パン機械設備について、少しまとめてみることにしました。
まず、冷蔵中種法ですが、常温発酵(25℃)でのエタノール、エステルに加えて、低温発酵(6℃)によりますアセトン、アセトアルデヒドといったフレーバー、高級アルコール類の有効成分を生成させる製法です。
また、冷蔵中種は本捏時に使用できる時間のallowanceが長く、一晩保存の後、翌日の朝から24時間は使用可能との記載もあります。
製パン機械設備ですが、ここではドウボックスを取り上げてみることにします。
ここに、形の異なる2種類のドウボックスがあったとします。
中種の種類によって、考慮すべき点はあるのでしょうか。
例えば、通常の中種法でしたら、生地内部の発酵状態はどのようになっているか、イメージしてみましょう。
仮に、捏上温度が24℃、第一発酵室の設定が温度:27℃、湿度:75%だったとします。
生地の内部では、パン酵母の活性によって発酵が進み、それに伴って発熱が生じます。
1時間に1℃の温度上昇が生じるとして、2~4時間後の生地内部での最終温度のムラはあまり生じないことが推測されます。
つまり、生地内部に温度分布は概ね均一の状態で推移していくことになります。
それであれば、ドウボックスの形状は、周囲の温度の影響を受ける必要もありませんので、材質も含めて大きな制約はないことが分かります。
極端な話、十分に保温・保湿ができていれば、問題は無いと考えられます。
それでは、冷蔵中種の場合はどうでしょう。
低温発酵による独特の風味を持たせるために、生地温度としては6℃以下、生地を冷蔵する庫内温度としては4℃以下が求められています。
捏ね上げ温度が24℃場合、実に20℃以上の温度変化を伴うことになります。
もちろん、生地内部が均等に冷却されることはありませんので、少なからず場所毎の発酵状態に差が生じます。
ということは、最適な発酵状態を中種に与えるために種全体の温度はできるだけ均一に推移させる必要が出てきます。
そうなりますと、中種の形状は薄板状にして全体への熱移動を容易にさせることが有効であろうことが予測できます。
更に、中種の発酵状態は常温の発酵の効果も含めたものですので、必要に合わせて予備発酵を行うことになる訳です。
よく、試作室で良好な結果が出ていたのにライン製造で思った結果が出ない、といった話を耳にします。
製造条件のスケールアップに伴って、本来の製造条件がクリアできていないケースがほとんどではないでしょうか。
スケールアップした製造環境で、最適な条件をパン生地に与えるためには現場で変更すべき事柄は必ず出てきます。
それは、ドウボックスの仕様であったり、予備発酵の条件であったり、と。
実際の生地温度を測定して、確認してみて下さい。