スナックパンって、誰が開発したのだろう…
スナックパンと言えば、お子様に人気で、今や複数の製パンメーカーが手掛ける定番商品です。
そういう私も、今から50年ほど前の小学生の頃、よく食べていた記憶があります。
考えてみますと、超ロングヒットの商品なんですね。
今ではシリーズ化されてきて、いろいろな種類のスナックパンを目にすることができます。
ところで、このスナックパンですが、このパンを一から作ろうと思った場合、一般的な製パンの常識からかなり逸脱していることを思い知らされます。
アンパンやメロンパンの開発者の話は耳にすることがあっても、スナックパンの開発者に関します文献は目にしたことがありません。
改めて調べてみますと、どうもマーケットに登場しましたのは1970年に敷島製パンからのようです。
なんと、私が以前に在籍していた製パンメーカーでした。
そういえば、入社間もない工場勤務の折に、『スナックパンだけで専用の生産ラインがひとつできた』といった都市伝説的な話を聞いた記憶があります。
ところで、あのサックリした独特な食感は、どこから来ているのでしょう。
配合
配合から考えられるひとつは、油脂量の多さです。
デニッシュペーストリーのロールイン油脂や塩パンに包餡するバター等は別にして、従来のパン生地の配合からと比較するとかなり多い油脂が使用されています。
そして、もうひとつは小麦粉ではないでしょうか。
しっとりした食感を求めないスナックパンであれば、タンパク含量の多い強力粉のみではなく、薄力粉をブレンドして製造することも考えられるかと思います。
ミキシング
続いて、製法面から見てみましょう。
通常の本捏ねミキシングでは、油脂以外の原材料をまず混合してから、その後に油脂を投入して混捏しますが、前述の通り、油脂量の多いスナックパンの場合には最初のミキシングの段階で油脂の一部を混合させた上で、再度残りの油脂を投入してミキシングする方法を目にしたことがあります。
理由は、生地のミキシング状態をアンダーの状態に維持しつつ、均一な油脂の混合を行う為と考えています。
捏ね上げのタイミングは、フルディベロップの遥か手前です。
成形
そして成形工程では、分割重量が30g程度の非常に小さな生地をロール成形で15cm程度まで細長く伸ばさなくてはなりませんので、圧延ローラーのクリアランスも非常に狭く設定されていることが推測されます。
その上で、製品毎のサイズ(長さ)も揃えなくてはいけませんので、モルダーでは展圧ベルト下の生地巾ガイドが少なからず利用されます。
生地重量が小さく、長さがあるということは、展圧ベルトで少し高さが変わっただけでも、生地長さに大きく影響することになる為です。
非常に小さな(細い)生地形状ですので、焼成時間は当然短くなります。
それと、上火には(遠赤外線のような)輻射熱ではなく、対流加熱を利用した方が、あのサックリとした食感は出し易いように思われます。
苦労するところ
このような規格外?の商品ですから、製造するには少なからず苦労する点がありそうです。
一例として、中間発酵ですが、手作業の時にはキャンバスに丸めた生地玉を並べて、霧吹きをし、一定温度で休ませます。
ところが、ここでも油脂量の多さが手間を掛けることになります。
たとえ手粉を付けても、時間と共に油分が生地から浸み出してくるのです。
キャンパスには、くっきりと生地を載せた跡が残ったりします。
これが連続生産ラインとなりますと、丸めた生地は上図のようなパケットと呼ばれます網上の籠に載せて休ませます。
ここで、油分が浸み出して来たらどうなると思いますか?
パケットの掃除が大変です(手粉と油分の塊は異物混入の懸念がありますから、非常に気を遣います)。