小麦粉の特性
パンの作り方から装置技術のことを主に話していますと、つい原材料には無関心かと思われる方もいらっしゃるかもですが、いえいえど~して必要最低限の原材料の知識は持っていないと(往々にして不具合のケースが多いのですけど)機器装置関係の課題解決に行き詰まってしまいます。
今回は、パンの原料(小麦粉、塩、パン酵母、水)の内、小麦粉について、少し解説してみます。
パン用に使用されます小麦粉には、タンパク質含量の多い強力粉が主に使用されます。
これは、グリアジン(粘性)とグルテニン(弾性)というグルテンを形成するタンパク質が一定量含有されていることで、本捏ねミキシングした際の生地の伸展性や弾力に影響し、結果的にパンの内相や外観形状に影響するからです。
一般的に、パンに使用されます主な小麦粉は強力粉でタンパク質含量も高く、11.5~13.5%となっています。
なお、小麦粉はタンパク質含量によって下記のように区分されています。
(タンパク質含量)
超強力粉:13.5~15.0%
強力粉:11.5~13.5%
準強力粉:10.5~12.5%
中力粉: 8.0~10.5%
薄力粉: 7.0~ 8.5%
ちなみに、同じ麦類でもライ麦粉にはグリアジンは含まれているものの、グルテニンが含まれていません。
また、同じ穀類でも米にはグリアジン、グルテニン共に含まれていません(グルテンフリーと言われます所以です)。
ところで近年、ゆめちからといった品種の小麦が育種されて、超強力粉という区分の粉が生産されるようになりました。
実は、以前、企業に在籍していました時期に、当時北海道農業研究センターにいらっしゃった山内氏(現帯広畜産大学教授)から、農林水産省の委託プロジェクト終了後に紹介を受けた品種です。
そのタンパク質含量は数値で見ますとあまりピンと来ないかもしれませんが、上図のような棒グラフで表してみますと、それぞれの種類の粉で大きな違いのあることが視認できます。
さて、この超強力粉のゆめちからですが、中力粉とブレンドすることで既存の強力粉と同等の品質の粉を得ることができます。
例えば、タンパク質含量:14.5%のゆめちからを60%と同:9.5%の中力粉40%をブレンドしました場合、タンパク質含量:12.5%の強力粉と同等に扱うことができる小麦粉を得ることができます。
⇒ (14.5%×0.60 + 9.5%×0.40 = 12.5%)
少し脱線しますが、このような考え方は添加剤であるグルテン製剤を配合する時にも考え方は同様で、この場合は、中力粉(タンパク質含量:9.5%)に対して+3.0%に相当するグルテン製剤の添加で強力粉(タンパク質含量:12.5%)に合わせています。
スーパーやコンビニ等で米粉パンを見掛けられましたら、包装紙裏側の成分表をチェックしてみて下さい。
米や小麦の他に『小麦タンパク』という表示があれば、それはグルテンの不足を補うためにグルテン製剤を使用している可能性があります。
なお、グルテン製剤は自然食品由来の材料であり、決してこの材料を否定するものではありませんので、誤解なきよう。