黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

スポンジケーキの焼成メカニズム

バッター生地による製品の焼き方

 先日にパンケーキとカステラの焼成について解説しましたので、今回はスポンジケーキに関して記しておこうと思っています。

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 同じバッター生地だし、似たようなものでしょ!、と思っていると、真相の深掘りはできませんよ。

 思うのですが、日本人が海外の国際的なパンや菓子のコンクールで優秀な成績を収めているのは、頂点を極めんとする匠の気質があればこそと思っています。

 ことビジネスという点では、海外に良いとこ取りをされてしまう懸念もありますが、少なくとも日本が世界に対して優位に立っているところは、今後も継承されていくべきではないでしょうか。

スポンジケーキ焼成時の熱と物質移動

 パンを焼成する場合には生地は(膨張はしますが)ほとんど流動しませんので、物質移動は概ね水分の蒸発と凝縮のみを考えれば説明することができます。

 そしてバッター生地でも高さが出ないどら焼き・パンケーキや側面からの加熱を遮っているカステラに関してもほぼ同様で、問題はあまりありません。

 ところが、スポンジケーキ焼成カニズムを検討する際には生地の流動がストレートに影響しますので、実際にケーキを焼く際にもその点を考えながらオーブンを操作する必要があります。

 それでは、スポンジケーキがどのように焼き上がっていくのか、順を追って解説していきましょう。

 一般的には金属製のケーキ型に生地を流して、(上火・下火の調整が可能な)デッキタイプのオーブンで焼成します。

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 焼成直後では、底面からの伝導熱で顕著に底部の生地温度が上昇し、続いてその熱が金属製の型側面に流れて、そこに接している生地が続いて加熱されます。

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 加熱された部位の生地は、ミキシング時に抱き込まれた空気が膨張することで見掛けの密度が下がると共に生地の粘性が下がる為、上方向の自然対流が起こり型近傍の生地が隆起します。

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 型側面部近傍の生地が隆起することで、中央部と周辺部との間に生じた生地高さの差によって、周辺部の生地が中央方向へ押し出されます。

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 その結果、製品上層部の中心方向への流れと周辺部の上方向への自然対流の影響で、中央部に比較的密度の高い生地が押し出していくことで、中央近傍の絶対的な生地量が増加します。

 言い換えれば、スポンジケーキの外観形状はバッター生地の流動性によって決定付けられます。

 オーブンの温度設定は、固定時期のオーブンの場合、主にスポンジケーキの焼色によって決められることが多いですが、近年の機種に組み込まれています温度プログラムやトンネル式などの連続式オーブンでは、時間経過と共に温度を調整することで理想的な焼き方を行うことができるようになります。

 ちなみに、焼成初期の上火の強さと製品形状との関係は、

・上火が強すぎる場合
 周辺がやや盛り上がり、王冠のような形状となって、高さ(ボリューム)が出ない。
 内相は、目が詰まり気味の傾向となる。

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・上火が弱すぎる場合
 高さは出るものの、中央付近が特に盛り上がった形状となり、生地の廃棄ロスが多くなる。歩留まりが悪い。

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 スポンジケーキを焼き上げた後、クーリングを取る工程で生地は体積が収縮します。

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 その際、周辺部の生地と比較して中央部の下がり方の方が大きいため、冷却(収縮)後に生地上面がフラットに近い状態になる程度の膨らみとなるよう、設定温度を確定させて下さい。

 なお、具体的に連続式オーブンの温度設定を行う際には、固定式オーブンの設定を基に、焼き上がったスポンジケーキの焼色と形状を見て、焼成初期と後期の温度を調整することになります。

 

ミキシング

 と思いましたが、少し長くなりそうですね・・・、という訳で、また次の機会に・・・。