手粉、それは配合表にも記載されない隠れた原材料。
そんな黒子のような存在の手粉にスポットライトを当ててみました。
【 目次 】
手粉と言いますのは、本来、パン生地を加工する際に表面がべた付いて操作の妨げになることを防ぐ目的で用いられるものです。(下の画像は、使用した天板に手粉を散布し、そこに並べた冷凍生地を解凍後に取り出しているところです)
どのグレードの粉を使用するかは、それぞれのベーカリーの判断なのでしょうが、強いて言えば、そこにあった粉・・・、特に決まりはありません、半端な量が余ってしまったとか・・・。
でも、大手の製パンメーカーでは使用量が多いこともあって、手粉用の専用粉を使用しているようですね。
それでは、分割後の玉生地を丸める工程から成形までに焦点を当てて、解説することにします。
丸目
手作業であれば、丸めた後の生地を目視しながら手粉が散布されたキャンパスに押し付けますので、ほぼ間違いなく生地の表面全体に手粉を付着させることができます(画像は、冷凍生地解凍後の再丸目)。
これは至って普通の作業なのですが、時として人の手というものの偉大さを知ることになります。
手作業と比較して、装置(ラウンダー)を使用して連続的に生地を流す場合は、丸められた生地がハーフパイプ形状のシュートを転がりながら搬送されるシーンをよく見かけます。
このシュートの入口部分には、手粉を散布している装置があって、丸目を終えたパン生地は降り注ぐ手粉のシャワーを通過しつつ、手粉が溜まったシュートの坂を転がってくる訳です。
ところが、これがなかなか確実に生地前面に手粉を付着することができず、往々にして一部がべた付いたままの状態で出てきてしまいます。
そこで考えられたのが、シュートの部分が回転してより確実に手粉を付着させようとした装置です。
今、もっとも効果的な装置では、と思っています・・・、ただし、この装置でも若干の手直しが必要ではあるのですが。
ベンチタイム
丸目直後の生地はダメージが残っていますので、15~30分程度、生地を休ませます。
細心の注意を払うところは『生地を乾かさず、そして湿らさず!』です。
つまり、ベンチタイム時の生地周囲の環境は『生地と同じ温度で、相対湿度100%』の状態が求められることになります。
手作業の場合は、パン生地をキャンバスで覆い、霧吹きした後に、閉じた空間で
一定温度を保てば対応できます。
しかし、連続生産ラインのオーバーヘッドプルファー(以下、OHP)では上図のようなメッシュ形状の籠に入れられて生地を休ませます。
見ての通り、生地は露出しており、周囲の空間の影響を受け易いことは容易に推測できます。
手粉の重要性はますます増します。
成形
手作業の成形時には、めん棒に生地が付かないよう手粉を使用します。
ただし、手粉を付けすぎますとロール成形時に生地が結着せずに、最悪の場合、焼成後の製の内相にカギ穴と呼ばれます空洞ができたりしてしまいます。
成形機(モルダー)は、どのような構造になっているのでしょうか。
上図①の圧延ローラーの近傍には、ちゃんと手粉の装置が付いています。
手粉の付着が不適正だった時の不具合
大まかにですが、連続生産ラインで丸目~成形時にパン生地への手粉の付着が不適正だった場合の不具合を列記してみました。
・OHPに生地が付着して、ライントラブルとなる。
・モルダー(特に圧延ローラー)に生地が付着して、ライントラブルになる
・成形後の生地が十分に結着せずに、製品内相の品質低下を引き起こす。
どうですか、地味ですけど重要な手粉のお話でした。
雑談
最後に、パスコの国産小麦使用食パンですが、配合表の記載では小麦粉はすべて国産小麦です。
しかし、以前に発売されていました国産小麦食パンには『国産小麦100%』の記載がありませんでした。
どうして、国産小麦100%使用と記載しなかったのでしょうか。
それは、生産ラインで使用しています手粉が外国産小麦だったから、のようです。(省庁の指導では、国産小麦100%の記載で問題なしとの回答を受けていたようなのですが・・・4)
でも、今、発売されています超熟国産小麦には、しっかりと記載されていますね、『国産小麦100%』と。