西洋のパンは安土桃山時代(1543年)に種子島に漂着したポルトガル船の宣教師によって、鉄砲と共に日本へ伝来しました。
ところが、今やパンは日本で独自の進化を遂げて、欧米諸国を始め世界の多くの国々から注目を集めています。
日本で進化した代表的なパンのひとつ、メロンパンが今回のお話です。
【 目次 】
メロンパンの歴史と市場
メロンパンの名前の由来は諸説ありますものの、マスクメロンに形状が似ているからといったことが現在の主流とされています。
しかし、最初は形状も(ラグビーボールを縦に半分に割ったような)紡錘形のメロンパンだったそうで、今でも関西や中国・四国の一部ではメロンパンといえばこの形状のパンを指しているところもあるとか。
その後、日の出の形を摸擬して、円形で上部にビスケット生地(以下、ビス生地)を乗せたサンライズと呼ばれますパンが開発されましたことから、これが全国的に広まっていき、徐々に紡錘形のメロンパンが姿を消していくと共に、ビス生地繋がりでメロンパンの名前が引き継がれていったということのようです。
そんなメロンパンは、今や日本のパンを代表する定番商品であり、ラインナップを揃えた専門店さえも出店されている状況です。
大きなメロンパン
以前のTV番組で山崎製パンのメロンパンが紹介され、専用の製造ラインの様子が映し出されていました。
当然のことながら、製造条件は社外秘とのことだったのですが、解説をされていました工場担当者の方はオーブンサイズと時間当たりの処理能力を話されていました。
そして、さらに画面にはオーブンから出てくるメロンパンが天板の枚数と併せて、載せ数が簡単に数えられるように映し出されていましたので、結論を言いますと、この放送で山崎製パンでの
メロンパンの焼成時間が計算できました。
外観
形状は腰が高く、ビス生地の網目模様もきれいに出ています。
編目のカットは深く切れてしまいますと、表面にパン生地が出てきてその部分が褐変化(着色)してしまいますので、絶妙なカットがされていることをこの商品は示しています。
そして、裏返してみますと、
まず気付きますのは、ビス生地が均等にパン生地の底面を周っていて、成形時に均一に覆っていたことが分かります。
いかに腕のある製パン技術者であっても、ここまできれいに揃えることは並大抵のことではありません。
それと、外観形状の高さを出すために円形のプレス天板が使用されていることも推測できます。
段差が付いている箇所の寸法を測定すれば、大体の天板仕様も算出可能です。
食味と食感
製品を触った時点で、ビス生地の硬さとパン生地のソフトさが伝わってきます。
ビス生地は焼色を付けないように焼きながらも、カリッとした食感にするための水分蒸発が十分に行われています。(そのための、焼成時間なのでしょう! あえて、具体的な数値の記載は控えますが・・・)
当然のことながら、食べた際の食感も触感通りのカリッとしたビス生地とふんわりソフトなパン生地を楽しむことができました。
ミニミニ工場見学
ここでは、パン生地にビス生地を合わせて成形する工程について、解説します。
ベンチタイム後のパン生地は、ガス抜き・再丸目後にビス生地を被せ、改めて丸目と同様の操作で双方の生地を密着させます。
この際、仮にビス生地の形状が均等な厚さの円盤状であった場合、その後の密着させる操作時に上部のビス生地は伸ばされて薄くなってしまう為、良好な品質が望めません。
ビス生地は、周辺部を伸ばして薄くする必要があります。
手作業の場合は、ビス生地の周辺部をめん棒等で伸ばすのですが、連続生産ラインの装置ではどのような機構でビス生地を加工しているのでしょうか。
生地としては硬い部類に入りますビス生地ですが、それでも流体ですので、ポンプを使用してパイプの中から送り出すことは可能です。
すると、硬いながらも送り出されてきましたビス生地は、配管に接している部分は接触抵抗があって出難くなり、結果として上図のように中央部分が膨れた形状で押し出されることになります。
当然、配管の内径は被せたいビス生地の外径に合わせます。
その配管先端部から出てきた部分のビス生地を横方向からカットすれば、中央部分は厚く、周辺部は薄いビス生地が得られるという訳です。(製パン機械設備の、ほんの一例です)