黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

カスタードクリームパン・パスコ ~ パーカー成形というフィリング充填の方法

 日本の3大菓子パンと言えば、私が連想しますのは『あんパン』『ジャムパン』『クリームパン』の3品種ですね。

 

 あんパンの元祖が木村屋(明治7年)ということはそれなりに知られていますが、ジャムパンも木村屋から明治33年に発売されたそうです。

 

 ではクリームパンは、と言いますと、こちらの元祖は中村屋で発売は明治37年のことでした。

 

 今回は、そのクリームパンの独特な成形方法について解説します。

 

【 目次 】

 

カスタードクリームパン 

  カスタードクリームパンは、パスコでも定番商品の菓子パンです。

 

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 近年は、クリームパンの種類も非常に多くなっていて成形方法も多岐に渡っています。

 

 しかしながら、従来からあるクリームパンの形状は、小判型の生地を中央で折って、端に切れ目を入れたような外観が一般的でした。

 

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 話を少し戻して、中村屋で生まれたクリームパンは、発売当初は柏餅のような形をしていたそうです。

 

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 そこから上図のようなグローブの形になった明確な理由は分かっていませんが、有力な説としては『パン生地を発酵させた際にできてしまう空洞をなくすために、生地に切れ込みを入れたから』ということのようです。

 

 つまり、生地内部に空洞があったのでは、食べられたお客さんが空洞のパンを食べてガッカリするのでは、と、そのようにならない様にとの配慮だったとか。

 

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 私はてっきり、あんと比較して流動性の高いフィリングであるクリームが生地から浸み出ないようにするためと思っていたのですが、どうやら違うみたいですね。(クリームパンの底面を見ますと、生地の重なりが周囲に見られますが、綴じた後はありません・・・当たり前ですけど)

 

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 ですから、当然のことながら、パンの高さは出ない仕様の成形方法となっています。

 

 ところで、この成形方法はアメリカ最古かつ現役続投のホテル、オムニ・パーカーハウスのパン職人が考案したパン(パーカーハウス)からパーカー成形とも呼ばれています。

 

 パーカー成形の解説は、丸目後休ませた玉生地で軽くガスを抜いてから、めん棒で小判形になるように伸ばしていき、均一な厚さの小判形にした後、溶かしバターを塗って二つ折りにする、というものです。

 このロールパン(?だそうです)は、二つ折りにした形が特徴的で、手でパカっと開くことができるため、具材を挟んでサンドイッチにして楽しまれているとのこと。(イメージとしましては、長崎豚角煮まんのような感じでしょうか)

 

 なお、このパーカーハウスが日本に渡ってバターロールに進化したと言われています。(へぇ~、ですね!)

 

ミルキークリームパン(ミルキー&ミルキー)

 成形方法の比較のクリームパンを同じスーパーで探していたのですが、なかなか形が違うだけのシンプルなクリームパンが見つかりませんでした。

 

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 で、結局購入しましたのが、上写真のミルキー&ミルキーです。

 

 山崎製パンのグループ会社である不二家とのコラボ商品ですね。

 

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 フィリングにミルキークリームとミルキーホイップ、トッピングにミルキーチョコチップとミルキークリーム、とまさにミルキーずくし・・・(なにの比較かだんだん分からなくなりそうです)。

 

 外観の形状で、三角か丸かだけが見られれば良かったのですが・・・。

 

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 そして、底面には中央付近に綴じた跡が見られます。

 

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 そして、特にこの商品はセルクル等を使用して生地の高さを出していますから、あえて言及するまでもありません。

 

ミニミニ工場見学

 そのような歴史のあるパーカー成形ですが、連続生産ラインのパン工場では、どのように作られているのでしょうか。

 

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 装置の一例として、レオン自動機の成形機を流れる生地を見てみることにします。

 
 小判型に成形されたパン生地の上にクリームが吐出されます。

 

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 そして、その生地がひとつずつテフロンの治具に移載されて、両サイドから生地をパタン!、これで成形が完了です。 

 

あとがき

 いつ頃でしたでしょうか、クリームパンのクリームがすごくおいしくなった時期があって、その当時はたいそう衝撃を受けた記憶があります。

 

  あえて言うならば、ソーセージでシャウエッセン、ビールでスーパードライ、食パンで超熟が登場した時と同じくらいの感動・・・あくまで個人の感想です。