黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

最上級のトースト食パン ~ 本食・本間製パン

 ホールセールベーカリーであって、その製品品質に一目置いていた企業があります。

 

 東海地区におきまして、カフェ等に提供されます業務用のパンのメーカーNo.1を誇る本間製パンです。

 

www.santa-baking.work

 

 2年ほど前にも本間製パンのレストラン食パンは紹介させて頂きましたが、今回は同社の最上級の食パン・本食を御紹介致します。

  

【 目次 】

 

本食

 名古屋駅名鉄百貨店地下1階に本間製パン・フレッシュステーションという店舗があります。

 

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 そこで販売されていますのが、トースト食パン・本食です。

 

 本間製パンが、流行りの生食パンとは違います、と言い切る最上級の食パンは1斤500円(税別)と非常に強気の価格設定になっています。

 

 少し横道に逸れますが、同社は石窯パン工房 アヴァンセというリテイルベーカリーも展開しており、商品のポジショニングも十分に検討されての設定価格と推測します。

 

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外観

 ホワイトラインはきれいに出ており、高級食パンでは珍しく、1斤に生地玉2個をU字成形で型詰めしています。

 

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 一般的に内相は細やかになり、膜の厚さも薄くなるのが利点ですが、一方でクラストが密になって歯切れが悪くなる懸念も生じますところ、その点にも十分な自信があるのでしょう。

 

 またまた、横道に逸れますが、従来のリテイルベーカリーの食パンで同様の成形方法(ただし、倍の生地重量のM字や同1.5倍のN字成形)が採用されていますものの、クラストの歯切れの課題に関しては20年前の湯種法の登場でほぼ解決できてきたと私は理解しています。(機会があれば、湯種法のメカニズムに関しても解説しようと思っています)

 

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 成形方法に関しては、製品の側面を見るとよく分かります。

 

 購入しました食パンは、2斤型を使用して半分にカットしていますが、端の生地玉と中央寄りの生地玉で表面の模様が異なっていることがお判りでしょうか。

 

 上面と底面では4本の帯が見えているところ、側面は1本の太い帯と2本の細い帯とで構成されています。

 

 つまり、U字成形で向きを交互に配して型詰めしたものです。

 

 製品の左右の形状バランスを考慮されているかと推測します。

 

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 ところで、この食パンの底にもおへそのような小孔の跡ができています。

 

 穴開きの食型を採用していますね。

 

内相

 すみません、スライス面の写真撮影を失念しておりました。(申し訳ありませんが、なんとか2枚目の写真でご容赦下さい)

 

 やはり、細やかな気泡と薄く伸びている生地膜は見事の一言です。

 

 詰みやカギ穴、スジシマといった不具合箇所も全く見られません。

 

 最初のパッと見でクラムの白さが際立っています。(その時点で、内相の高い品質が概ね推測できます)

 

食味・食感

 生のまま食べても、ソフトさはこれまで食べた食パンの中で最上位のグループに確実に入ります。

 

 そして、クラスト(耳)部もしっとり感が全面に出て、これがU字成形の食パン?と疑うほどです。

 

 原材料に、生クリームとフレッシュバターが使用されていて、乳製品と油脂のすべてがこの2品目で充てられています。

 

 食味と風味のリッチ感はここから来ているだと理解しました

 

 更には、名古屋コーチン卵と糖に和三盆糖を使用するといったこだわりです。(この価格になるのも、うなずけます)

 

 なお、トーストしても、いやトーストした方が表面のカリッと食感とクラスト+クラムのソフトさで、食べた時の食感を楽しむことができます。

 

改めて外観

 商品の端面には本食の焼印が付けられています。

 

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 そして、持ち帰り用の手提げ袋ですが、こちらも十分なリッチ感が出ていますね。

 

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サンタの豆知識

 さて、食パンを焼成する際に使用する焼型について、底に開いている小孔の効果を解説します。

 

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 上のグラフは、角形食パンを焼成した際に食型からパン生地へ流れる熱流束を測定したものです。(底の穴は開いていない食型を使用しています)

 

 青い線で示されています底面のデータを見て下さい。

 

 数値の大小は別にして、他の面と概ねラインの形状は類似した形で推移しています。

 

 このような普通に想定される熱量が流れているケースもあります。

 

 なお、これらのグラフで底面の熱量が少ないのは、私が個人的に底のクラストが薄い食パンを焼きたくてデータを取っている為です。(できたら、ご報告しますね!)

 

 続いて、こちらのデータです。

 

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 もうお分かりですよね、青い底面の熱流束値が不規則に低下しています。

 

 底に穴が開いていない食型を使用すると、イレギュラーにその部分にガスが溜まってしまい、そこが断熱層となって熱の流れを妨げてしまうことがあるのです。

 

 ここまで穴開きの食型を使用するメリットを記述してきましたが、一方でオーブンの清掃や穴の目詰まりの修復等、メンテナンスも大変だということをご理解ください。

 

ミニミニ工場見学

 本間製パンでは、成形の型詰めでU字成形しました生地を交互に配していました。(U字成形で交互に型詰めできる装置は記憶にありませんので、まず間違いなく手詰めだと思います)

 

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 ただし、調整は必要になりますが、ロール成形を行いますモルダーという装置を使えば、比較的太さが均一なロール生地を成形することができますので、同一方向での型詰めでも十分に形状の揃った食パンを焼き上げることができます。

 

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 イメージとしては、このような感じです。

 

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 私もテストの際には、U字成形で型詰めを行っています。

 

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 手作業でパン生地を伸ばしていますので、少々形が歪な上、温度測定用のセンサーとかも見えていますが、そこはご容赦下さい。