パン生地を捏ねるミキサーにもいろいろなタイプの機種があるのですが、今回は日本人に馴染みがあって、それでいて珍しいタイプのパン用ミキサーについて紹介します。
焼き立てパン屋さんへ行きますと、おそらく作業場でもっとも目にし易いのは下図のような縦型ミキサーではないでしょうか。
回転するフック(アーム)がパン生地をミキサーボウルに叩きつける時の独特なパン、パンッ、という音と共に、伸びる生地が出来上がっていきます。
ところが、今回のミキサーを使った時の音は・・・、ペッタン、ペッタン、です。
どのようなミキサーなのでしょうか。
【 目次 】
スタンピングミキサー
和菓子屋さんの製造現場であれば、このような装置を見掛けることも多々あります。
そう、餅つき機です。
パン用に製造されているミキサーは、スタンピングミキサーと呼ばれていますが、生地を捏ねる動作は餅つきと概ね同様です。
製パン製菓の展示会へ行きますと、いつも参加者の注目を集めている装置のひとつです。
そして、このスタンピングミキサーを使用してパンを作っているパン屋さんが名古屋市東区にあります、食パン工房 陽だまり(2019年2月22日オープン・・・ネコの日ですね)です。
店頭の立て看板には『杵でついた生地のパンは、非常に柔らかく日持ちします。さらに従来の撹拌型ミキサーでは不可能であった、高加水のパンを可能にしました。』と、あります。
どういったメカニズムなのでしょうか。
パン生地をミキシングする際の目的は、大きく二つあります。
ひとつは伸びる生地を作ること、そしてもうひとつが吸水の高い生地を作ることです。
生地を捏ねる際、必然的に流れを生じますが、この流れに対して垂直に掛かる力を圧力、流れに沿った方向に掛かる力を剪断応力と言います。
そして、生地に圧力を掛けることに因って、吸水が上がることは平衡状態にある物質の法則(ル・シャトリエの法則)から容易に推測されます。
つまり、上図で明らかに高い比率でパン生地へ圧力を掛けることが容易なスタンピングミキサーは、高加水の生地を作ることに適したミキサーと考えられる訳です。
食パン工房 陽だまり
実際に店舗へ出掛けてきました。
大通りに面した角地という立地です。
今にもパンの香りが漂ってきそうな素朴で親近感のあるお店の中へ入ります。
店内には食パンのメニュー表が・・・、当然、ミキサーの特徴が一番映えるであろう『超加水食パン』がお目当てです。
・・・ですが、残念ながらこの日午後に行きました時には既に超加水食パンは売り切れていて、代わりに生クリーム食パンを豆乳クリームあんぱん、メロンパンと共に購入して帰りました。
杵つき生クリーム食パン (2斤640円)
外観
全体的に焼色はしっかりと付いています。
持った感じも、しっかりした形状を保持している感覚が手に伝わってきます。
重量を量ってみますと、748g(2斤:680g以上)と私の想像より軽めでした。
確かにクラストはしっかりしているのですが、形状が凹んでいたりしていませんでしたので、てっきり生地重量を多めにして仕込んでいるかと思ったのですが・・・。
そして底面ですが、フラットな面となっていることから、食型は穴なしのものを使用しているようです。(すみません、半切りしてから写真を撮っていないことに気付きました)
内相
全多岐的に白い内相が特徴的です。
クラスト部は着色している部分でくっきりとクラム部分とのコントラストができており、断面を見た目にもしっかりしたクラストの印象が強くなっています。
クラムは、全体的な色が白いことからも推測できますように、膜は薄く、よく伸びており、気泡も細やかできれいな内相です。
食味・風味
食べてみますと、口触りの時点でクラストにはしっかりした歯応えを感じますものの、ザクザクとした食感で歯切れと口溶けはとても良好です。
デニッシュ食パンとも異なります、強いて挙げればメロンパンのビス生地もしくはスナックパンをさらに焼き込んだ感じの食感に幾分近いかと。
この製品の特徴として湯種法も使用していますことから、クラムはもっちり、しっとりした食感に仕上がっています。
けっしてソフトでふんわりとは言えないザクザクしたクラストは、180度特徴を違えたクラムとの食感の組み合わせで、私は初めての体験をしたのかもしれません。(嵌まる人は、他の食パンでは納得しなくなるかもしれませんね)
豆乳クリームあんぱん 180円(税別)
豆乳生地に豆乳クリームと低糖つぶあんが包餡されている白焼きのあんぱんです。
見た目通りのしっとりふわふわの食感です。
そして、断面を見てみますと、このあんこの量です(ちょっとビックリですね! 饅頭並みに入っています)。
もちろんパン生地は杵つきミキサーで仕込んでいます。
粒あんは、低糖でしっとりしたタイプのものを使用していて、食べ口が白焼きの生地によく合います。
最後に・・・、すみません、メロンパンの写真を撮り忘れてしまいました。
きっと、超加水食パンを買いにもう一度この店舗へは行くと思いますので、その時に忘れずリポートするようにします・・・ご容赦の程。