少し記事を掲載するタイミングがずれてしまった感もあるのですが、新型コロナウィルスの影響で強力の小麦やバター等、パン作りの材料が品不足になる一方で、牛乳が余っているとのニュースが流れていました。
要因としては、学校給食で提供していた牛乳の供給がストップしたことによるものだそうです。
だからと言って、このテーマを取り上げますのも非常に短絡的なのですが、今回は牛乳パンについてリポートしてみようと思っています。
【 目次 】
以前にねこねこ食パンについて解説しました際に、この商品も仕込む際に水は一切使用せず、牛乳と生クリームで仕上げている旨を記載しました。
牛乳や生クリームを使用する際の配合を検討する場合、吸水の換算としては、
・牛乳 ・・・ 水分:88%、 固形分:12%
・生クリーム・・・水分:53~65%、固形分:35~47%
と、概ねこのような値となります。
パンに牛乳特有の風味・食味を出すには、吸水の全量を置き換えることを勧めている文献が多いです。
牛乳パン
長野県民が愛するソウルフードとも謳われていますのが、牛乳パンです。
生地にはその名の通り牛乳が使われ、サンドされているクリームはミルククリームが使用されているようです。
牛乳パンを調べてみますと、大正11年創業の小松パン店の牛乳パンが発祥だとか。
50年以上も地元の松本市で愛されている老舗のパン屋さんだそうです。
こちらの牛乳パンは非常にクリームがたっぷりサンドされていて、かなりボリューミーです。
実は、そのようなルーツは全く知らず、私的にはこれまで名前が売れているローカルなパンといった程度の印象しか持っていませんでした。
太養パン店の牛乳パン
以前に、中央自動車道を通って愛知へ戻ってくる途中に立ち寄りました諏訪湖SAで、ふと食べたくなって何気なしに購入したのが、下写真三角カットの牛乳パンです。
ここには、太養パン店というパン屋さんが牛乳パンを出していました。
実はこのパン屋さん、上諏訪駅近くで1916年創業していて、100年以上も営業してる老舗のお店のようです。
原材料表示には、小麦粉、バタークリーム、砂糖、粉乳、たまご、マーガリン、塩、イーストとあります。
とてもシンプルで、最近はパン酵母と表示されていますケースが多い中、イーストとの表示です。
パンの特徴はなんと言ってもふわふわの生地の食感にあります。
それはパンを手で持った時点から感じられるもので、食べた時にもそのふわふわ感を再認識するものです。(今回は、ソフトといった言葉は使わず、あえてふわふわといった表現にさせて頂きました。この商品の食感は、ふわふわの方がぴったりくるので。)
パスコの牛乳パン
牛乳パンは、今や随分知名度も上がり、長野県以外でも購入することができるようになってきました。
大手製パンメーカーのパスコでは、長野県松本市の関連子会社信州シキシマの工場で牛乳パンを製造し、パスコの販売ルートを使って配送しています。
こちらの商品は、使用している牛乳にも地元の信州牛乳にこだわって製造されています。
私の自宅近くのスーパーでは、定番商品として常時棚に並んでいる状態にありますし、季節限定で和栗クリームとか、その時々にバラエティに富んだラインナップを揃えてきます。
こちらの外観形状は、三角カットされた太養パン店の牛乳パンとは異なって、長めの長方形の形にカットされています。(やはり、ホールセール(卸し)の場合は搬送の効率等を考慮されているのでしょう)
内相を見てみますと、こちらもやや大きめの気泡で空隙率が高いように見られます。
ところで、個人的に感心していますのは、比較的どこのメーカーの牛乳パンも味や食感は揃っていて、外れがないことです。
長野県から発信されました牛乳パンは、至る地方で定番製品として普通に売られていて、これは他府県でも人気になっている証拠なのでは、と判断しています。
サンタの豆知識
改めまして牛乳パンの特長は、なんといってもそのふわふわな食感でしょう。
製造工程では、成形時に型というよりは少し深さのある平天板を使って、ロール生地もしくは玉生地を並べ、天板1枚大のパンを焼き上げます。
そしてクーリングを取った後に、例えれば角餅をカットするがごとく、1個のサイズに切っていきます。
ところが、想像以上にこのカットの工程が大変で、とてもふかふかな生地故に、特にミルククリームをサンドする際の横方向のカットはなかなか難しい。
そこは、それぞれのパン屋さんがきっと工夫を凝らしているんでしょうね。
もっとも、それだけソフトな生地だからこその特長的な食感が、これまで多くの長野県民に愛され続けてきた故かと思いますので、苦労した分だけ愛着も沸くというものではないでしょうか。
シンプルなんですけど、飽きがこず、癖になりそうなパン:牛乳パンのリポートでした。