日本におけます製パンメーカーTOP3に入りますフジパンでは、最近のトレンドとなっています湯種法を採用せず、独自路線での製法で食パンを製造しています。
1993年5月、フジパンから発売されました同社の代表的商品である本仕込み食パンに今回はスポットを当て、解説していきます。
【 目次 】
本仕込み食パン
製品重量から
今回も、購入しましたのは5枚スライスです。(基本的に厚切り食パンが好きです)
製品重量は400g (1斤:340g以上)でしたので、焼減率(水分蒸発率)を0.09%(ベーキングロス)+0.02%(クーリングロス)と仮定しますと、
400g×3斤/(20/18:両端分)/(1-0.09-0.02) = 1498g(生地重量)
となり、M字成形で3玉の場合、1玉は1498g/3=499.3g、およそ500gで分割していることが推測できます。
この500gという分割重量ですが、近年のホールセールベーカリーの食パンとしては、随分、多くの生地を使用している気がします。(近々、他のホールセールベーカリーの食パンも解説する予定です)
もっとも製品ごとの重量バラツキ(製造現場の用語では、このバラツキのことを乱貫(らんかん)と言います)もありますので、正確さを求めるのであれば、もう少し数を増やして測定する必要もありますが・・・。
そうして改めて考えてみますと、この本仕込み食パンの400gでも重量感を実感できますのに、以前にご紹介しましたぱんみみのレギュラー食パン&プレミアム食パンの460gというのは、どのようなパンだと想像されますか?
けっして宣伝する意図はないのですが、ぱんみみのレギュラー食パンは時々リピートして食べたい食パンのひとつです。
外観
外観を見てみますと、手前側面に最終発酵のラインが綺麗に出ていますので、この写真の手前側が下図のM字成形の下側(★マークを付けた側)かと推測します。
そして逆側なのですが、成形時の生地の端の方はけっこう暴れたりしますので、少々発酵の状況は見え難くなっています。
製品の底面を見てみますと、おへその凹みのような跡が付いています。
食型はガス抜き用の穴開きタイプのものを使用しているようです。
穴開きの食型は、安定した下火加熱が期待できます一方で、焼成初期に離型油が出てオーブンを汚したり、穴が詰まったりと、ラインの掃除やアフターで作業者が非常に大変な思いをされることが危惧されるため、連続生産ラインでは避けられることも多いのですが、フジパンではその苦労を受けてでも安定した焼成条件を選ばれているようですね。
内相
すみません、スライス面の写真を撮ることを失念しておりました。
文章のみの説明にはなってしまいますが、スジシマ、かぎ穴、底詰みといった不具合はなかったと記憶しています。
風味・食味
発酵臭は弱めに感じ、その分小麦の風味が感じ易くなっている気がします。
もっちりとした食感は、給水の高さを物語っていますね。
製法について
発売当初は伏せられていましたが、現在はフジパンのHPの中でもはっきりと『(リテイルベーカリーで多用されています)ストレート法』を採用されていることが明記されています。
連続製パンラインでは、一般的に中種法という製法が採用されています。
原材料の一部を前もって混合・発酵させて、本捏ね時に合わせることで、機械耐性が上がり、ダメージを受け難い、よく伸びる生地にすることができる特徴を持っているからです。
生地がスムーズに伸びることで、分割や成形時に受ける生地ダメージが浅くなるため、クラムの気泡は細かく、生地膜の薄い内相のソフトな製品にはなりますが、クラストも密な構造となることから、歯応えのある食感になり易い特徴もあります。
それでは、ストレート法とはどのような製法なのでしょうか。(パンとしては、小麦の風味が増し、ミキシング時の生地吸水が上がります。)
上図の工程のように、中種の製造工程が省かれるのですが、実際にラインを組むのはかなり大変だったことが推測されます。
工程が省かれるのだから、逆に簡単じゃないの? と思われがちですが、従来の中種法であれば、数十分のフロアタイムで生地を生地ボックスに入れたまま分割機の前で寝かしておけばよかったところ、ストレート法では2~3時間の発酵工程が組まれるわけですので、温湿度がコントロールされた膨大なスペースが新たに必要になってくる訳です。
しかも、おそらく同じ生産ラインでは、まだ中種法で製造している製品もあるのでしょうからなおさらです。
それでは、どのようにして生産が可能となったのでしょうか。
私はフジパンの社員でもありませんし、生産ラインを見たこともありませんが、この生産を可能にすることができるとしたら、それは元の生産ラインで立体倉庫式の中種醗酵室を組み入れていたことが推測されます。
近年の製パンラインでは、中種ミキサー~本捏ミキサー~分割機の工程で、生地ボックスが指定された番地に自動で格納されるシステムを採用している工場が多いと思われます。
今にして思えば、この立体倉庫式の醗酵室の装置メーカーと連名で特許を出していた製パンメーカーがあったことを思い出しましたので、時間がある時にでも調べてみようと思います。
リテイルベーカリーで多用されているストレート法をあえて連続生産ラインへ組み入れてくる、フジパンのチャレンジが実を結んだ商品です。
包装紙
以前にもご紹介しました包装紙のライトシールですが、近年のシール方法の主流は全面をシールするものではなく、打点式に軽く溶着させる方式が採られています。
目的としては、確実に密閉して、そしてきれいに開封できること。
今回はきれいに開封できました。
ここでもきれいに開封するためのポイントは、シール部分の下部を引っ張ることをお忘れなく。
(出典:オシキリ)
ところで、もしかしてそれほど大変なことなの? と思われていませんか。
食パンの包装には、上図のバッガーと呼ばれます包装機が採用されているケースがほとんどなのですが、食パンを袋詰めする際、一度立体的に膨らみました包装紙を内部の空気を抜きながら平面に整えてシールすることは結構大変なんです。(パンは柔らかくて形状が安定しないことも要因のひとつですが)
(お詫び)
前回の投稿から1週間開いてしまいました。
仕事とプライベートでいろいろ重なってしまって・・・、今後も体調と相談しながらできるだけ一定のペースで投稿できればと思っています。