直焼きパンは、その名の通り、パン生地を直にオーブンの炉床に置いて焼成します。
天板焼きのパンとの焼き方は、どのように違ってきて、どのような特徴のパンに仕上がっていくのでしょうか。
先日の東京出張の際、宿泊しましたホテルの朝食を1Fのロイヤルホストで頂きました折、出てきましたオニオングラタンスープに浸されてましたハード系のパンを見て、ふと思ったことを綴っていきたいと思います。
【 目次 】
直焼きによる焼成方法
歴史を紐解いていきますと、パンの焼成方法は直焼きから始まっています。
蓄熱性の高い材料で炉床と空間を作り、炉内で可燃物を燃やして炉内温度を上げた後、発酵を取ったパン生地を投入して焼成する。
考えてみれば、トラディショナルなパンはこの原理に基づいて焼成されているはずです。
そして、近年では製パンが産業化されて生産性が求められるようになり、製品搬送の目的もあってパン生地を載せるための天板を使用するようになりました。(ちなみに説明の写真を探していましたところ、ちょうどいい感じの写真がありませんでした。計測用の温度センサーが写っている、少々見難い写真となってしまいましたが、ご容赦ください。)
加熱のメカニズム
それで、直焼きと天板焼きではパンの焼成条件にどのような違いが出てくるのでしょうか、考えてみます。
パンを直焼きする場合、パン生地は高温となっている炉床にそのまま置かれるわけですから、当然、この時点で一気に熱が生地へ流れていきます。
そして、デッキ式オーブンの炉床に使用されます石もしくは石質材は比熱が高く、熱伝導率が低いといった特性を持っていますので、パン生地が置かれていない箇所は高温をキープしており、パン生地の周囲は急速に高温の空気が纏(まと)わることになります。
一方、天板を使用した場合も炉床の熱は一気に流れていきますが、まずは接している天板に伝わり、その天板の温度が上がって、それからパン生地へ熱が伝わります。
圧倒的に焼成初期の熱の伝わりは直焼きの方が早いことが理解できます。
そして、パン生地周りの空間ですが、当然、天板の温度が上がらないと空間の温度も上がってきません。
ソフトな菓子パン類を焼成するのであれば、天板を使用した方が側面にホワイトラインもでき易く、適正な条件となるのですが、直焼きの場合とは明らかに焼成する対象のパンの品種は変わってきます。
ロイヤルホストのモーニング
過日に仕事で東京を訪れました折、予約しましたホテルの1Fがロイヤルホストになっていて、朝食はここで食べることになっていました。
メインのプレートに先立ってスープが出てきました。
オニオングラタンスープです。
そして、そのスープをかき回してみますと、中から出てきましたのは、縦切りされましたハード系のロールパンです。
スープに浸されているとはいえ、溶けたチーズが絡んでフォークで切るのも結構大変です。
このハード系のパンはスープにすぐに溶けてしまうことがなく、スプーンですくった際には十分なスープを含んでいて、それでいてスープの味を邪魔しない。
パンの用途というのは随分裾野が広くて、料理の食材としての品質についても内相、食感等に検討が求められているのでしょうね。
メインのプレートにビックリ
ドリンクバーで野菜ジュースとアイスカフェオレをグラスに注いで、テーブルで待っていますとメインのプレートが運ばれてきました。
えっ・・・、このサラダの量がハンパな量ではなくて、載せられているお皿の深さもありましたからけっこうなボリュームです。
しかも野菜には、シュリンプ、アボカド、ベーコンまで添えられていて。
まあ、今年は天候の関係で野菜の価格も高騰していますし、たくさん食べられて文句を言うところでもないのでしょうけど、それにしても朝からあまりに量が多すぎる気がして、少し引いてしまいました。
ロイヤルホストのHPから
仕事が終わって帰宅後、ロイヤルホストのHPでモーニングのメニューを調べてみたのですが、似たようなセットが掲載されていたものの、明らかに野菜の量が違います。
何度も言いますが、メニューよりも野菜の量が多すぎて文句を言っているのではなく、驚いたといった感想を述べているだけです。
この写真でが、そもそもお皿のサイズからして全く異なっています。(実際に出てきたプレートの方が、二回りほど大きなサイズのお皿です)
こちらは使用されています食材が同様で、スープが付いていないワンプレートのブランチのセットですが、やはりサラダの量の違いは歴然です。
この提供の方法は、ロイヤルホストの戦略?
あとがき
一昨日(4日)が締切りでした学会の論文投稿ですが、翌日のAM9時頃にやっと出来上がって、申込みサイトから申請しましたところ、なんとか受理して頂けました。(ありがたい限りです)
今週に入ってから、ほとんど仕事場に缶詰め状態でしたから、昨日の投稿後は一気に脱力感と疲れが押し寄せて、しばらくの間はまさに死んだように横たわっていました。
今年は、コロナ禍の関係でいつも参加していますもうひとつの学会は大会が中止となってしまいましたので、年内の研究発表はこの1件のみとなりそうです。
もっとも、こちらの学会も開催方法はオンラインとなることが通達されていますので、発表当日は自宅から不慣れなリモートで参加することになります。
研究の対象は、もちろんパンです。
実験装置である通称:木箱オーブンで3斤サイズの角形食パンを焼成して、その間の温度、熱流束、パンの重量を連続測定して、データ処理するわけです。
ちなみにパンを焼成している過程で連続的に重量を測定できる装置は、日本でもこのお手製の木箱オーブンしかないと勝手に自負しています。
内容は、10月28日以降になりませんと詳しくご説明できないのですが、簡単に解説しますと『温度を測るとパン生地から蒸発する水分量が計算できる』といったものです。
多くのパン屋さんでは、焼成工程でどれだけの水分が蒸発したかを、焼きあがったパンの重量を測定して求めていますが、温度から計算できれば、焼き方による水分蒸発の傾向を捉えることができたり、オーブンの性能が評価できたりするのでは、と期待しているところです。