装置屋さんとしては非常に耳の痛い話なのですが、日本の製パンメーカーは自動化が進んでいないとの評価を耳にするようになりました。
国内では、随分自動化された連続生産ラインを見てきましたし、海外の製パン工場も見学してきたつもりなのですが、つい最近までそれほど気にもなっていなかったところで、なぜ?
そんな疑問を抱きつつ、ミキシング工程での原材料の秤量(ひょうりょう)&投入の解説と、日本パン百名店に名を連ねますスーリープーに再度訪れてきましたので、そのリポートとを併せて綴ります。
【 目次 】
原材料の秤量
製パンの基礎は、原材料の重量を正確に量り分けるところから始まります。(ちなみに、私、一般計量士の資格も持ってます)
ところで、以前にリポートしました惣菜パンの原材料表示を改めて見てみますと・・・。
決して特異な例でもないのですが、それでも生地作りに22種類の原材料が使われているようです。(ちなみに、水は表示に含まれていません)
パンの定義では、小麦粉、パン酵母、塩、水を使えば、パンを作ることはできますが、目的や用途によって様々な原材料を使用しているのが実状です。
原材料の種類が増えれば、それだけ量り出しの手間も増えていきます。
余計なものは入れない発想は、製造サイドからも検討するべき課題であると思うのですが。(当然、消費者サイドからは十分な要望があることを理解しているつもりです)
ミキサーへの原材料の投入
自動化が進んでいる工場では、小麦粉、塩、砂糖、油脂、水あたりは自動秤量でミキサーへ投入するプログラムがラインに組まれていますが、それでもフロアタイムを取った中種や前項にありました種々の原材料までは対応しきれず、別途作業者が手作業で量り出したものを投入しています。
省人化が進まない理由の一つが、原材料の多さにあることは否めなさそうです。(生地に混ぜ物があれば、当然、いろいろなタイミングで投入の手間も発生します)
ちなみに、大型の食パンラインの本捏ねミキサーは1回のミキシングで800kg程の生地を一度に混捏する装置もありますので、けっして上図の人とミキサーの大きさの対比はオーバーな表現でもありません。
さらに最新のラインでは、ミキサーの裏から中種を自動投入して、捏ね上げ後の生地をドウボックスで受けるシステムが構築されていますが、それでも作業者は付かなくてはなりません。(このシステムに関しては、改めて解説します)
海外では
では、海外ではどのような自動化が図られているのでしょうか。
特にドイツにおける発展が目覚ましく、集中管理室でのオペレーターのみで管理するほどになっているとか。(私も、スペインの製パン工場で生産現場(包装ライン)に2人 (内一人はほぼ清掃担当)だけのほぼオートメーション化されたラインを見学したことがあります)
ちなみにドイツの方々のパンに対する愛着は絶大で、パン屋さんが近くにあると賃貸アパートの家賃も高くなる程だと聞きます。
ただ、日本におけるパン事情とは大きく異なっていて、簡単な説明が難しいのですが、先述の原材料の秤量や生地の成形も無人でできてしまっています。
答えになっていない、とお叱りを受けそうなのですが、ミキシングでは製品毎にミキシングボウルが入れ替わるシステムになっています。(これだけでは、全然分からないですよね。ただ、現状の日本の製パン工場では早々に変更することは困難なシステムです。)
現時点では、東&東南アジアの国々での製パンレベルはまだ未熟ですが、今後、このようなシステムが標準化されてきますと日本の製パン業界ももしかしますと大変な事になるかもしれません。
ある講演会では、海を渡って安価なパンが日本へ入ってくる時代を予測する方もいるくらいですから。
スーリープー
全国のパン屋さんで16位、愛知県では堂々1位にランキング(2019年)されていますスーリープーへ、またまた家族が出掛けてきてくれました。(感謝、感謝です)
※追記です。2020年のパン百名店は、①TOKYO, ②EAST, ③WEST と分けられていて、スーリープーは②EAST(東京を除く東日本)で2位にランキングされています。
今回は、ハード系のパン2種とクロワッサンの計3品です。
前回の記事を読み返してみましたが、パンの解説はほとんどなかったですね。(すみません!)
クロワッサン 210円税別
パンの両端を見れば、どれだけ丁寧にそしてきれいに生地の層を作っているかが分かります。
翌朝、トースターで温め直して、サクサクの生地の食感とバターの風味を堪能しました。
ピンクベリー 239円 税別
説明では、天然酵母を使用し、フランボワーズにクランベリー・ホワイトチョコを使用して(混ぜ込んで)いるカンパーニュとのこと。
余談ですが、個人的にフランボワーズ・クランベリーという呼び名がしっくりこず、ラズベリー・ツルコケモモと聞くと妙に理解できている自分がいます。(齢ですね~!)
自分で見に行けていませんので、使用しているオーブンは分からないのですが、直焼きしていることは確かなようです。
内相は想像より細やかです。
混ぜ込んだベリー等を包み込むには適した成形かもしれません。
ちなみに、パン・ド・カンパーニュ はフランスパンの一種で、フランス語では田舎パンを意味しますが、ちょっと田舎パンと呼ぶには可愛すぎて・・・。
トロピカル 1/2カット 380円 税別
こちらの生地も天然酵母を使用したカンパーニュで、パイン、パパイヤ、マカダミア、カボチャの種、他? が入っているそうです。
クープの入れ方は独特です。
これだけ、細やかにクープを入れますと、切り口が広がる分で生地の膨張分は収まってしまっています。(逆に、割れないよう意図しているかもです)
ピンクベリーと同様に直焼きです。
内相も気泡は細やかで、トーストしますともっちりした生地の食感とナッツ類の歯応え、そしてトロピカルフルーツの甘さが口の中に広がってきます。
他のパンも含めて、愛知県でもっとも人気のベーカーリーの評価に頷(うなず)ける商品でした。