黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

今が旬、栗シリーズ・フジパン、パスコ、神戸屋 ~ シート生地へ固形物の散布装置

 商品開発を考える際、新技術や新原材料などいろいろな切り口からのアプローチがありますが、季節の旬の食材やイベントは消費者への訴求力も大きいようです。

 

 季節が秋となって、栗を扱った商品もずいぶん目にするようになりました。

 

 今回は、ホールセールベーカリーが手掛けます栗関連のパンの紹介と、固形のフィリングをシート生地に撒く・散布するための製パン機械設備について解説していきたいと思います。

 

【 目次 】

 

散布装置

 『strew』という『まき散らす、ばらまく』といった意味の言葉から装置名が付けられている機械があります。

 

 生地シート上に粒状の レーズン、コーン、スライスアーモンドといった素材を均一に散布することができる装置です。

 

ストルワー

 

 後で紹介の『くるみ×栗デニッシュ(パスコ)』は、ベルトコンベア上をシート生地が流れてきたところにくるみの粒を均等に撒いていると思われます。

 

 その後、サイドワインダーでロール状に巻かれた生地は、一定幅でカットされて天板に並べられます。

 

焼きモンブランフジパン(98円 税別)

 栗のダイス入りケーキを包んで焼き上げているようです。

 

フジパン

 

フジパン

 

外観

 ケーキのモンブランに見立てた?帯状のマロンペーストが見られますが、おそらく成形時に掛けられていますので、流動性は低く、それなりにしっかりした物性のペーストと推測します(ただし、包装紙ではマロンペーストがパン全体に掛かっているように見えるのですが)。

 

フジパン

 

 包装紙の商品イメージでは、型もしくはセルクルを使用して高さを出しているかと思ったのですが、実際の商品は平天板を使用して生地をそのまま並べた状態で最終発酵・焼成を行っているようです。

 

フジパン

 

 マロンペーストは四方に垂れていますので、おそらくコンベア上を流れてくる生地に平口金でほぼ正方形状にペーストを絞っているのではないでしょうか。

 

フジパン

 

 生地の成形方法は、もしかしますと初めて見る方法かもしれません。

 

 底面には折ってある状態が見て取れますし、断面では底部に生地が厚くなっている状態が見て取れます。

 

フジパン

 

 栗のダイス入りケーキをシート生地で包んで、底で合わせているのでしょうか。

 

 栗のホイップクリームは、焼成・冷却後の後充填と思われます。

 

風味・食感・食味

 包装紙を開けますと、マロンペーストからの香りが飛び込んできます。

 

 しっとりした生地に栗のホイップクリームが、更にソフト感を感じさせますが、ケーキの感覚はあまり感じられませんでした。(もしかして、焼きモンブランのイメージからケーキ生地を包んだ、とか)

 

CAKE BOX リッチなマロン・パスコ(98円 税別)

 立派な厚手の包装紙で、デザインに写真も採用して高級感を出していますが、これが98円で売られていて、採算性を少々心配してしまいます。

 

パスコ

 

パスコ

 

外観

 上面はシンプルな形状で、標準的な焼色です。

 

パスコ

 

 CAKE BOXとネーミングされているだけあって、型枠等を使用して製品高さを出すように作られています。

 

パスコ

 

 側面にはフィリングが絞られた部分をカットした断面が見られますので、おそらくシート生地に連続的にマロン(甘露煮)フィリングを絞り、一定間隔で生地をカットして分割しているのではないでしょうか。

 

パスコ

 

 底面を見ますと、エッジがしっかり出ていますので、使用されたのは型ではなく、枠と推測します。

 

パスコ

 

 製品内には大きな空洞が空いていますが、そこへ栗ホイップクリーム焼成・冷却後に充填されています。

 

 生地クラムの色が黄色味を帯びていますが、マリトッツォ同様に卵由来の色彩と思われます。

 

風味・食感・食味

 生地がしっとりしていることもあると思うのですが、製品高さが出ていることで噛んだ時のホイップクリームのふんわり感がより強く感じられる気がしています。

 

くるみ×栗デニッシュ・パスコ(98円 税別)

 包装紙デザインと原材料表示から、粒状のくるみとマロンペーストがデニッシュ生地に折り込まれているようです。

 

パスコ

 

パスコ

 

外観

 デニッシュ生地ですので、ほぼ間違いなくシート生地から成形されていると思われますが、先述の連続ラインで生地のカッティング後、作業者が手作業で紙トレーに生地をひとつずつ載せていると思われます。

 

パスコ

 

 商品単価が低いホールセールの商品は、いかに効率よく作り上げていくかが課題となっています。

 

 既設のライン設備をフルに活用して、それでも作りきれないところは作業者の人の手で補っていく、付加価値と作業コストとのせめぎ合いです。

 

パスコ

 

 製品形状(厚み)からデニッシュ独特のサックリした食感を狙っていることが推測されます。

 

風味・食感・食味

 食感は見た目通り、サックリした歯切れの良さが期待を裏切りません。

 

 包装紙から栗の先入観がありますので、その感覚で食べてしまいましたが、食感からは素直にくるみの粒感が感じられます。

 

マロン&ホイップ・神戸屋(98円 税別)

 マロン味クリーム入りのデニッシュメロンパンにホイップクリームが充填されているようです。

 

神戸屋

神戸屋

 

 今回、購入してきました商品はいずれもシート生地から成形した商品のようです。

 

外観

 スクエア形状のデニッシュメロンパンですので、ビス生地もポンプで連続的に絞り出していると推測します。

 

神戸屋

 

 ちなみに、デニッシュとメロンパンの焼成方法は類似しています(初期:強熱⇒後期:弱熱)ので、デニッシュの製造ラインでメロンパンを焼成することは適応させ易いと考えます。

 

神戸屋

 

 商品の端面には、後充填でホイップクリームを注入した跡が残っていますが、もう少し高さがあった方が作業はしやすいのではないでしょうか。

 

神戸屋

 

 実際のパンの断面を見てみましても、ずいぶん狭い厚みのところにクリーム充填されていることが確認できます。

 

風味・食感・食味

 上面のビス生地からは泣きによるべた付きもなく、サックリとした食感が感じられます。

 

 ただ、製品の高さがなく、薄いパンを食べている感覚は否めませんでした。

 

あとがき

 栗シリーズで商品を集めてみましたが、よくよく見てみますと、今回(イオンで)購入のパンは価格がすべて98円(税別)でした。

 

 個人的な意見ですが、やはり栗を謳うのであれば、ペーストとかではなく、粒状の栗があって食感と共に味わうものを期待してしまいますが、価格が価格で、とも思ってしまいます。

 

 しばらくしますと、ハロウィン関連でカボチャのパンとか、棚を賑わせるのでしょうね(一部の商品では、既に出ているようですし)。