黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

クリスマスケーキ ~ スポンジケーキの焼成メカニズム

 ホーッ、ホッ、ホーッ、Merry X’mas!

 

 WHOによりますと、サンタクロースはコロナの耐性を持っている、とか(今年も、クリスマスを迎えるにあたりまして、ブロ友の皆さんが幸多き事をお祈りしています)。

 

 って、サンタクロースでもない私が口に出すのもおこがましいのですけど、今回は過去記事(ケーキ生地の焼成)のリライトに加えまして、今年食べたクリスマスケーキのご紹介を。

 

【 目次 】

 

スポンジケーキ焼成カニズム

 焼き上げてクーリングを取ったスポンジケーキは、一般的に平たい円柱形状になっています。

 

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 スポンジケーキの生地物性は流動性の高い、いわゆるバッター生地です。

 

 つまり、生地をスポンジ型に流した時点で、その高さはほぼ均等に平らになっていることは想像に難くありません。

 

 そこでイメージして頂きたいところが、仮に平らに焼き上がった生地が冷却されていく工程です。

 

スポンジ生地焼成

 

 普通に考えれば、強度のある周辺部分は収縮が軽微で、中央付近は大きく凹みます。

 

 ということは、冷却後に平らな円柱状にしようと思えば、焼成直後には適度に中央付近が膨らんでいないといけないことになります。

 

スポンジ生地焼成

 

 かといって、過度に中央部分が膨らんでいますと、生地の収縮後も上に凸の形状が残ってしまうかもしれません。

 

スポンジ生地焼成

 

 さて、このように焼成によって形状が変化する現象は、製造条件の違いで生じるものなのでしょうか。

 

 スポンジケーキ焼成する工程で、生地中に起こっている現象を解説していきます。

 

スポンジケーキ焼成時の熱と物質移動

 パンを焼成する場合には生地は(膨張はしますが)ほとんど流動しませんので、物質移動は概ね水分の蒸発と凝縮のみを考えれば説明することができます。

 

 そして流動性の高いバッター生地でも高さが出ないどら焼き・パンケーキや側面からの加熱を遮っているカステラに関してもほぼ同様で、問題はあまりありません。

 

 ところが、(流動性があって製品高さもある)スポンジケーキ焼成カニズムを検討する際には生地の流動がストレートに影響しますので、実際にケーキを焼く際にもその点を考えながらオーブンを操作する必要があります。

 

 それでは、スポンジケーキがどのように焼き上がっていくのか、順を追って解説していきましょう。

 

 一般的には金属製のケーキ型に生地を流して、固定窯であれば(上火・下火の調整が可能な)デッキタイプのオーブンで焼成します。

 

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 焼成開始直後では、底面からの伝導熱で顕著に底部の生地温度が上昇し、続いてその熱が金属製の型側面に流れて、そこに接している生地が続いて加熱されます。

 

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 加熱された部位の生地は、ミキシング時に抱き込まれた空気が膨張することで見掛けの密度が下がると共に生地の粘性が下がる為、上方向の自然対流が起こり型近傍の生地が隆起します。

 

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 型側面部近傍の生地が隆起することで、中央部と周辺部との間に生じた生地高さの差によって、周辺部の生地が中央方向へ押し出されます。

 

 先述の通り、一般的な液体は温度の上昇に伴って粘度が低下しますので、暖められた周辺部の生地は一層流れ易くなります。

 

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 その結果、製品上層部の中心方向への流れと周辺部の上方向への自然対流の影響で、中央部に比較的密度の高い生地が押し出していくことで、中央近傍の絶対的な生地量が増加します。

 

 この中央近傍へ押し出された生地量の違いで、焼成後のケーキの形状が異なってくる訳です。

 

 オーブンの温度設定は、固定式のオーブンの場合、主にスポンジケーキの焼色によって決められることが多いですが、近年の機種に組み込まれています温度プログラムやトンネル式などの連続式オーブンでは、時間経過と共に温度を調整することで理想的な焼き方を行うことができるようになります。

 

 ちなみに、焼成初期の上火の強さと製品形状との関係は、

・上火が強すぎる場合
 生地上面が早期に焼き固められて流動が抑えられますので、周辺がやや盛り上がり、王冠のような形状となって、高さ(ボリューム)が出ない。
 内相は、目が詰まり気味の傾向となる。

 

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・上火が弱すぎる場合
 焼成開始後、しばらく生地の流動が継続されますので、中央部分の高さは出るものの、特に盛り上がった形状となり、生地の廃棄ロスが多くなる。歩留まりが悪い。

 

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 スポンジケーキを焼き上げた後、クーリングを取る工程で生地は体積が収縮しますが、その際には周辺部の生地と比較して中央部の下がり方の方が大きいため、冷却(収縮)後に生地上面がフラットに近い状態になる程度の膨らみとなるよう、(特に焼成初期の)設定温度を調整します。

 

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 最後に、ケーキ類の焼成はパンのそれと比較して、安定した加熱が装置の構造にも求められます。

 

 局所的な加熱のムラは、生地表面の剥離等を引き起こす懸念も起きるからです。

 

サダハルアオキ

 今年のクリスマスケーキ第一弾は、家族が買ってきてくれたリースのようなケーキで、私は食べるだけ・・・。

 

 その時点で私は有名なお店のケーキらしいことくらいしか知らず・・・、後でサダハルアオキのケーキと知った次第です。

 

サダハルアオキ

 

 生地はシュー生地で、そこに濃厚な抹茶のパウダーがトッピングされていることに加えて、クリームも抹茶クリームと抹茶尽くしです。

 

 それと見ての通り、サンドされた盛りだくさんのイチゴが嬉しい限りです。

 

Patisserie LIVI

 続いてクリスマスケーキの第2弾は、最近近所にできましたPatisserie LIVI というケーキ屋さんのイチゴのケーキです。

 

Patisserie LIVI

 

 店内はすっかりクリスマスモードで、ショーケースの中は予約のケーキで埋め尽くされており、店員さんも大忙しで対応に当たられていました。

 

Patisserie LIVI

 

 オーソドックスに、生クリームとイチゴのケーキです。

 

Patisserie LIVI

 

  生クリームは甘過ぎず、日頃からイチゴのショートケーキ派の私にとって、至れり尽くせりです。

 

 

山崎製パン

 そしてクリスマスケーキの第3弾は、山崎製パン・イチゴサンドのケーキ5号です。

 

山崎製パン

 

 予約はしていなかったのですが、イトーヨーカドーのFUJIYA(写真の右上に看板が見えます)の隣に臨時の山崎製パンのケーキ売り場が設置されていて、その場で購入できました。

 

 FUJIYAにはいい迷惑のような気もしましたけど、まあグループ会社ですし。

 

山崎製パン

 

 ショーケースのすぐ上段には、(おそらくピーチやパイナップルがサンドされた)生クリームケーキ(6号)が並んでいますが、イチゴサンドの5号と同じ価格です。

 

山崎製パン

 

 従来、大手メーカーが作るクリスマスケーキはピーチやイチゴプレザーブ等のサンドが一般的だったのですが、今回は冷凍不可のイチゴがサンドされているケーキがラインナップされていました。

 

 つまり、このスポンジ生地は冷凍されておらず、スクラッチで製造されていることが推測されます。

 

 山崎製パン、がんばっていますね。

 

 現在、品質を損なわずにイチゴを冷凍・解凍する技術は確立されていません(非常に難しい課題で、構造が破壊されてイチゴのシャキシャキ感が消失されてしまいます)。

 

 製パン製菓メーカーに限らず、いつの日かイチゴの冷凍技術の開発に期待したいところです。

 

 ところで最後に、この数日でずいぶんな糖量を摂取している気がするのは気のせいでしょうか。

 

あとがき

anopanのクリスマス

 さて、クリスマスのムードに浸ることができますのは、ケーキ屋さんだけではありません。

 

anopan

 

 我が家がリピートしています、焼き立てパンのanopanでもパンのツリーが飾られて、お出迎えしてくれます。

 

anopan

 

 そしてピスタチオのパンも、この日はクリスマスカラーで装飾されてお目見えしていました。

 

anopan

 

 クロワッサン生地の中には棒チョコが織り込まれていて、食感と食味のアクセントになっています。

 

 anopan、お正月も営業されるようで、予約制のパンは既に家族がチェック済みです・・・おそらく購入予定。