夏の季節は一般的にパンの売り上げが減少する時期で、この対策に多くの製パン企業は対策を練っています。
製パン各社が夏場対策として打ち出している方向性として、最も知られています商品は以前にも紹介しました『北海道チーズ蒸しケーキ』ではないでしょうか。
ところで、従来はタブーとされてきました冷蔵温度帯での商品も八天堂のクリームパンを転機に、各社で動きも高まってきているようです。(下の記事、情報が古く、内容も拙くてすみません。適宜、再掲載するようにします。)
今回は、山崎製パンから発売されていました冷蔵温度帯の商品2品種と、前回の記事で詳細を記載できていませんでしたメゾン ランドゥメンヌのクロワッサンについて、紹介していきます。
加えまして、今月20日(火)に開催のパンシンポジウム2022についても、お知らせを。
【 目次 】
パンシンポジウム2022
『えっ、今年はもう3月にパンシンポジウムは開催されたのでは?』と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、これは昨年度のパンシンポジウム2021がコロナ禍の影響で半年ずれて今年の3月に開催されましたもので、本年度のシンポジウムは元のスケジュールに戻して9月開催となりました。
前回のシンポジウムから間隔が半年と短いのですが、今回の会場は岐阜県の『みんなのもり ぎふメディアコスモス』で対面式で行う一方、並行してオンラインでの参加もできるようになっています。
また、今回はシンポジウムと同時開催で、会場横では地元の焼き立てパン屋さんによります『パンのミニマルシェ』が開催され、学びと同時に焼き立てのパンも味わうことができるプログラムとなっています。
ところで手前味噌ですが、私も本年度からこのシンポジウムの運営委員に加わることになりまして、3月に引き続き、今回も一般講演で少々パンのお話をする予定になっています。
基本的には研究の課題テーマ主体なのですが、一般の方々も参加されるシンポジウムですので、見て聞いてそれなりに楽しんでもらえる内容にしたいと硬い頭を振り絞っているところです。
今回は、この写真の動きを動画でご覧頂ければ、と現在動作を確認している状況です(パンを焼く時に起こっている現象について解説する予定です)。
前回同様に、参加者の制限はありませんし、参加も無料ですので、ご興味のある方はぜひ!(ただ、オンラインでは当然ミニマルシェのパンを購入することが叶いませんので、ご容赦を。)
冷蔵温度帯のパン&菓子
先日、スーパーの冷蔵コーナーに山崎製パンの商品が並んでいました。
生コッペと北海道チーズ蒸しケーキのとろけるプリンです。
一般的に、冷蔵の温度帯はデンプンの老化が最も進み易い温度帯で、パン業界では長年タブーとされてきましたが、ここに来てパラダイムシフトが進んできていることを実感します。(山崎製パンの商品開発力には、驚かされるばかりです。)
生コッペ(Milky ホイップクリーム)
要冷蔵の商品らしく、パッケージは寒色でデザインされています。
不二家ミルキーの練乳入りホイップがサンドされていることから、ペコちゃんのイラストも光っています。
そして、原材料表示に小麦粉の前に練乳クリームが記載されていることから、たっぷりのホイップがサンドされていることが期待できます。
もうここまで来ますと、すっかりスイーツのカテゴリーですね。(そのように考えますと、98円はとても魅力的です。)
話はズレますけど、発酵菓子ということでは最近よくカヌレの話題を耳にします(トレンドになっているのでしょうか)。
パンは白焼きのロールパンです。
昨年、流行りましたマリトッツォほどではないですが、それでもホイップクリームがしっかりとサンドされています。
白焼きのロールパンで気を遣いますのは、焼成での下火のかけ方です。
生地温度を上げてしまいますと焼色が過度に付いてしまいますし、生地温度がしっかりと上がっていませんと火通り不足からの食感不良や外観形状の不具合が出てきてしまいます。
天板は、プレス天板を使用しているようです。
生地の内相は、きれいに膜が延びて細やかな気泡が形成されています。
底の部分に詰んだ後も見られず、良好です。
北海道チーズ蒸しケーキのとろけるプリン
北海道チーズ蒸しケーキといえば、夏に冷やして食べる洋菓子の定番ですが、その冷蔵バージョンの商品が出ました。
『スプーンで食べてね』のキャッチが気になるところです。(通常の北海道チーズ蒸しケーキとなにか決定的に違っているところがあるのでしょう)
上から覗いた外観は、通常の北海道チーズ蒸しケーキとあまり違いは見られません。
生地が流されているカップは透明の樹脂製で、その厚みが結構あります。(手で持っても、容器のようにしっかり支えることができる程。)
カットして断面を見てみますと、スプーンで食べて、と記載されている意味が理解できます。
下の層はとろけるプリンになっていて、冷たいトロトロのプリンがふわふわのチーズ蒸しケーキと2層を形成しています。
製造する時は、どのようにしているのでしょうか。
生地の空隙率が低いチーズ蒸しケーキが上にあることで、加熱されて膨張する工程で、流動性の高い下のプリンの層を下押ししている状況が見て取れます。
メゾン ランドゥメンヌのクロワッサン
前回の記事の続きです。
アトレ恵比寿の本館3階にオープンした店舗には、食べログのパン百名店の楯が光っています。
クロワッサン フランセ(540円 税込)
形状としては、折込み生地を巻いた状態で、最終発酵・焼成を行っており、さすがに、層の作り方は絶妙です。
断面は、整った内相とフランス産AOC発酵バター由来?の少々黄色味が掛かった生地が印象的です。
食べてみればサクサクのクラストと深いバター風味のインパクトがあって、とてもおいしく頂きました。
クロワッサン ジャポネ(292円 税込)
クロワッサン ジャポネには国産の発酵バターが使用されています。
成形方法としては、生地を巻いた後に両端を合わせています。
やはりきれいな層や内相はクロワッサン フランセと同様ですが、クラムの色が比較的薄い感じでしょうか。
どちらのクロワッサンもサイズとしては少々大きめで、どちらもおいしく頂きました。(国産の発酵バターとフランス産AOC発酵バターで、作業工程での留意点が異なってくるのか、といったところも気になります。)
あとがき
久し振りの投稿となりました。
パンシンポジウム2022の準備もそうですが、明日(9月5日)から岡山で開催されます日本食品工学会 第23回年次大会(最近では珍しく対面式)や、先週にリモートで開催されました日本食品科学工学会第69回大会での研究発表等、秋の学会シーズンにバタバタしています・・・という言い訳でした。