黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

モバックショウ2019 3日目(私的には最終日)

国際化の波

 この展示会(細かいところですが、日本語表記の正式名称は”モバックショウ”です。”モバックショー”ではありません事、ご了解ください)には3日間参加しましたが、それでも毎日が目まぐるしく過ぎていく感覚です。

 とにかく、3日目で集められるだけの情報を収集しなければ、という思いです。

 とはいえ、まずはパン技術研究所の井上所長に挨拶をしておきませんと。

 井上所長は、今回、ベーカリージャパンカップの審査委員長を務められていますので、その会場へ足を運びます。

 会場には、2日目までに作られました、食パン、菓子パンの入賞作品が展示されています。

 さすがに、どの作品も完成度が高い!

 世界の大会でも、日本が常にトップを狙うことができるポジションにあることもうなずけます。

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 ところで、今回のモバックショウですが、かなりの割合で中国から参加している人が多いことを感じました。

 けっして中国の方を煙たがっている訳ではないのですが、一部の方々に禁止されている写真撮影等の行為をあからさまに行っている状況を見ていますと、中国で氾濫していると聞きます日本製品のコピーに思いが結び付いてしまい、少しテンションが下がってしまいます。

 技術系の人間としては、苦労を重ねて培ってきた技術への思い入れはやはり強いので、その努力を踏みにじるような行為には、なんとも沈んだ気持ちにさせられてしまいます。

中井機械工業

 あっ、ロボットが餅つきをしてる!

 中井機械工業のブースの端の方で、かわいらしいサイズのロボットが餅つきをしていました。

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 だから何? と言われてしまいそうですが、同社では同じ原理のパン用ミキサーを開発しています。

 餅つき機で作ったパン生地には、どのような特徴があるのでしょうか。

 パン生地を評価するポイントとしては、伸展性と吸水性が挙げられます。

 パン学校の授業でも解説しているのですが、パン生地の吸水性に与えるファクターのひとつに圧力が挙げられます。

 これは、他の混合・混捏装置を見てみても、ほぼ間違いのないところです。

 今回の餅つき機:スパンピングミキサーは、非常に広い面積で生地に圧力を加えますので、同ミキサーが吸水性に関します特長を有していることは、理に適っていると考えています。

パシフィック洋行

 パシフィック洋行のブースでは、工揮の製品が展示されていました。

 下の写真は、右からデバイダー⇒ラウンダーです。

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 ただし、今回注目しましたのはラウンダー出口に取り付けられていました回転型の手粉付け装置です。

 丸められたパン生地は、この筒の中を通ってくる間に表面に手粉を付けて出てきます。

 以前の記事のラウンダー出口か、中間発酵の前のところで解説したかもしれませんが、丸めた生地の全面に手粉を付けることは、一見地味なのですが、非常に重要で、かつ思っている以上に装置で行うことが難しい処理です。

 手作業では何てことはない作業が、機械化する段階でなかなか達成できないことが度々ありますが、それを解決した一例です。

 

モバックショウ2019 2日目

第4回ベーカリー・ジャパンカップとパンの世界大会大集合

 展示会場の東西両端に位置するブースでは、パンのコンテスト関連のイベントが開催されています。

 西側のブースで開催されていますのは、第4回ベーカリー・ジャパンカップ(全日本製パン技術選手権大会)で、日本のパン職人の1番を決める国内唯一のベーカリーコンテストです。

 この日は、菓子パン・食事パン部門の決勝進出者4名(8名中)による競技が行われました(なお、残り4名の競技は翌22日(金)に実施予定)。

 また、東側のブースでは『パンの世界大会大集合』と銘打って、クープ・デュ・モンド日本代表選手3名によりますデモンストレーションやセミナーが行われています。

 このブースでは、代表選手が作ったパンの入ったエコバックが、一つ1000円で販売されており、収益金はパンの世界大会出場の経費に充てられるのだそうです。

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理研ビタミン

 さて、展示会場での気になりました情報をいくつか、ご紹介。

 理研ビタミンは多くのパンの原材料を手掛けていますが、今回は連続製パンラインの視点からも商品の提案をしています。

 多くの製パン工場では、機械耐性といった言葉をよく耳にします。

 パン生地を取り扱う際に、設計上、どうしても過剰な負荷を生地に与えてしまうためです。

 例えば、パン生地分割時の圧力とか、ロール成形時の転圧の強さだったりとか、人の手であれば力の加減が可能な工程でのベタツキを減らす油脂や乳化剤がそうです。

 おいしいパンを安定して消費者へ届けるための手助けをしてくれています。

マスダック

 菓子製造装置を手掛けるマスダックは、以前のがっちりマンデー森永卓郎さんがお奨めしていた企業のひとつです。

 たしか、その時にはどら焼きの製造装置で90%以上(100%に近かったような…)のシェアを誇っていると聞いた記憶があります。

 そのどら焼きの装置(というよりは製造ライン)は、通路に面した一番目立つところに展示されていて、多くの来場者が直接どら焼きができていく様子を見学していました。(まさに圧巻です!)

 ところで、会場内では基本的に装置等の写真撮影は禁止となっていますので、鮮明な画像をここでお見せすることができません。

 下手に写真を撮って怒られますのもどうかと思いますので、そこはご容赦の程。

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 そして、ブースの奥側にはシュークリームのシュー皮を焼き上げて、クリームを充填する装置(というよりも、こちらも製造ライン!)が稼働しています。

 オーブンの側面はガラス張りになっていて、連続的にシュー皮が膨張して焼き上がっていく様子が見られます。

 先述のどら焼きやこの作り立てのシュークリームは来場者への試食やお土産用として、振舞われていました。(これは、うれしい!)

日本パン技術研究所

 この展示会では、私が非常勤講師を務めます日本パン技術研究所もブースを出して出展しています。

 パン学校や書籍の案内等、伊賀先生、原田先生、西島さんをはじめ、スタッフの方が来場者に積極的な対応を見せられていました。

 なお、井上所長はベーカリー・ジャパンカップの審査委員長を任されているとのことで、ブースの方でお見掛けすることはあまりないようです。

モバックショウ2019 1日目

いざ幕張メッセ

 昨日、第26回国際製パン製菓関連産業展:モバックショウ2019が幕張メッセで開催されました。

 朝6時に自宅を出て、会場へ向かいます。

 会場に到着しましたのは、開場時間:AM10時を十数分過ぎた頃です。

 おそらく、開場の時間にはオープニングセレモニー等があって、待たされる時間もあるでしょうから、といった理由からなのですが、思惑通り、入場は非常にスムーズに済ませることができました。

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 今回の展示会参加の目的は、

1.来週に控えています海外出張の打ち合わせ

2.技術指導をしています企業展示のサポート(2日目)

3.連載を担当しています日本パン技術研究所の次回企画のための情報収集

4.日本熱物性学会のシンポジウムへお茶菓子を提供頂きました企業へのお礼挨拶

といったものです。

 時間は、PM17時までの7時間足らずですので、どれだけ効率良く回れるかといったところがポイントです。

 まずは、事前にアポイントを取っています企業のブースへ。

 海外出張の件での打ち合わせなのですが、とにかく初めていく国ですので、技術指導のプレゼン資料のこと以上に、

  空港を降りてからの乗り換え移動はどうするのかとか、

  現金はどの程度替えていけばいいかとか、

  1日開けてある休日はどう過ごすかとか、

  携帯電話の取り扱いや家族とのLINE通信の方法等々、

ほぼ、身の回りの相談会のようになってしまいました。

 次に向かいましたのは、技術顧問契約を結んでいます企業のブースで、ここで重い荷物をちゃっかり預かってもらい、いざ会場回りです。

 今回、これまでの視察と異なりますのは、機械装置メーカー主体で回っていたところから、原材料メーカーへも足を運ぶことにしている点です。

 実際のところ、会場の企業ブースを見てみますと、数的に半数は原材料メーカーのようですので、ざっと労力もこれまでの倍は掛かるだろうことを覚悟しました。

 ところが、これまでになかなか足を運ばなかった企業ブースへ行ってみると、やはり新しい発見が多く、そのいくつかを紹介したいと思います。

日仏商事

 日仏商事は、フランス製のオーブンや成形設備も取り扱います一方で、サフドライイーストといった(主に)フランスの原材料も輸入しています。

 このドライイーストですが、私の知識ではリーンな無糖生地用のパン酵母と思っていましたところ、4~5年前から加糖生地用の商品も開発されているとのこと。

 早々に私の知識は、古くなっていることを痛感します。

鳥越製粉

 おもしろかったのは、鳥越製粉(日本パン技術研究所の原田先生が以前に在籍されていた企業だそうです)が展示していましたシトラス・ファイ シリーズで、柑橘系の表皮の裏側の白い部分から取り出した食物繊維です。

 天然素材ですし、これまではほぼ廃棄されていたであろう皮の白い部分を有効活用しているところに目が惹かれました。

 パンに使用することでの効果としては、保水性が高まることでの食感:口溶けの向上等が謳われていました。

 この日最後の予定のブースに着いたタイミングで定刻を示す『蛍の光』が会場に流れます。

 バタバタしていて、初日が終了です(初日から疲れました)。

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 書き足りない、未紹介の企業ブースの紹介は明日以降に改めて…。

パンの冷却 装置のトレンド

クーリングコンベアとブレッドクーラー

 焼き上がったパンは、焼成後加工、包装を行うために冷却しなければなりません。

 リテイルベーカリーであれば、オーブン周辺のフリーの空間にラックを並べてパンを冷却することが一般的ですが、連続生産ラインを持つ工場ではどのような設備で対応してクーリングしているのでしょうか。

 このパンを冷却する設備に関しては、歴史的な時代背景が装置の設計に大きく関与しているところを多分に感じます。

 私が大学を卒業して就職しました35年前は、いずれの工場でも後工程でスライス等が必要な食パンのような製品には強制冷却装置を備えたブレッドクーラーが設置されていた生産ラインもあったと思いますものの、焼き上がってからほとんど手を加えずに包装するような製品が主要のラインではクーリングコンベアが主流だったと思います。

 基本的にコンベアは搬送装置であり、焼き上がったパンをオーブン出口から包装室まで運びます。

 この運んでいる時間内に既定の温度までパンの温度が下がるようにレイアウトを設計したものがクーリングコンベアです。

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 であれば、広い工場内をどのような経路でパンを包装室まで搬送しようとするでしょうか。

 工場スペースの有効活用を考えれば、それは必然的に天井付近のフリーなデッドスペースを活用することを思いつきます。

 これは日本国内に留まらず、海外の工場でも同様の傾向が見られます。

 ですから、以前のパン工場では焼き上がったパンがオーブン近くを周回している状況ですので、工場内は非常に温度が高く、作業環境としては厳しいものとなっていました。

 ところが、近年では前述のブレッドクーラーがいずれの製品に対しても導入されるようになりました。

 なぜでしょうか。

 それは、パンの期限表示が賞味期限から消費期限に変わって、消費者の日持ちに関する意識と要望が高まり見せてきたことがひとつの要因として考えられます。

 焼き上がったパンは、それ以降の工程でカビ等で汚染されますとその対応を図るのは至って困難な状況になります。

 その為、焼成から後の工程は衛生環境に格段の注意を払い、パンを冷却する空気が汚染されないように生産ラインのレイアウトを組んでいる企業も増えてきていると思います。

 余談ですが、ブレッドクーラーが設置されるようになって、製パン工場内の作業環境も随分良くなってきていることは想像に難くありません。

エピソード

 とある講演会で聞いたエピソードですが、ある男性が講演者に『**製パンのパンはなにか悪いものでも入れているに違いないから、日にちが経ってもカビが生えてこないんだ。それと比べて家で焼いたパンには何も悪いものは入れていないので、数日でカビが生えてくる。』と言ってきた際に、『それは悪いものが入っているとかではなく、あなたの家にたくさんのカビ菌が浮遊しているからなんですよ』と、その講演者の方は答えられたそうです。

 その男性は随分と憤慨されていたそうですが、将来、商品のレベルアップを期待するのであれば、正しい評価の上で、消費者の方に目を向けた製パンメーカーの企業努力も認めてあげないと、本来進んでいくべき技術開発にブレーキが掛かってしまいます。

 この技術の進歩は、いずれ私たちに恩恵をもたらしてくれるのですから。

米粉パンについて考えてみる

どうして米粉パンを作るのか

 最近では、ある通販サイトのTVコマーシャルでも米粉で作ったパンが題材に使われていますが、そもそも、なぜわざわざ作り難い米粉でパンを作る必要があるのでしょうか。

 シンプルに言えば『そこにニーズがあるから』なのですが、それであれば、そのニーズの内容とはいったいどのようなものなのでしょう。

 すぐ頭に浮かぶのは、

1.(先述のTVコマーシャルでも謳われています)小麦アレルギーの人達においしいパンを食べてもらう。

2.日本の食糧政策から、米の消費量を上げる。

3.キャッチコピーとして、米粉使用に訴求力がある(とのベーカリーの判断)。

といったことではないでしょうか。

 ところで、山形大学を始め、日本でも多くの研究機関で米粉を使ったパンの研究開発に着手されていますが、そもそも生地の骨格の役割を果たすグルテンのような物質を含まない米粉では膨らませることはできても、その形状を保持することは非常に困難です(ちなみに、生地に粘性を持たせる技術は確立されています)。

 というよりも、現時点で小麦粉レベルの膨潤させたパンを作ることは、まだまだこれからの課題です。

 と、なりますと、まず1.の目的は現在ではメインではなさそうです。

 それでは、市場に出回っている米粉使用の商品をチェックしながら、現状を考えていきましょう。

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 敷島製パンの『ゆめちから小麦と米粉のロール』は、白焼きのロールパンでソフトな食感が特徴的な商品です。

 包装紙に『ゆめちから小麦と…』と記載されていますので、使用しているのが米粉だけではないことがダイレクトに伝わってくるのですが、裏面の原材料表示を見てみますと、米粉に次いで小麦粉となっていますので、半分以上は米粉を使用していることが分かります。

 また、使用しています小麦粉も超強力粉のゆめちからですので、国産の米と小麦を使用しているという点では、国産原材料にこだわっている消費者の方々には訴求力があると考えます。

 次は、フジパンが製造しています『お米ぱん』です。

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 包装紙には、小麦粉を100%米粉に替えた旨の表示がされていますが、同時に小麦由来のタンパクを使用していること、そして手粉に小麦粉を使用していることが併記されています。

 一見、小麦アレルギーの人でも食べられる…!、と思って、商品を手に取り、よく読んでみると…、といったシチュエーションが目に浮かびますのは、私だけでしょうか。

米粉パンを作る理由

 日本人には、潜在的に米に対する愛着心があるのだと思います。

 大手製パンメーカーも含めて、この難題な米粉パンへの弛まぬチャレンジが、もしかしましたら将来の画期的な製品となって市場を賑わせるかもしれません。

 まだ見ぬ米粉パンの可能性が、それを作る理由なのでは、と考えます次第です。