黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

冷蔵中種法と製パン機械設備 ~ ドウボックス

 

中種法、湯種法、自家培養酵母、等々

 ホールセールの製パンメーカーが手掛ける製品開発の数量には、本当に驚かせられます。

 開発のヒントとするところも、原材料、海外、リテイルベーカリー等と多岐に渡り、この先どこまで手掛けていくのか、と興味は尽きません。

 そのような中、ふと低温長時間発酵を謳っている製品がちらほらとみられるようになってきていることから、中種法でも冷蔵中種法に関します製パン機械設備について、少しまとめてみることにしました。

 まず、冷蔵中種法ですが、常温発酵(25℃)でのエタノールエステルに加えて、低温発酵(6℃)によりますアセトン、アセトアルデヒドといったフレーバー、高級アルコール類の有効成分を生成させる製法です。

 また、冷蔵中種は本捏時に使用できる時間のallowanceが長く、一晩保存の後、翌日の朝から24時間は使用可能との記載もあります。

 製パン機械設備ですが、ここではドウボックスを取り上げてみることにします。

 ここに、形の異なる2種類のドウボックスがあったとします。

 中種の種類によって、考慮すべき点はあるのでしょうか。

f:id:santa-baking:20190818132500j:plain

f:id:santa-baking:20190818132542j:plain

 例えば、通常の中種法でしたら、生地内部の発酵状態はどのようになっているか、イメージしてみましょう。

 仮に、捏上温度が24℃、第一発酵室の設定が温度:27℃、湿度:75%だったとします。

 生地の内部では、パン酵母の活性によって発酵が進み、それに伴って発熱が生じます。

 1時間に1℃の温度上昇が生じるとして、2~4時間後の生地内部での最終温度のムラはあまり生じないことが推測されます。

 つまり、生地内部に温度分布は概ね均一の状態で推移していくことになります。

 それであれば、ドウボックスの形状は、周囲の温度の影響を受ける必要もありませんので、材質も含めて大きな制約はないことが分かります。

 極端な話、十分に保温・保湿ができていれば、問題は無いと考えられます。

 それでは、冷蔵中種の場合はどうでしょう。

 低温発酵による独特の風味を持たせるために、生地温度としては6℃以下、生地を冷蔵する庫内温度としては4℃以下が求められています。

 捏ね上げ温度が24℃場合、実に20℃以上の温度変化を伴うことになります。

 もちろん、生地内部が均等に冷却されることはありませんので、少なからず場所毎の発酵状態に差が生じます。

f:id:santa-baking:20190818132329j:plain

 ということは、最適な発酵状態を中種に与えるために種全体の温度はできるだけ均一に推移させる必要が出てきます。

 そうなりますと、中種の形状は薄板状にして全体への熱移動を容易にさせることが有効であろうことが予測できます。

 更に、中種の発酵状態は常温の発酵の効果も含めたものですので、必要に合わせて予備発酵を行うことになる訳です。

 

f:id:santa-baking:20190818132403j:plain

 

 よく、試作室で良好な結果が出ていたのにライン製造で思った結果が出ない、といった話を耳にします。

 製造条件のスケールアップに伴って、本来の製造条件がクリアできていないケースがほとんどではないでしょうか。

 スケールアップした製造環境で、最適な条件をパン生地に与えるためには現場で変更すべき事柄は必ず出てきます。

 それは、ドウボックスの仕様であったり、予備発酵の条件であったり、と。

 実際の生地温度を測定して、確認してみて下さい。

街のパン屋さん ~ de tout Painduce(パンデュース 角形食パン)

パンデュース 駅マルシェ新大阪店

 出張や行楽の人達で溢れかえるJR新大阪駅に、パンデュースのお店があります。

 やはり原材料にはこだわっていて、生地には国産の小麦粉・全粒粉・ライ麦粉を使用し、付けられている野菜は、 農家の方々からの直送のようです。

 さて、そのパンデュースのパンですが、家族が大阪へ遊びに行ってきたついでに、角形食パン(300円 税込)を買ってきてもらいました。

 こうして考えてみますと、セブンイレブンの金の食パンが同じ価格帯ということに差別化の何たるかを教えられたような気がしています。

 再度記載しますが、腰折れしても製品の特長で問題ないと言い切って、上市するあたりは今までの常識を根底から覆すに等しい商品だと改めて思い知らされた商品です。

www.santa-baking.work

 ところで、今回の角形食パンですが、こちらはこちらで十分に差別化が図られている特徴を有しています。

 昔、『最近は、甘口の酒が多いとお嘆きの貴兄に、辛口の…』といったTVコマーシャルがありました。

 当時は、まだまったくお酒などは飲める年齢でもなかったと思いますので、随分年月が経ってしまっているキャッチなのですが、同年代の方ならもしかしますと、記憶の片隅に残っているかもしれません。

f:id:santa-baking:20190807182345j:plain

 近頃、薄い焼色のパンが多いとお嘆きの方がいるかどうかは別にして、現在のトレンドとしては、焼色は薄く、クラストも薄くといったパンが非常に目立つ傾向にあります。

 そんな中、頑固なまでにしっかりと火を通しました、と主張しているのが、このパンデュースの角形食パンでした。

 確かにおいしさというものは個人の嗜好性によるものですから、最大公約数的に支持される製品はあっても、基本的にすべてのお客様に支持される商品は、まず考えられないと思った方がいいでしょう。

 となれば、他の商品とは一線を画す、この食パンはニッチな固定客が付いていても、まったく不思議ではありません。

 そして、更にこの食パンの特徴なのですが、改めて前述の『最近は、甘口の食パンが多いとお嘆きの貴兄に、辛口の…』と続けたくなるほどの食味となっています。

 それは、甘みを感じないリーンな食味ではなく、意識的に付けた塩味が感じられるものとなっている点です。

 最近は、ビールのお供にパンを付けることがトレンドとして紹介されていたことを思い出しました。

 確かにビールと一緒に食べるのであれば、甘口よりは辛口で…、となりますね。

 食のシーンを考えて、パンもいろいろと進化を遂げている気にさせてくれた一品です。

まだまだ食パンの焼き方を研究しています

新しいものを求めて

 興味の尽きることがなく、時にはパンを焼きながら新しい発見がないものか探りながらの日々です。

 それにしても、使い慣れたいつもの作業環境はいいものです。

 仕事量のウェイトとしては、技術指導ですとか、講義・講演が高いのですが、そうは言っても技術の世界も日進月歩で進んでいますから、自分だけが立ち位置を変えない、という訳にはいきません。

 以前にもご紹介しました私の実験装置(木製の食パン焼成機)ですが、時間があればパンの焼成データを取るように心掛けています。

 この多くの人には見慣れないこのパン焼き機も含めまして、手成形の作業環境も慣れていれば結構快適です。

 もちろん、より良くしたいという気持ちは当然持っていますので、今後変化していくことは十分考えられますが…。

f:id:santa-baking:20190805064746j:plain

 今回は時期的に、そろそろ学会の研究発表の準備もありますので、いろいろとテスト条件を変えて角形食パンを焼いています。

jstp-symp.org

 成形は150gの生地玉を8個U字成形して型詰めし、霧吹きをしてからラップを掛けます。

 この装置は発酵機も兼用ですので、ホイロの場合は型温度を38℃に制御すればOKです。

 食型の中に温度センサーが見えていたりしていますが、今の研究ではこのパン生地中心部の温度がとても重要です。

 従来の研究ではパンの火通りの指標程度で見られていました生地中心部の温度ですが、パンの焼成時間を定量的に判断できることができることに加えて、…。(あとは、追って公表します) 

f:id:santa-baking:20190805064823j:plain

 パンを焼成している最中も、周囲は特に暑くなるわけでもなく、普段通りと言いますか…。

f:id:santa-baking:20190805064855j:plain

 ちなみに、パンを焼成しているときの木製オーブンの表面は手で触っても温かい程度の感触です。

f:id:santa-baking:20190805064925j:plain

 もっとも、パンを取り出すときにはミトンや手袋を使用しますが、そこは通常のオーブンから取り出すときと同様です。

 今日も、一風変わった特徴的な(?変な)パンが焼き上がりました。

 データを取り終えましたサンプルは自宅に持ち帰って、しっかりと官能評価です。

 なかなか家族の反応は良好ですので、いつかはパン屋さん?などという妄想までも出てきたりしています。

 

講演のお知らせ

 ところで、9月3日(火)に岐阜大学主催のパンシンポジウム2019がJR岐阜駅前のじゅうろくプラザ大会議室で開催されます。(参加費無料)

gifubread.info

 今年は、私も講演予定で『冷凍生地製パン法に関するあれこれ』と題して、お話をさせて頂きます。

 ご興味があれば、是非、ご参加ください。

中種法と製パン機械設備 ~ モルダー

成形工程における機械耐性とは

 パン生地が受けるダメージを製造現場で最もよく知ることができるのが、この成形工程ではないでしょうか。

 以前に圧延+ロール成形でパン生地に過度な負荷を掛けない装置の構造として、大玉生地用に使用されますクロスモルダーを解説しました。
www.santa-baking.work

 これは、ベンチタイムで休ませたパン生地を圧延ローラーで延展した後にロール成形を行う際、伸び代のある方向で生地を伸ばしていこうといった考え方によるものです。

 さて、機械耐性の低いパン生地をモルダーに掛けるとどのような現象が出てくるのでしょうか。

 容易に視認できるのが、成形後の生地表面の破断です。

 実際に、もうこれ以上伸びきれない部分の生地が画一的に機械で延ばされると生地表面は破れたように捲れ上がってきます。

 中種法によって、成形装置の段階でパン生地の機械耐性が向上することは、生地の伸長性を意味することになると考えられます。

 私としては正直なところ、この内容に関しては文献の内容からの推測ですので、一度、もう少し掘り下げて検証していきたいと思っているところです。

 一般的に圧延ローラーでのガス抜きは、最終製品の内相に大きく影響してきますので、できるだけ狭いクリアランスに生地を通すことでサイズの大きな気泡を排除し、細やかな内相を得ることができるのですが、それもあくまで生地が伸長する範囲内でのことです。

 それでは、別の視点から手作業並みにパン生地にストレスが掛からない加工方法とは、どのようなことが考えられるでしょうか。

 ひとつには、徐々に圧延していってガス抜きをする方法で、これは既に単段式から多段式のモルダーが開発されています。

 もっとも、圧延ローラーの径が大きい場合、ゆっくりとガス抜きをするが故に、手粉が不十分ですと、圧延時に生地表面がべとついてローラーに付着し、ライントラブルの要因ともなり得ます。

 ローラーの径サイズは、生地へのストレスとライン生産でのトラブルリスクを考慮して、検討する課題と言えます。

f:id:santa-baking:20190731163536j:plain

 ところで、一部の機種を除いてモルダーの圧延ローラーへパン生地は上方から投入されます。

f:id:santa-baking:20190802155622j:plain

 圧延ローラーの周速度は、一般的に等速ですので、1段目から2段目、2段目から3段目のローラーへ生地が移動する際、生地の進行速度は当然のことながら同じ速度になります。

 上の画像は工揮製のストレートモルダーですが、三段の各ローラーごとに速度調整機能が付いている機種となります。

 使い方次第にはなりますが、さてさてどのような効果が期待できるのでしょうか。

 冒頭の生地ストレスの件と併せて、おもしろい使い方もできると期待しているのですけど…。

ホールセールのパン 金の食パン(リニューアル)・セブン&アイホールディングス

リニューアル

 セブン&アイホールディングスから発売されていました金の食パンがリニューアルされました。

 新たな『もっちり食感 金の食パン』となって。

 早速、近くのセブンイレブンへ行って、購入してきましたが、 価格は1斤サイズ 4枚スライスで275円(税込297円)と、結構強気の価格設定です。

 それと、7月20日に並んでいた商品の消費期限が7月22日と少し短めです。

f:id:santa-baking:20190721020236j:plain

 さて、商品を持った感じは、まずずっしりとした重みを感じます。

 帰宅して、実際に重量を量ってみますと、434gでした。

 日本パン公正取引協議会では、食パン1斤は340g以上と「包装食パンの表示に関する公正競争規約」において必要表示事項としての記載があります。(消費者庁及び公正取引委員会認定)
 実際に、製パン各社から販売されている一般的なホールセールの食パンに関しては、表示内容に整合性を持たせるため、製品毎の重量のバラツキを考慮し、1斤サイズの食パンでは10%程度の余裕を見て、最終的な包装製品が370g程度になるように設計されています。
 そう考えてみますと、確かにこの1斤の食パンの434gは随分重めの商品であることが分かります。

 そういえば、TVで水分を多く含ませているような事を言っていたのを思い出しました。

 ですが、実際のスライス面を見てみますと、膜の厚さにはあまり違和感を感じないのですが、随分と目が細かい感じがします。

 実際に含水率を測定したわけでもないのですが、水分が多いというよりも生地重量そのものが多くなっているような気がしています。

 そして、最終発酵は幾らか若めに出して焼成するといったように。

f:id:santa-baking:20190721020308j:plain

  クロージャーのタグには、『焼かずにそのまま食べてもおいしい』との記載がありました。

 で、そのまま食べてみますと、しっとりした食感にほんのり甘い食味が感じられます。

 そして、加熱ですが、包装紙にはトーストではなく、電気レンジで500W 35秒と記載されていますので、その条件で加熱します。

 この食べ方はTVでも紹介されていました。

 加熱され過ぎることもなく、焼き立ての状態を楽しめるのだとか。

 でも、個人的にはやはりトーストして食べた方が好みです。

 さて、クラストとクラムのソフトさに関してですが、焼成方法に関しては気を遣っていることが分かります。

 全体的にやや焼色は薄めで、それでいてサイド部分はしっかりと腰折れしています。

 しかしながら、これも設計上の想定内のようで『こちらの商品はやわらかさが特徴のためミミが折れやすくなっておりますが、品質に問題ありません。』との記載が包装紙に記載されています。

 外観形状以上に、食感を優先したということなのでしょう。

 ここまでの内容だけでも、十分な差別化は図られていて話題性は申し分ありません。
www.santa-baking.work

 最近の生食パンブームの流れに乗って、山崎製パンからもミミまでやわらかい食パンが発売されたことは以前にも紹介しました。

 リテイルベーカリーから発信されたトレンドが、今ホールセールベーカリーまで巻き込んで、さらに大きな流れとなっています。