今年は、梅雨の時期から異例な暑さに襲われてきましたが、一般的に暑さはパンの売上げに大きな影響を及ぼします(つまり、暑い時期にはあまりパンが売れません)。
そこで、製パン各社は夏場対策にも乗り出しているのですが、最も知られています商品は以前にも紹介しました『北海道チーズ蒸しケーキ』ではないでしょうか。
『冷やしてもおいしい』をキャッチフレーズに今年も躍進を続けている同商品について、冷凍保存に求められる条件と併せて解説していきます。
【 目次 】
焼成後冷凍製品の保存条件
以前に冷凍パン生地の保存工程について解説しましたが、焼成後冷凍の製品についてはパン酵母の活性に関わります条件を考慮しなくても済む分、考え方としましては容易になります。
と、このように書き始めましたところで、冷凍&解凍工程の解説もあった方がいいような気にもなってきましたので、そこはまた改めて。
改めまして、生地の品質を劣化させないために必要なことは、冷凍でも、保存でも、解凍でも『生地中の氷結晶を成長させない』、これに尽きます。
では、どのようにしてその氷結晶は成長していくのでしょう。
氷結晶が成長していくメカニズムを解説しますと、次のモデル図のようになります。
冷凍保存している温度に数℃の変動があった際、大小さまざまなサイズの氷結晶が混じっている状態で生地の温度が上がりますと、どの氷結晶に対しましても解凍が進みますが、小さなサイズの氷結晶は持っている熱容量自体も小さいので、解凍は進み易く、さらに進みますと結晶自体が消失してしまうものまで出てきます。
そして、次に温度が下がった場合、残っています氷結晶は同様に成長しますので、消失した氷結晶の分だけ残った氷結晶は大きく成長することになります。
現実問題として冷凍庫の扉の開閉や物流段階での冷凍庫⇔搬送車の積み換え等、一定の温度で生地を保存することはまず不可能ですので、やはり意識して温度の変動を少なくする必要があります。
それでは、下の図に示されています①~④の4つの冷凍保存条件は、どれも温度の変動幅は同じですが、保存条件としてはどのように違ってくるのでしょうか。
結論から申し上げますと、④<③<②<① の順に保存条件は悪くなっていきます。
どうして、同じ温度幅なのに高い温度の方が氷結晶の成長が早くなってしまうのか、このことを理解する上で重要なのが凍結率(物質中の液体が固体に凝固している割合)です。
一般的な物質は凍結温度以下であってもすべてが凍結している訳ではなくて、一部が未凍結の状態にあります。
例えば、某家電メーカーの冷凍冷蔵庫で『切れちゃう冷凍』といった謳い文句の機能がありますが、これは-10℃以上の温度帯で凍結率を下げて包丁を入れやすくした機能です。
このグラフは、凍結温度が -3.15℃の生地に関して、凍結率を示したものです。(グラフでは、点線のハイスの式を参考にして下さい。)
-10℃では70%弱、-20℃では82%程度の凍結率となっていることが分かります。(ちなみに、マグロ等の遠洋漁業で使用されている冷凍庫の温度が-50℃というのは、凍結率がほぼ100%に近い事から設定されています。)
すると、同じ温度の変動幅(ここでは±2℃)であったとしても解凍される氷の量は、-18℃<-14℃<-10℃<-6℃、と大きくなることから、氷結晶の成長を促す結果となってしまいます。
つまり、良好な冷凍保存条件とは、
Ⅰ.低い温度
Ⅱ.安定した温度
ということになります。
北海道チーズ蒸しケーキ
夏の定番、山崎製パンの北海道チーズ蒸しケーキが今年も『冷やしてもおいしい』シールを付けて販売されています。
『冷やしてもおいしい』も、ずいぶん定着してきた感があります。
今、気が付いたのですが、商品カテゴリーとしては和生菓子なのですね。
私は、てっきり洋(生)菓子かと思っていました。
今回もしっかりと冷凍して頂きます。
カット面の内相は、細かい気泡が密に分散しています。
凍結しています生地中の水分ですが、凍結時は解凍時と比較して、比熱が1/2~1/3、熱伝導率が2~3倍になりますので、包装から取り出しますと比較的速く表面部分は解凍が進みます。
歯で噛んだ時には、口当たりはふんわりソフトで、嚙み切る時点では噛み応えのある食感を楽しむことができます。
寒い時期には・・・
ところで、この商品、寒い時期にはリベイクして(温めて)おいしい商品として販売されていましたね。
コーヒーサンドモカ
同じ山崎製パンの洋菓子で、コーヒーサンドモカも冷やして食べてみました。(特に、冷やしてもおいしい、とは書かれていませんでしたが。)
こちらは、洋菓子ですね。
もしかしますと、蒸し器で製造したものは洋生菓子で、オーブンで製造したものは洋菓子となっているのかもしれません。
先述の商品と同様に、冷凍しています。
凍結していて形状がしっかりしていますので、パンナイフもきれいに入ります。
さて、実際に食べてみますとサンドされていますコーヒークリームとミルククリームがパリパリに凍っていまして、冷たくてフワフワの生地とのバランスが絶妙でした。
これはこれで有りなのではないでしょうか。(あくまで、個人の感想です。)
ポンチキ(ウクライナのおやつ)
コストコでの買い物の帰り道、パンのトラに寄りました。
店内へ入りますと、棚にはウクライナの国旗の配色で黒パンの他、ポンチキと呼ばれますウクライナで愛されているおやつが並んでいます。
ポンチキ
ブルーベリージャムが入った揚げドーナツです。
ほぼ衝動買いです。
人を不幸に陥れるような争いが、一行も早く収束を迎えますように。
メゾン ランドゥメンヌのクロワッサン
前回の記事で、ペンギン侍 (id:ysnyn658) さんからメゾン ランドゥメンヌのクロワッサンを御紹介頂きました。
ちょうどパン学校(西葛西)の授業と業界紙の連載の取材(茅場町)で東京方面へ足を運ぶ機会がありましたので、少し寄り道です。
本来でしたら麻布台の本店へ行きたかったところですが、別件の仕事の都合でアトレ恵比寿の本館3階にオープンした店舗へ。
ありました、ありました、お目当てのクロワッサン フランセ(フランス産AOC発酵バター使用)とジャポネ(国産の発酵バター使用)が。
ただ、記事掲載の間隔が開きましたことで、記事が長くなってしまいましたので、クロワッサンの紹介は次回に回させてください(すみません)。