黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

リベイク・山崎製パン ~ オーブンの熱源とトースターの熱源

 前回の記事でフジパンの商品『おうちで焼きたて CRAFT BAKERY』のシリーズを紹介しました。

 

www.santa-baking.work

 

 ところで、消費者サイドの操作は同様ながら、おうちで焼きたてシリーズとは志向の異なる商品がスーパーのパンコーナーの棚で目立つようになってきました。

 

山崎製パン

 

 そう、『リベイク』再加熱を行う商品です。

 

山崎製パン

 

 山崎製パンの商品でもっとも顕著に見られる気がしていますが、既に他メーカーも含め、PB(プライベートブランド)商品でもそのような商品が登場するようになってきました(下は、ららぽーと平和堂のPB商品です)。

 

リベイク

 

 フジパンの『おうちで焼きたて』シリーズとは異なって、こちらは従来商品の食べ方提案となりますが、なにやら新たな流れのようなものを感じています。

 

【 目次 】

 

オーブンとトースター

 リベイクに関連して、加熱装置のオーブンとトースターについて解説したいと思います。

 

 オーブンもトースターもどちらもパン等を加熱調理する設備ですが、その大きな違いは加熱時間と熱の移動形態にあります。

 

オーブンとトースター

 

 上火を見てみますと、基本的にオーブンでは予熱して炉内を安定化させてから使用します。

 

 つまり、壁面も含めた炉内全体が熱の供給源であり、定常状態を前提として温度制御を行っています。

 

 ちなみに、炉内温度を200℃とした場合、内壁温度は+50~90℃程度となっていて、ここからの輻射熱が支配的です。

 

 一方、トースターはヒーター線が主な熱の供給源でニクロム線で800~900℃、アラジンに使用されているグラファイトヒーターでは1300℃と燃焼ガスの温度(1300~1800℃)に迫る温度となっています。

 

 熱の供給量は、[輻射熱量]×[熱源の面積]ですから、壁面全体で広い面積を取ることができるオーブンに対して、トースターは非常に狭い投影面積のヒーター線に石英保護管を付けたり、面状ヒーター(グラファイトヒーター)を採用することで対応を図っています。

 

 下火ではオーブンは蓄熱した炉床からの伝導熱で一気にオーブンキックが可能となることと比較して、トースターでは最高でもヒーターからの供給熱量に留まりますから急激な過熱は困難です。

 

(以上、対流ファンが付いていないタイプで比較しましたが、紙面が足りず、言葉足らずな解説となってしまいました。)

 

リベイク

ナイススティック

 元々、このリベイクの商品に目が行きましたのはロール成形の解説に取り上げようとナイススティック(山崎製パン)を購入したことがきっかけです。(すみません、まだ記事で挙げられていません。)

 

山崎製パン

 

 なにやら見掛けない『リベイク』の文字が気になりました。

 

山崎製パン

 

 しかも、フジパンの『おうちで焼きたて』シリーズはリベイクで特徴を生かすことができる可能性の高い商品アイテム群をラインナップしていることと比べて、この商品はリベイクしなくても十分に特徴を持った商品です。

 

高級粒あん

 どうも、その日の包装デザインが気になって、後日、改めまして他のリベイク商品を探しにスーパーへ出掛けました。

 

山崎製パン

 

 砕いた栗の実が入った高級粒あんもリベイク対象商品でした。

 

山崎製パン

 

 たしかにリベイクしますと、食感、風味が明らかに変わってきます。

 

山崎製パン

 

 そのような意味では、新たな体験を消費者に提供する意図は十分に理解できます。

 

山崎製パン

 

 ところでせっかくですので、この粒あんパンですが、製品サイズ(直径)の一回り小さいプレス天板を使用して成形~焼成を行っています。

 

 製品高さが出る上に、サイズが安定します。

 

アップルパイ

 これは、リベイクすべき商品ですね(個人的な意見です)。

 

山崎製パン

 

 従来、ホールセールベーカリーの袋包装商品で品質的に劣っていたアイテム群のひとつが、サクサク感を引き出せないペーストリー・パイ類です。

 

 包装後の時間の経過に伴って、表面の乾燥した生地に水分が移行してしっとりとさせてしまうためです。

 

山崎製パン

 

 以前にも解説しましたが、このアップルパイは商品名こそパイですが、原材料にパン酵母を使用していますので、名称としては洋菓子ではなく、菓子パンになります。

 

山崎製パン

 

 ただ誤解のなきよう、パン酵母を使用していることで他メーカーの一部の『パイ』に見られるような詰み(生地の層が剥がれずに厚いゴムのような層になってしまう現象)は見られません。

 

山崎製パン

 

 食感は十二分に良好なパイですから、品質をとても考慮した商品として評価できると考えています。

 

 本来の定義を忠実に守ることも大事ですが、こだわり過ぎて品質の低下を招くよりは、消費者へおいしい笑顔を提供できることの方を優先する姿勢もありではないでしょうか。

 

北海道チーズ蒸しケーキ

 これは、チャレンジャーですね(これも、あくまで個人的な意見です)。

 

山崎製パン

 

 当然、山崎製パンではリベイクした際の品質をチェックしていると思いますが、とても斬新です。

 

山崎製パン

 

 ただ、商品開発の基本の発想のひとつに、『新たな体験をさせてあげる』といったことが挙げらえていて、その点からは十分にあり得る商品と判断します。

 

www.santa-baking.work

 

 それにしても、この北海道チーズ蒸しケーキは夏季に『凍らせてもおいしい』と謳っていた商品。

 

 今、流行りの二刀流ですね。

 

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 山崎製パンは、既に焼成後冷凍の商品にもずいぶん実績を上げていますので、消費者としてはリベイクと併せて今後の展開が楽しみです。

 

カレーパン

 こちらもアップルパイと同様にリベイクすべき商品と思います。

 

山崎製パン

 

 リベイクによって、確実に表面に付けられたパン粉のカリカリ感が復活します。

 

山崎製パン

 

 食感を楽しむといった点で、納得です。

 

ケーキドーナツ

 同じドーナツでも、こちらは消費者の評価が楽しみです。

 

山崎製パン

 

山崎製パン

 

 今回のリベイクの展開は、モニター的な要素も多分に含まれているのではないでしょうか。

 

 供給した商品を消費者に楽しんでもらう、そのための方策として、今回の試みから次の商品開発へと繋がっていくことを期待したいです・・・わざわざ私が言わずとも山崎製パンでは、すでに取り組まれていると思いますけど。

 

あとがき①

 先日のニュースで、山崎製パンが来年1月1日出荷分からから平均7.3%の値上げを実施すると報じていました(フジパンについても後日ニュースで見掛けました)。

 

 政府の輸入小麦の売り渡し価格、油脂類を含む原材料価格の高騰や物流費の増加などが主な要因のようです。

 

 食パンと菓子パンの一部が対象となっていますが、対象商品は食パン・菓子パン計約700品目のうち、3割超の247品目だそうです。

 

 具体的には、ロイヤルブレッド、超芳醇、高級つぶあん、ナイススティックなどの今後も継続して製造する定番商品で、その他の新商品や季節商品は値上げの対象としなくても先々の改廃で姿を消すと思いますので、ここには含まれないといったことなのでしょう。

 

 さてさて見方を変えますと、現在の700品目の7割近くが先々姿を消して、そこにまた新たな新商品が投入される・・・、厳しい商品開発の現場の実状が見えてきませんか。

 

あとがき②

 今年もこの時期に、仕事場近くの散歩道で桜が咲いていました。

 

桜

 

 昨年は12月に咲いていましたので、少し気を抜いていましたところ、気付けば満開のタイミングを逸してしまいましたが、それでもこの時期に桜の花が見られて少し嬉しかったりして。