ローソンからゴディバとのコラボ商品2アイテムが発売されました。
超セミハード系(?と早合点)のショコラブレッドと、なんと想定外のカレーパンです。
これらの商品は、製パン最大手の山崎製パンが製造していることもあり、その製造ラインにはとても興味が湧くところでもあります。
実は、このショコラブレッドに関しては、1回の実食でなにか腑に落ちないところがあり、改めてもう1回買い直して食べてみましたところ、もしかして山崎製パンのけっこうな挑戦が・・・、と思わせられるような商品でした。
今回は、ローソンベーカリーのゴディバコラボ商品の紹介と併せて、この商品とは主旨が外れるかもしれません連続式オーブンの蒸気加熱機能についての解説をしてみたいと思います。
【 目次 】
トンネル式オーブンの蒸気発生装置
もしかしますと、ここで蒸気発生装置の解説は見当違いだったかもしれませんが、それほど今回の山崎製パンの商品は意外性の高い商品だったと言い訳させて下さい。
固定式オーブンを使用してハード系のパンを焼成する際は、比較的容易に蒸気を掛けることができます。
密閉された空間であれば、噴出させる蒸気に対して炉内の空気を優先して排気することは技術的に十分可能です。
ハード系の製品の焼成には蒸気加熱が付きものですが、それが連続生産ラインとなりますと、対応することの大変さもあります。
まず基本的な事柄として、化学の授業でいろいろな物質の分子量を勉強されたことを思い出してください。
パンの焼成に関係する主な気体の物質としては、概算で、
・空気(O2・20% + N2・80%) : 28.8(=32×0.8+28×0.8)
・二酸化炭素(CO2) : 44(=12+32)
・水(H2O) : 18(=2+16)
となりますので、つまり空気や二酸化炭素より軽い蒸気(水)はパンの焼成中、通常、炉内の上方へ上がっていってしまう事が推測されます。
そして、連続生産ラインで一般的に使用されるオーブンは、入口と出口がありますから密閉状態にすることができず、しかも多くのオーブンで使用されている燃料のガスは必然的に排気しながら運転せざるを得ません。
そうなりますと、パン生地を加熱させる蒸気は上方から噴き付けることになるのですが、勢いが弱ければパン生地まで届きませんし、かといって強過ぎますと流体の広がりが少なく、結果として当たる時間が短くなって十分な加熱が難しくなります。
さてさて、この技術は現在も各オーブンメーカーで試行錯誤をされていると思いますので、具体的な解説は申し訳ありませんが、割愛させて頂きます。
ショコラパン(210円 税込)
ローソンがゴディバとのコラボで、2品種の商品を発売しました。
既に、ブログで紹介されている方もいらっしゃいますので、なにを今さらと思われるかもしれません。
一品めのショコラパンですが、包装の外観はゴディバのイメージが全面に出たデザインとなっています。(よく見てみますと、LAWSON BAKERY の文字が分かります)
そして、原材料表示を見てみますと、そこには製造元として山崎製パンの表示が。
外観・断面
購入しましたショコラブレッドは、チョコスプレッドが生地から少しはみ出していて、ちょっと失敗だったかなぁ・・・、との感覚でした。
上面はクープが3本入っており、それでセミハード系?と先入観を持ってしまった、という訳(言い訳)です。
形状は比較的歪で、腹割り充填されていますチョコスプレッドは真横のスライスではなく、斜め下方からの切れ込みが入っていました。
この時点で、これは手作り感を出しているため?、との見方もできたのですが、どうも連続生産ラインで製造する商品としては、いい意味で違和感の残る品質でした。
風味・食感・食味
生地には、チョコレートチップとクランベリー粒が練り込まれていて、イレギュラーな食感が楽しめ、甘さと酸っぱさを味わうことのできる商品でした。
なお、生地はやや脆さのあるしっとりとした食感で、クープで騙された見誤った蒸気加熱による引きの強さはあまり感じられません。
リベンジのショコラパン
そこで、どうもこの記事を書きながら、気持ちの中にモヤモヤしたものが残った状態が収まらず、改めまして再度購入して、見てみることにした次第です。(すみません、納得できないと妥協できない、しつこい性格なんです。)
やはり、外観形状は歪です。
しかし、今回購入した商品はチョコスプレッドもはみ出ておらず、そのような意味ではきれいな外観です。
今回、スライス面は真横から切れ込みが入っています。
そして、この断面を見て、ふと気づいたのが、縦に切った時の縦横比がほとんど変わらない、つまりは円形に近いという事でした。
あと、わずかにパンチングメッシュのような跡が残っているみたいで・・・。
もしや最終発酵~焼成に至って、平天板やプレス天板を使わずにパンチングメッシュの天板を使っていたのでは。
パンチングメッシュの天板を使用しますと、バゲットのような商品は断面を円形に近い状態で焼成することができますが、その後の加工は非常に困難になります。
一般的な冷却後の加工工程では、フィリング充填のカット面を安定させるために生地底面の形状は平たい方が確実に良好に流すことができます。
ところが、生地の底面が丸く、しかもそこそこの硬さがありますと搬送コンベア上で位置が定まり難く、非常に装置のセッティングが困難になり、高い技術レベルが求められることになります。
実際の生産ラインを見た訳ではありませんので、あくまで想像の域を脱しませんが、この品質の商品を製造しようと試みた企業:山崎製パンの挑戦には、(勝手にですが)賛美を送りたい気持ちにもなってしまいます。
ビーフカレーパン(280円 税込)
もう一品は、ゴディバでビーフカレーパンといった時点で、既に特筆ものです。
名称は、ドーナツとなっています。
原材料名の先頭にビーフカレーと記載されていますので、小麦粉以上にフィリングを詰めている商品のようです。
外観
きれいな円形の外観にパン粉がやや歪に塗(まぶ)してあります。
そして、側面はドーム型ということでこれらの事柄を含めまして、名称はドーナツですが、もしかしてフライヤーでは揚げていないのでは、と。(もちろん、こちらも実際の生産ラインを見ているわけではありませんので、間違っていましたら、申し訳ありません)
もしかしますと、丸目の成形後、パン粉を付けて天板に並べ、オイルを噴霧したか、もしくはパン粉自体に油脂を含ませていた可能性も考えられます。(パン粉は脂を含んでいますが、パン生地の表面は、あまり脂っぽくありません。)
生地底面を見てみましても、明らかに生地上面のパン粉の付き方とは表情が違っていることが分かります。
断面
カレーフィリングは、成形時に包餡されたものではなく、生地の焼成・冷却後に後充填されたのではないでしょうか。
2/15 訂正 ⇒ カレーフィリングは、成形時に包餡されたようです。買い直しましたカレードーナツには後充填の跡が見つからず、加えてわずかにフィリング上部に空洞がありました。
パン生地の部分は内相において膜がとてもきれいに伸びており、フィリングと生地との境界が密になっていて、フィリング側の生地内側に層ができていません。(ただ、包装紙の写真ではカレーフィリングの上部に空洞ができているのですが・・・難しいです)
さらに不思議なことは、上部に生地が偏っていて、なんとなく閉じた面が上になっているようにも見えることです。(通常は、閉じた面は下に置きます)
ドーナツに限らず、一般的に成形時にフィリングを生地で包餡して焼成・フライしますと、成形時にフィリングと生地の接していた部分が、下の写真のような空洞になります。
このカレーパンの製品設計の段階において、メインはカレーではなく、あくまでもゴディバのチョコを主眼に置いたパン生地とのコンセプトで作り上げられたのでは、と考えますと、先述のショコラパンと同様に非常に考え抜かれた一品と感慨深いものがあります。
風味・食感・食味
以外にも(失礼しました)、チョコレート生地とカレーフィリングがマッチしています。
油はしつこくなく、生地のチョコレート感はしっかりと感じられますものの、全体としてバランスの取れたカレーパンを味わうことができました。