黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

生クリーム専門店Milkとの共同開発のパン・ローソン&山崎製パン ~ ホイップクリームの充填

 少し記事をアップするタイミングを逸してしまいましたが、ミスターエスプレッソ (id:mrespresso) さんの記事を読ませて頂いて、ローソンが生クリーム専門店Milkとの共同開発商品を出したことを知り、実は早々に購入していました。

 

www.coffeelab.work

 

 近くのローソンでは、商品棚はこのような感じです。

 

LAWSON BAKERY

 

 あまり目立った感じではないですね。

 

 今回は、先述の企画商品2品の紹介と、その商品に充填されていますホイップクリームに着目しまして、連続生産ラインでフィリングを充填する装置に関して、解説していきたいと思います。

 

【 目次 】

 

フィリングの特性と充填装置

 焼成後のパンに餡やカスタードクリーム、マーガリン等を充填する装置に関しましては、以前にも解説しました。

 

www.santa-baking.work

 

 ところで、パンに充填するフィリングは装置内で力が加えられて押し出されるようにパンへ流れていきます。

 

 下の図ですと、①ロータリーポンプ式や②ピストン式といった方式に関わらず、ノズルから出てパンに到達するまで(濃い青で示されました矢印の範囲)の工程では、加圧され圧力が高くなっている状態にあります。

 

フィリング充填装置

 
 さて、ここでホイップクリームを充填する場合を考えます。

 

 非圧縮性の餡やマーガリンと違って、ホイップクリームには圧縮性の空気が含まれています。

 

フィリング充填装置

 

 つまり、圧力が加わりますと空気の部分は体積が縮んでしまい(例えば、2気圧で気体の体積は概ね1/2になります)、意図した体積が吐出されなかったり、ノズルから出てくるタイミングがずれたり、と設計者の頭を悩ませます。

 

 ちょっとしたフィリングの違いで、装置の仕様や動作プログラムに工夫が必要となりますが、このような積み重ねで装置も進化していくのでしょうね。

 

MILKクロワッサンとMILKカスタードのちぎりパン

 MILKのイメージカラーそのままの包装デザインが個性的です。

 

LAWSON BAKERY

 

 シート生地を使ったクロワッサンと玉生地を成形するちぎりパンですので、それぞれ別の製造ラインで作られている可能性が高いと考えられます。

 

MILKクロワッサン(140円 税込)

 製造元は山崎製パンですが、同社の新商品の開発力は群を抜いていますね。

 

 1年間にいったいどれだけのパンを新たに市場投入しているのでしょうか。

 

LAWSON BAKERY

 

 原材料表示の先頭には、生クリーム入りミルククリームと記載されています。

 

 包装に記載の『北海道産生クリームを使った』の意味が、生クリーム入りのミルククリームなのでしょう。

 

 普通に考えて、常温流通(25~30℃を想定)で生クリームたっぷりということは無理があるでしょうし、価格等制約のある条件下で、いかにニーズのある商品の完成度を高めるかといったところがポイントかと理解しています。(もっとも、本物志向の方には、ちょっとといった感は否めませんが)

 

外観

LAWSON BAKERY

 

 上写真の下側(三日月と想定しますと下弦)からスリットが入れられて、ミルククリームが充填されているようで、少しはみ出しているところが見られます。

 

LAWSON BAKERY

 

 層は、やはりリテイルベーカリーでの手作りほどのレベルを求めるのは難しそうです。(でも、ポジティブに言い方を変えれば、これからの伸び代があるということで)

 

LAWSON BAKERY

 

 生地底面には、横に線状の焼き色の強弱の付いた跡が見られます。

 

 特に腰持ち(高さ)の形状を意識して、プレス天板を使用しているのでしょう。

 

断面

 内相は、クロワッサンらしい目が出ています。

  

LAWSON BAKERY

 

 フィリング(ミルククリーム)の充填は平口金を使用して、コンベアの進行方向に一様に絞った感じです。

 

 平面的には、長方形に絞った感じになりますので、少し残念ですが、パン生地の両先端へはミルククリームが入らない状態です。

 

食感・食味・風味

 包装紙を開いた時点で、ミルクの風味が漂ってきます。

 

 歯切れの良い生地にホイップクリームはしっかりと十分な量が充填されていて、クリーム感のアピールを強く感じます。

 

 商品コンセプトのポイントは外さず、Milk のイメージを残した商品です。

 

MILKカスタードのちぎりパン(140円 税込)

 ソフトで黄色み掛った生地は、昨今流行していますマリトッツォのブリオッシュ生地を連想させますが、ここは油脂の感覚はあまりなく、卵黄が効いているのでは、と推測します。

 

LAWSON BAKERY

 

外観

 焼色は、やや薄めのロールパン様商品です。

 

LAWSON BAKERY

 

 一般的なちぎりパンは、小分けされた玉生地あるいはロール生地を並べて成形しますが、この商品は1本のロール生地から作られているようです。

 

 では、ちぎりやすいように付けられている上部の切り込みですが、どうやらウォータースプリッター等で深めの切り込みを入れているような外観に見受けられます。

 

 ただ、切込みの間隔が一定になっていないこと、真横に揃っていないことから、手動?とも思ってしまいます。

 

www.santa-baking.work

 

 ウォータースプリッターに関しましては以前にも解説しましたが、今回のような製品であれば、ノズルを固定でコンベア上を流れてくる生地に水を吹き付けるのみで対応できると考えるのですが、なにか事情があるのかもしれません。

 

LAWSON BAKERY

 

 側面を見てみましても、きれいにホワイトラインがつながっていて、上部の切り込みはこのホワイトラインの上側で途切れています。

 

 生地底面を見てみましても、(若干、中央のラインが気になりますが)生地を小分けにした形跡は見られません。

 

LAWSON BAKERY

 

 ところで、天板で細長い生地のパンを焼成しますと、生地の両端の底面が濃くなる傾向が見られます。

 

 これは、天板に使用されています金属の熱伝導性によるもので、どうしても両端は生地の乗っていない部分からの熱の移動が大きく、温度が上昇しやすくなってしまいます。

 

 なお、もしかしますと天板はプレス天板ではなく、あえて平天板を使用しているかもしれません。

 

 勝手に推測しますと、切込みの効果を十分に得たいため、とか。(言い換えれば、生地を小分けにしていれば、プレス天板を使用して生地高さを出すような操作になっていたのでは、と考えてしまいます)

 

断面

 たっぷりとホイップクリームが充填されています。

 

LAWSON BAKERY

 

 絞り具合から、フィリング充填装置のノズルは丸口金を使用しているようです。

 

LAWSON BAKERY

 

 せっかくのちぎりパンですから、実際に手でちぎってみました。

 

 この通り、想像以上にきれいにちぎることができました。

 

食感・食味・風味

 しっとりした生地に、香りも食べ口もミルクの感覚が強いです。

 

あとがき

 この日は出勤前にローソンへ立ち寄ってこれらの商品を購入し、その日の昼食に充てたのですが、2個の菓子パンながら、たっぷりサンドされていましたミルククリームが個人的には少々重かった感がしています。