パンの見た目のインパクトは、外観品質といった点でとても重要です。
山崎製パンのナイススティックとパスコのファボールサンド&スナックパンは、いずれもロングヒットとなる定番商品です。
これらの商品に共通する特徴、それはパンの(細)長さ。
シンプルに見えて、これこそ機械製造ならではの商品とも言えます。
今回は、ロール成形にまつわる解説を展開していきたいと思います。
【 目次 】
細長いロール成形
連続式の製パンラインで、丸めて球状になった生地を均等に細長く成形するためには、どのような作業が必要でしょうか。
製パン機械設備では、モルダーという装置を使用するのですが、これは圧延ローラーでガス抜きをした生地をベルトコンベア上に流して、上下の平らなベルトコンベアに挟んで(巻く)ロール成形するものです。
従来の装置では、上部のベルトが固定式になっているものが多く、生地サイズに合わせることが大変でしたが、近年の装置では上部のベルトも可動式になりました事で、巻き数を調整できるようになってきました。
特に細長く成形する場合は、生地を巻く回数が多く必要となる訳ですが、そのような場合には、上部の展圧ベルトを進行方向とは逆方向へ動かすことで、効果を発揮します。
なお、長さの微調整にはレール状の生地ガイドが設置されていますので、規定の長さに揃えることができるようになっています。
この作業はもちろん手作業でも可能なのですが、巻いて伸ばすという単純な作業を時間をかけて行うところには、装置生産の方に分があると思っています。
しかし、人のセンサーと動作は非常に繊細です。
逆に、より複雑でセンスを必要とするところは到底機械装置ではまだまだ対応は難しいと思いますし、機械化できたとしてもコストパフォーマンスの点で実用的ではないでしょう。
では、市販されているパンを見てみましょう。
以前にヤマザキ春のパンまつりの記事を上げさせて頂きました際、arakannkoalaさんから、山崎製パンのナイススティックについての解説のリクエストを頂きました。(すみません、あれから半年以上が経ってしまいました。)
なかなかリクエストにお応えできる程に器用でもないのですが、製パンエンジニアとして技術や装置に関連付けられれば、適宜お応えできるよう、がんばっていきたいと思っています。
ナイススティック(108円 税別)
現在市販されています菓子パンの中では、製品長さが30cmを超えていて最長ではないでしょうか。
包装紙に『リベイク』の表示を発見して、この商品で最初にリベイク戦略に気が付きましたが、クリームも充填されている商品で大丈夫?とも思ってしまいました。
上面の焼色はやや薄めの明るいキツネ色です。
そして、側面のホワイトラインは大きくしっかりと出ていますので、焼成終了間際に比較的短い時間で着色されていると推測します。
このような焼き方をするためには、コンベクションタイプのラック式オーブンでは対応が難しく、一般的に考えて輻射熱量が多いトンネル式オーブンで焼成していると推測します。
細長い生地で、くわえてソフトな食感の商品ですので、焼成時間自体も短めに7~8分程度で可能ではないでしょうか。(もちろん、連続式オーブンの入口⇒出口のゾーンに掛けて、上火と下火のバランスは調整が必要です)
天板は、プレス天板が使用されているようです。
目的は、パンの腰(高さ)を出すこととパン自体の形状をまっすぐに保つことです。
地味なところですが、この細長い生地のパンに背割りでカットしてクリームを充填する作業も手作業では、けっこう大変なものになります。
そこまで手間をかけて、1個108円の販売価格ですから、コスパは言うに及ばずですね。
ファボールサンド(88円 税別)
パスコが販売しているソフトフランス生地のファボールサンドは、ナイススティックよりやや短めの28cmですが、生地物性がやや硬めですので、細長いロール成形は一層伸ばすことが難しくなってきます。
今回は、たまたまチロルチョコとのコラボ商品がありましたので、そちらを購入しました。
生地の中央には一本のクープが入っていますが、当然のことながら、製パン設備で対応していると思います。
よく使用されている装置がウォータースプリッターと呼ばれる機器で、高圧の水が非常に細いノズル管を通して製品表面に噴出されてカットするというものです(以前の解説がこちらになります)。
今回は斜めのクープではなく、生地の長さ方向に沿って入れてありますので、シンプルにコンベア上を流れてきた天板(生地)に対して、固定されたウォータースプリッターのノズルから高圧の水がタイミングを図って噴出される仕組みと推測します。
生地が着色されていますので、窯伸びしている部分が見分け難いですが、それでも生地膨張した跡として側面の筋の部分が確認できます。
こちらもプレス天板を使用した形跡が見られます。(この長さの製品には必須でしょう。)
そして、充填されているのはチロルチョコをイメージした生クリーム入りのチョコレートフラワーペーストです。
食べてみますと、ソフトフランス生地の歯応えが口に入り易い細いサイズと相まって良好な食感を醸し出します。
改めまして、このパンが88円で供給できますのも、装置による省人化の賜物かと。
スナックパン(みかんスティック 128円 税別)
スナックパンは、私が小学生頃(50年程前)から慣れ親しんできました商品です。
製品の長さは16cm程ですが、重量は1本30g弱と小さな生地を分割工程以降は扱わなくてはなりません。
今回は、変わり種でイトーヨーカドー限定のみかんスティックなる商品が目に付きましたので購入してみました。
みかんに関する原材料には、チップ、果汁、ペーストとずいぶん種類はふんだんに使われているようです。
生地の色は、みかんだけあって黄色味を呈しています。
そして、側面には明るい黄色のホワイトライン(黄色でも(笑))がくっきりと。
前出のパンと同様にこちらもプレス天板を使用して焼成されています。
断面には、混ぜ込まれています、みかん入り準チョコレートのチップが確認できます。
スナックパン特有の歯切れの良さとソフトさに加えて、みかんの風味と粒感(チップですけど)の食感も楽しめます。
ところで、この包装紙には袋止めシールが付けられていて、食べ残した分は包装紙をシールで封することができます。(なかなかの便利グッズといった感想です。)
近況 近所のパン屋さん
ペンギンベーカリー
先月、北海道を拠点としますペンギンベーカリーが近所にオープンしました。
カレーパンが2年連続でカレーパングランプリの金賞を受賞しているお店のようです。
オープン初日は昼頃で既に完売でした(ペンギンさんが頭を上げていました)が、できるだけ早い時期にご報告できればと思っています。
anopan
そして、我が家の定番 anopan では、店頭に顔ハメ看板が登場!
パン激戦区とまではいかなくても、徐々に競争になりつつある感がしている中、anopan の看板の効果は・・・。
この日は新商品の『ナッツとデーツのパン』をさっそく購入です。
やっぱり、我が家はこちらのパン屋さんに通いそうです。