黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

生地と折込み油脂の物性 ~ グレープフルーツのデニッシュ・anopan

 近所の焼き立てパン屋さん:anopan が、期間限定でグレープフルーツのデニッシュを発売しました。

 

www.santa-baking.work

 

 改めまして、anopan のリポートと併せて、デニッシュに絡めたシート生地の折込み油脂について解説していきます。

 

【 目次 】

 

シーティング時の生地温度

 デニッシュペーストリー類のように油脂を生地に折り込んでいく作業の際には生地の温度への注意が必要です。

 

パン生地 折込み油脂

 

  と言いますのも、デニッシュ類の生地の凍結温度は-6~-7℃程度と低めなのですが、バターですと凡そ+7℃以下の温度で固化してしまいます。

 

 つまり、生地を延ばす時には、同程度に油脂も延ばすことになりますので、温度がとえも重要になってくる訳です。

 

 一般的な生地の折り方のひとつに三つ折りがありますが、重ねて延ばすといった作業の繰り返しできれいな層が出来上がるイメージです。

 

パン生地 折込み油脂

 

 ちなみに、元の層の数:a に対して、三つ折りを1回行いますと、できる層の数は a×3-2 で計算できますので、2層⇒4層、4層⇒10層、10層⇒28層、と繰り返すごとに層の数も増えていきます。

 

 ところで、上下に金属製のローラーがあるシーティング装置でデニッシュ生地を延展する場合には、熱容量が大きいローラーからの熱移動と表面積が大きくなったことによる周囲からの対流熱伝達が生地温度を上げてしまいます。

 

パン生地 折込み油脂

 

 つまり、1回の延展で生地温度が上昇した分、手間が掛かりますが、一度、生地を冷蔵庫等で冷却する必要が出てくる訳です。

 

パン生地 折込み油脂

 

 もし、この作業を怠りますと、油脂の温度が上昇して生地に溶け込んでしまい、きれいな層ができなってしまいます。

 

パン生地 折込み油脂

 

 そして、一方、生地を冷やし過ぎたりしますと生地だけ流動して油脂は固まって動かず、先端が生地だけといったシートができてしまいます。

 

 ただし、熟練された方は、この操作も生地を冷凍庫で冷やして、表面の温度上昇分を考慮して取り出すタイミングを計っていますので、このような教科書通りの作業には当てはまらないケースは多々あると思います。

 

 匠の技ですね。

 

anopan

 これまで数回紹介していますが、このお店のデニッシュはレベルが高くて、このようなパン屋さんが歩いて行ける距離にできて嬉しい限りです。

 

 はっきり言って、リピーターです。

 

anopan

 

 今では、コロナ禍の影響で、レジの対面部分には透明のプレートが設置されており、袋詰めは購入した人が自身でする方式に変更となりました。

 

anopan

 

 購入しました商品は、上写真の5品です(と言いますか、何度も買いに行っていますので、とある日に購入しましたパンですね)。

 

グレープフルーツのデニッシュ(230円 税込)

 一番のお目当てのパンです。

  

anopan

 

 やはり、デニッシュの層の出し方が本当にきれいです。

 

パン生地 折込み油脂

 

 ちなみに、成形方法はデニッシュのスクエア生地を上図左のように切り込みを入れ、上下の生地の角を他方の角に合わせていますね。 

 

anopan

 

 成形後には中央の窪んだ部分にクリームチーズを充填して焼成し、冷却後にカットされたグレープフルーツの果実をトッピングしているのかと思います。

 

 断面からも、瑞々しいグレープフルーツの果肉感が十分に伝わってきます。

 

 実際に食べてみますと、生地のサクサク感とグレープフルーツのジューシーさがベストマッチングです。

 

anopan

 

 先ほどはピンクグレープフルーツでしたが、時期によっては色違いのグレープフルーツが使われていることもありました。

 

 どちらも、十分に堪能できましたよ。

 

anopan

 

 最後に、生地の横から層の感じをお伝えします。

 

 上と下の生地を丁寧・上手に繋げていることが窺(うかが)えます。

 

桃のパン(280円 税込)

 こちらは、ソフト系のパン生地に桃の半身の果実が載りました、桃のパン、です。

 

anopan

 

 こちらもパン生地とフルーツの間にはクリームチーズが使用されていますね。

 

anopan

 

 こちらは、イメージ通り、ソフトな生地の食感と桃のソフトさが相まって、溶ろけるような感じの商品になっています。

 

イチジクのパン(270円 税込)

 家族のお薦めで、イチジクの果肉を生地に練り込んだハード系のハースブレッド(直焼きパン)です。

 

anopan

 

 クープの間からイチジクの果肉が覗いています。

 

 食べた感想は、今度、家族に聞いてみます(すみません)。

 

ミルクフランス(200円 税込)

 そして、我が家の定番、ソフトフランスです。

 

anopan

 

 最近、anopan ではバゲット生地でも1本を3等分してミルクフランスやあんバターの商品を、お願いすれば提供してもらえます。

 

 私は、どちらかと言いますとバゲットベースのあんバターがマイブームになっています。

 

ぐるぐるのザクザク(焼き菓子 270円 税込)

 こちらは、デニッシュ生地を巻いてラスク風にした焼き菓子です。

 

anopan

 

 おもしろそうでしたので、ついでに購入してきました。

 

 サクサクして、おやつにはぴったりです。

 

お詫び

 今回の記事の投稿までに随分間隔が開いてしまいました。

 

 結果として、実は今回の記事の『グレープフルーツのデニッシュ』は販売が9月末で終了してしまっています。すみません!

 

 情報ネタが溜まって滞ってしまい、タイムリーな発信が叶わず申し訳ありません。

 

 今日の午後は講演会、来週は九州の学校の特別講義、再来週は学会での研究発表、と立て込んではいましたが・・・(単なる言い訳です)。

 

 とりあえず、これから講演会(リモートでは初体験です)頑張りま~す。