先日のゴディバコラボのパンが発売されて以降、再度ローソンへ立ち寄りましたところ、今回はローソンベーカリーから、シェ・シバタ監修の菓子パン2品種が発売されていました。
いちごチョコパイとクランベリーのデニッシュロールの2品種です。
どちらもシート生地から成形して製造しますが、パイとデニッシュペーストリー(以下、デニッシュ)では、基本的な配合も違えば焼成時のオーブンキックのメカニズムも異なってきます。
今回は、シェ・シバタ監修の前述2品種の紹介に加えて、パイとデニッシュの焼成時に生地内部で起きています現象について解説していきます。
【 目次 】
パイとデニッシュの焼成メカニズム
以前にも解説しましたが、まず分類として、パイは菓子でデニッシュはパンですので、これらの製品は配合から異なってきます。
具体的には、菓子であるパイにはパン酵母(イースト)が含まれず、パンであるデニッシュにはパン酵母を配合して生地が作られます。
すると、焼成時に生地に起きる現象としては、どのような違いが現れてくるのでしょう。
パン生地がオーブンへ投入されますと、温度の上昇と共に発酵中に生成されました炭酸ガスが溶出し、アルコールが蒸発します。
これらの現象はデンプンが糊化する以前に生じますので、生地は十分に膨張してから固まって伸展性がなくなります。
ところが、パイには発酵という工程がありませんので、体積が膨張する推進力(Driving Force)としては、生地中の水分蒸発ということになってきます。
水分の蒸発は約100℃で生じますので、この温度の生地は当然デンプンが既に糊化していて、けっして伸びることはできません。
では、どのようにしてパイの生地は膨張するのかと言いますと、層状に折り込まれた油脂の部分が剥がれて膨らむことになります。
すると、パイの製造では成形に不備があったりしますと、思わぬ不具合が生じることもあります。
この写真の商品はどこのパイとは言いませんが、本来、紫色の矢印で示されましたような層が生地全体にできていてほしいところ、青の矢印のように幾多の層が密着して厚いシート状になってしまっています。
こうなってしまいますと、当然、食べてもゴムを噛んでいるようで歯切れのいい食感は得られません。
例えば、成形時の温度が高くなってしまい、生地に油脂が溶け込んで確実な層が形成されていない場合に見られたりします。
パイやデニッシュ生地の折込み時に、面倒でも手間暇をかけて生地を冷却する重要性がこのようなところで再認識されます。
いちごチョコパイ(ゆめのか苺入りジャム) (148円 税別)
愛知県産ゆめのかいちご入りジャムとの記載がありますが、販売エリアは、愛知県・岐阜県・静岡県・三重県・富山県・石川県・福井県と長野県の一部だそうです。(もちろん、ローソン限定です)
外観
スクエア形状のパイは包装紙から取り出す際、上面のジャムがかなりべた付いて引っ掛かりました。
チョコレートはコイン状のものが4枚載せられ、その上からいちごジャムがトッピングされています。
内相
チョコレートの部分でカットして断面を見てみますと、チョコレートとジャムはパイ生地を焼成・冷却後にトッピングされていることが分かります。
いちごクリームの層は確かにカット面では確認できますが、色が薄くあまり目立ちませんので、外観からは分かり難いですし、食べた時の食べ口から分かるくらいでしょうか。
風味・食感・食味
いちごジャムの香りはとてもはっきりしていて、インパクトがあります一方で、いちごクリームの層は食べてもあまり存在感が感じられませんでした。
ただ、生地に関しましては表面の大部分がジャムに覆われていることもあって、歯切れのいいサクサク感が感じられなかった、と思っていたのですが、ここでもなにやらモヤモヤしたものが。
後日に
それで、今回も再度ローソンへ足を運び、改めて原材料表示を確認することに。
すると、商品名はパイなのですが、製品名称は菓子パンになっていて、原材料名の中にもはっきりと『パン酵母』と明記されているではないですか。
さらに油脂としてはバターではなく、一般的に融点の低いマーガリンが使用されています。
生地の食感で腑に落ちなかったところは、もしかしますとこの辺りの点に因るものだったのかもしれません。
おかげで、写真撮影のため、追加でもう1個のいちごチョコパイを購入することになりました。
クランベリーのデニッシュロール(ゆめのか苺入りジャム) (148円 税別)
こちらの包装紙には、白い作業着の柴田シェフが印刷されています。
包装紙越しにも、ホワイトチョコレートとラズベリーシュガーチップが映える商品です。
外観
包装紙から取り出しますと、その鮮やかな色彩がより一層映えます。
シート生地は巻かれた後に、一定間隔でカットされ、天板に並べられているのでしょう。
焼成・冷却後にホワイトチョコレートを掛けて、ラズベリーシュガーチップがトッピングされています。
シート生地をコンベア上で巻くサイドワインダーという装置は、こちらの記事に記載があります。
底面の着色部分はカスタードクリームとクランベリーでしょうか。
ロール成形が中心近くで少し歪んでいるのは御愛嬌ということで。
内相
生地高さが少々あって、おそらくセルクルは使用していないでしょうから、最終発酵~焼成工程で生地は横に伸びていきます。
黄色味掛かった生地の色は、卵由来でしょうか。
そして、シートの巻きの剥がれた部分に間隔ができていますが、これは設計上狙った品質なのでしょう。
風味・食感・食味
甘い香りとしっとりとした食感が特徴的だったことに加えて、味的にはラズベリーシュガーチップとクランベリーの酸っぱさが甘いホワイトチョコレートとよくマッチしていました。