黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

パン生地作りでの考え処 ~ 混ぜ物生地(レーズン食パン、他)

 レーズンパンや豆パンに代表されます混ぜ物生地のパン。

  

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 作り方も様々で適用範囲も広いのですが、今回は概要だけでもお話したいと思っています。

 

【 目次 】

 

対象の商品

 

 先頭の画像は、元々東北地方でソウルフード的な豆パンです。

 

 今では、多くのコンビニやスーパーで普通に目にしますが、私が初めてこのパンに出会った時には、東北の人達はおいしいパンを食べているんだと感激していたことを覚えています。

 

 この豆パンは黒豆等の鹿の子豆を成形工程でパン生地に混ぜ込んで、パンニング⇒最終発酵⇒焼成へと進みます。

 

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 一方、ミキシングの工程で混ぜ物生地を作っていきます商品の代表格は、なんといってもレーズンパンではないでしょうか。

 

 前述のふたつの製法の違いは、混ぜ込みます材料の崩れ易さに大きく起因しています。

 

 鹿の子豆をパン生地と一緒にミキシングしたら、ほとんど原形を留めていることはなさそうなことは、容易に想像できます。

 

サンタさんの豆知識 混ぜ物生地の分割重量

 ところで、パン生地に混ぜ物を加えた時の分割重量の考え方について、解説します。

 

 これは、例えば角形食パンのように最終製品の外形が確定さえている製品には特に重要な案件となります。

 

 仮に型生地比容積(食型の容積に対する生地重量の比率)を4(つまり、成形時の生地がその体積の4倍に膨張する)とした際の計算方法です(便宜上、混ぜ物の密度(比重)は1とします)

 

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 例えば、150gの生地を基本とした場合、このパン生地は焼成後4倍に体積膨張しますので、最終製品の体積は、150g×4 = 600ml となります。

 

 もし、この生地の20%をレーズンに置き換えた場合、同じ分割重量の生地を想定しますと、80%のパン生地は4倍に膨れますので、150g×0.8×4 = 480ml の体積が得られますが、レーズンは膨らみませんので、150g×0.2×1 = 30ml の体積にしかなりません。

 

 つまり、このままですと、480 + 30 = 510ml の体積にしかなりませんので、規定の体積が必要な時には、150g×(600÷510) = 176.5g の生地を分割することになる訳です。

 

ミニミニ工場見学 成形装置

 ミキシングの段階から生地に混ぜ物を加える場合は、機械設備としましてはシンプルにミキサーとなりますので、ここでは成形時に混ぜ物を加えるための装置について解説します。

 

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 これは、シート生地に混ぜ物を分散するストルワーという装置です。

 

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 そして、混ぜ物を分散した生地は、次の工程で巻かれてロール状の生地に成形します。

 

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 このような方法で製造しました製品は、混ぜ物がパンの表面に出てこないといった特徴があります。

 

 先述のレーズン食パンは、製品表面のレーズンが焦げたり、それが原因で食型が汚れたりしますが、この製パン法であれば、そのような不具合を防ぐことができます。

 

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 さらに、他の使い方としては巻き目を上に向けて模様を楽しんだり(上図のゴマ食パン)、ストルワーに替えて平口のデポジッターを使えば、粒状の材料の他に粒あんのようなペーストを使用することも考えられますね(下図のあん食パン)。

 

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 あっ、申し遅れましたが、先頭の豆パンの成形方法は非常に変則的な手作業です、・・・機械装置で再現するのは少々困難ですね~。

 

小麦の種類への応用

 ご存知のように小麦粉の種類には含有されますタンパク質の量によって、薄力粉~中力粉から強力粉、と区分されます。

 

 近年は、さらにタンパク質含量の高い超強力粉といったものまで出回っています。

 

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 実は、小麦粉のブレンドにも同様の考え方で対応できるケースがあります。

 

 例えば、中力粉にグルテン製剤を加えて、強力粉と同等の性質を得たいと思った時とか。

 

 えっ、どこが同様の考え方かって?

 

 レーズンをタンパク質(グルテン)含量0%の小麦粉と考えればいいんですよ!