黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

新型コロナでパンの宅配を考える ~ ②パンとエスプレッソと嵐山庭園

 本来なら、新型コロナでパンの宅配を考えるシリーズを続けて投稿すべきところ、私のバースデーネタで1回分抜けてしまいました。

 

www.santa-baking.work

 

 前回のおさらいになりますが、焼き立てパンの常温流通での宅配サービスについて製品を中心にリポートします。

 

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 それではペンディングとなっていました、食パン系:2品種、菓子パン系:1品種、食事パン・総菜パン系の4品種、のリポートです。

 

【 目次 】

 

ムー

 『パンとエスプレッソ』を代表するメイン商品です。

 

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 1斤サイズでキュービック形状、焼色はやや濃いめの食パンです。

 

 成形は、2玉俵成形ですね。

 

 意外なのは、使用されている原材料で、小麦、バター、砂糖、脱脂粉乳、塩、イースト(パン酵母とは書いてないです)、と比較的シンプルな構成となっていて、最近の主流となっています牛乳や生クリームが入っていない反面、2番目にバターとなっていて、ふんだんにバターを使用した商品となっているようです。

 

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 スライス面ですが、やや上面・側面の凹みや気泡の大きさは気になりますものの、詰みやスジシマはありません、色白な内相です。

 

 食べ口は気泡の大きさから連想される通り、軽い感じの口当たりで、他のお店では体験できない食感かと思います。

 

www.santa-baking.work

 

 この商品の重量(比容積)を測定していませんが、もしかしますと私が焼こうとしています、高い比容積の食パンと被っているのかもしれませんね。(私も、形状が保持できるよう頑張りませんと!)

 

チーズブール

 ハード系の小型ブールで角切りのチーズが生地に混ぜ込んであります。

 

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 この商品は、スライス・トーストして頂きました。

 

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 大きな気泡も見えるのですが、思ったよりもしっとりした食感でゴーダチーズの食感がアクセントになっています。

 

 食味は・・・、昆布だしが配合されていているのですが・・・、チーズと一緒に食べず、生地だけで食べれば、と後悔です。

 

塩バターパン

 乳製品と油脂は、牛乳とバターのみで製造されています。

 

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 表面の焼色から、おそらくコンベクションタイプのオーブンで焼成していると推測します(側面の片側の焼色が濃く、反対側が薄くなっています)。
 

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 クラストはハード系の製品とまではいきませんが、やや引きのある食感となっています(食事パン系の商品でしょうから、このように設計されたのでしょう)。

 

ハーブソーセージ

 粉は小麦粉とライ麦粉、油脂としてはオリーブオイルを使用しています。

 

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 すみません、断面の写真を撮る前に食べてしまいました。

 

 風味が特徴的だったのですが、エルブド プロバンスというハーブが使われていました。

 

京野菜のカレーパン

 京都らしく、京野菜を包んだハード系のパンです。

 

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 万願寺とうがらし入りです。

 

フランボワーズとピスタチオ

 フランボワーズのライトパープル色が目を引く商品です。

 

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 生地には、卵、牛乳、生クリーム、バターと贅沢に使用されています。

 

2種のぶどうパン

 小型サイズのぶどうパンです。 

 

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 サルタナレーズンとサンマスカットレーズンの2種類のレーズンが使用されています。

 

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 2種のレーズンの色合いが異なりますので、スライス面の色彩が映えます。

 

 生地の内相は、気泡が細やかで膜も薄く伸びています。

 

 食味・食感ですが、・・・すみません、レーズンは苦手なんです。m(__)m

 

あとがき

 パンの宅配を考えるにあたって、流通形態としては今回のような常温での商品を扱うケースと、もうひとつは冷凍した状態で流通させるケースが考えられます。

 

 常温の製品を購入しました場合には冷凍保存や解凍といった手間が省かれる代わりに、時間経過と共にパンの老化が進行しますので、おいしく食べるのでしたら時間を掛けることができません(できるだけ早く食べなければなりません)。

 

 実際に、このパンとエスプレッソでも宅配のセットに冷凍されたパンが含まれていて、返ってこちらの商品の方が多い程です。

 

 常温の製品に関しては老化の問題があるように、冷凍の製品に関しましては冷凍・保存・解凍の技術的な問題があります。

 

 ただ最近では、焼成後冷凍製品の品質も飛躍的に向上していますので、焼き立てに近い状態のパンを楽しむことができるアイテムも増えてきています(この件は、また別の機会に・・・)。

 

サンタの豆知識

パンの食感を計測する方法

 前回はパンの老化に関しまして、デンプンのβ化の解説をしましたが、それによって実際に食べた時に感じますパンの食感を客観的に定量化する方法はあるのでしょうか。

 

 実際にテクスチャーアナライザーと呼ばれます装置が開発されていて、数値は出せるようになっていますが、現時点で活用できるデータとしましては随分限定された項目となっているのが、実状です。

 

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 これは、AACC(American Association of Cereal Chemists):米国の穀物化学学会が定めました計測手法に則って(のっとって)、パンのクラム(内側のソフトな部分)の食感を測定する際のモデル図です。

 

 一定の条件でパンのクラムを押さえて、その時に掛かる応力を測定する訳です。

 

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 活用できるデータのひとつが『硬さ』です。

 

 これは、パンの老化の指標にも適用されますが、クラムを1回押した時の最大応力値で示されます。

 

 上グラフで、1日目⇒2日目⇒3日目とグラフの山の高さが大きくなっていますが、これが老化を指しています。

 

 そして、もうひとつが『もっちりさ』です。

 

 これは、パンを2回押して、上のグラフの斜線で示されました面積 ②÷① で計算されます。

 

 老化が進みますと、パンを推した後の復元力が低下して②の面積が小さくなるという訳です。

 

 その他の歯切れ、口溶け、弾力、しっとりさ等といった食感は、今でも人が官能検査で評価しているのが実状です。