黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

新型コロナからパンの宅配を考える ~ パンとエスプレッソと嵐山庭園

 新型コロナウィルスの感染被害拡大の影響を受けて、日本では4月7日に1ヶ月の期間をもって緊急事態宣言が発令され(5月6日には、さらに延長)、国民には不要・不急の外出を各企業・店舗等へは営業の自粛がそれぞれ求められましたことは、みなさんがご周知されている通りです。

 

 この間、日本の経済活動は日を追う毎に停滞感を強めていく中、特に飲食関係の店舗ではイートインからテイクアウトや宅配へ活路を見出す動きも見られるようになりました。

 

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 今回は、パン業界での宅配事情に関してリポートしていこうと思っています。

 

【 目次 】

 

パンとエスプレッソと嵐山庭園『パンと』

 私がここのオンラインショップのサイトを見る時は、いつも SOLD OUT の表示しか見たことがありません。(発売開始は、通常10時ジャストに全商品一斉に公開 )

 

 そのネット通販で絶大な人気を誇る『パンとエスプレッソ』の店舗のひとつ嵐山庭園から、家族がオンラインショップで"嵐山庭園はんなりセット"(3,100円  税込+送料500円) を購入してくれました。

 

 常温流通で、賞味期限は『できるだけ早めにお召し上がりください。』とのことです。

 

 なお、商品には今回のような常温流通のアイテムもあれば、冷凍されてクール便で流通している商品もあります。(こちらは、またの機会に別途解説します)

 

 さて、早速送られてきました宅配品を開けてみます。

 

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 こんな感じで、中にはパンがぎっしり詰められています。 

 

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 取り出してみますと、食パン系:2品種、菓子パン系:3品種、食事パン・総菜パン系が4品種で、計9品種が入っていました。

 

 その中で、今回は包餡の菓子パン系:2品種について記載します。

 

抹茶あんぱん

外観

 抹茶あんを手包みしてプレス型で焼成している感じです。

 

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 上部にトッピングされていますのは、エスプレッソの粉末のようです。

 

 表面の色艶や焼きムラから、オーブンはコンベクションタイプのものを使用しているのではないでしょうか。

 

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 デッキタイプのオーブンを使用していれば、製品下部で全面の着色が強くなるのですが、生地が接触している部分の焼色が薄くなっています。(フィリングの抹茶あんが滲(にじ)んでいるのはご愛嬌!)

 

 側面の焼色が濃いのも、対流している熱風が横から当たっている故ではないかと。

 

断面

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 抹茶あんは、ずっしりと充填されています(食べがいがありますね~!)

 

食味・食感

 配合は、牛乳、生クリーム、バターで乳製品と油脂のすべてを賄(まかな)っていますので、包装紙の開封後に芳醇な香りが楽しめます。

 

 食感に関してはソフトでしっとりしているのですが、表面の独特の歯応えもあって、この商品の特徴を表していると感じました。(焼成方法によるものと推測しています)

 

ほうじ茶クリームパン

外観

 形状は、抹茶あんぱんと同様ながら、トッピングは前面にほうじ茶パウダーが塗(まぶ)してあります。

 

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 側面にはくっきりとプレス型の跡が付いています。

 

 焼色は全体的にやや薄めです。

 

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 冷却用のネットは専用のものを使用されているのでしょうか(製品の底面に、一度ネットに付着したであろうほうじ茶パウダーが、この商品に付いています)。

 

 側面と底面の焼色のコントラストは、抹茶あんぱんと同様ですね。

 

断面(すみません、今後、パンの並べ方は揃えるようにします。)

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 フィリング上下の生地量が抹茶あんぱんとは正反対で、生地底部に多くの生地が寄せられています。

 

 大きな空洞ができていますが、パン全体の形状がしっかりと保持されていることは少々ビックリです。

 

 食感の歯応えと関連しているように感じます。

 

食味・食感

 噛んだ瞬間にほうじ茶の風味がいっぱいに漂ってきます。

 

 生地の配合は乳製品がやや抑え気味で、ほうじ茶の風味を邪魔しないように設計されているようです。

 

 食感は抹茶あんぱんに近く、生地自体はソフトでしっとりしているのですが、表面のクラスト部分には独特の歯応えがあります。

 

あとがき

 オンラインショップのメニューには、こんなものも・・・。

 

 フレンチトーストの作り方 ¥0 ※こちらはダウンロード商品です

 

サンタの豆知識

パンの老化とは

 パンの原料である小麦粉は約70%がデンプンであり、通常の状態はβデンプン(生デンプン)です。

 

 βデンプンはパンの焼成過程で水と共に加熱するとデンプン粒の膨潤化に続いて糊状態となりますが、この変化した糊化状態を「αデンプン」と言います。

 

 焼成後のαデンプンは温度が低くなるに連れて、時間の経過と共にβデンプンに戻ろうとしますが、このβデンプンに戻ろうとする過程がパンの老化と呼ばれるものです。

 

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 パンは、焼成後から時間が経つにつれて水分が蒸発して硬くなり、デンプンの変質によって味は落ちて、香りの成分も蒸散して失われていきます。

 

 以前に解説しました配合中の油脂(の脂の部分)は、この水分の蒸発を抑えてパンのソフトさを保持することに寄与しています。

 
 なお、一度α化したデンプンがβ化した場合、焼成過程で見られます糊化温度以下の温度で(トースト時のように)再α化してパンは一時的に柔らかくなりますが、冷却後の硬化は著しくなります。

 

あとがき

 現時点で緊急事態宣言の解除に至っていません北海道と関東の1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)につきましても、来週の状況から解除を判断するようです。

 

 引き続きの緊張の手綱は緩めることなく、経済活動の再開を模索していくことになるのでしょうか、来週の動きに注目しています。